MVCメディカルベンチャー会議

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第120回MVC定例会in大阪 第一部

2016年06月18日 | MVC定例会
今回のテーマは「近未来の医療」です。株式会社産業革新機構 芦田耕一氏をお招きしてご講演頂きました。



私は2012年に株式会社産業革新機構に入社し、現在は執行役員マネージングディレクター 健康・医療チームのリーダーを務めております。産業革新機構は、ベンチャーキャピタルとして金融の立場からベンチャー企業を支援しています。

最初の遺伝子組換え医薬品をはじめとして革新的でイノベーティブな医薬品の多くは大手の医薬品メーカーではなくベンチャー企業によって発見されています。この傾向は医薬品産業では一般的であり、米国FDAが1998年から2007年に承認した革新的な医薬品118剤のうち、その半分以上が「バイオテク企業またはアカデミア」により発見されているのです。しかし日本ではそもそも新薬の創出が少なく、さらにバイオテク企業やアカデミア由来の新薬がほとんどありません。というのも、日本ではバイオテク企業への投資が米国の1/100と圧倒的に少なく、イノベーティブな医薬品を生み出すソースとしては十分に機能していないのです。




一方、医療機器分野に目を転じますと、近年、医工連携により医療機器ビジネスへの参入を図る異業種企業が増加しています。しかし、異業種企業が自社の技術を生かして医療機器ビジネスに参入したいと考えていても、医療現場へのアクセスがないことや、医療機器ビジネスの経験やノウハウを持った人材の不足、薬事法やPL法に関する知識不足等の課題により、その成果も未だ多くないのが現状です。また、医療機器開発はコストと開発期間の見積もりが難しい一方で、リターンを見積ることもできません。企業イメージまで考えるとダウンサイドリスクがあるハイリスクビジネスなのです。


日本で医薬・医療技術分野の開発を行うベンチャー企業が育たない理由は、第一に「カネ(資金)」の課題が挙げられます。医薬品やバイオ分野等の開発にはかなりの時間と費用がかかるため、長期にわたる投資や資金提供が必要になりますが、残念ながら日本ではそういった機能がまだ不十分と言えます。また、「ヒト(人材)」の不足も大きな課題のひとつです。ベンチャー企業で働く人はもちろん、ベンチャー企業を支援する側のキャピタリスト、弁護士、弁理士、会計士等も医薬・医療技術分野の専門性を持った人材が不足しています。さらに「チエ」の不足も課題と言えるでしょう。日本のベンチャー企業やベンチャー企業を支援する方々は、ベンチャーの出口戦略として株式上場を第一に考える傾向があります。しかし、最終的には大手企業に製造・販売を任せ、ベンチャー企業は革新的な開発に特化するのが大きな役割なのではないでしょうか。必ずしも株式上場をするのではなく、最終的には大手企業にバトンタッチをする、ということを考えれば自ずと出口戦略の選択肢が広がります。


産業革新機構は日本政府が出資する株式会社です。「オープンイノベーションを通じて次世代の国富を担う産業を創出する」ことを基本理念として、企業への株式投資を行っています。一般的に投資をする際は収益性や実現可能性が重要になりますが、それに加えて投資インパクトについても重視するのが産業革新機構の特徴です。投資した企業の経済的成功だけでなく社会的な波及効果も期待する、ということです。こうした考えに基づき、私は成功事例を積み重ねることによって、ライフサイエンス分野のベンチャー業界全体に好循環を生み出すことを目指しています。


医薬品、医療機器、診断、ICT等の様々な分野の医療技術が進化しています。今後の医療イノベーションは、複数の分野の進化をいかにインテグレーションしていくか、ということが求められます。既存のビジネスで大きな収益を上げている大企業に加えて、今後はオープンイノベーションの担い手としてベンチャー企業の活躍がより一層期待されます。

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