旧聞ですが、中川昭一氏がお亡くなりになったという話を聞いた際、私は「この間の選挙で落選しなければ、彼は死なないですんだだろうな」と思いました。
wikipediaにも、彼の酒に関するエピソードがこれでもかとばかりに記されていまして、氏はほとんどまちがいなくアルコール依存症だったと思われます。彼の死因についてはまだはっきりとはわかりませんが、落選後「断酒」も続かず酒におぼれる日々に戻ってしまったようなので、おそらく国会議員でなくなったという挫折感、喪失感が彼には致命的になったのではないかと(勝手に)考えます。選挙ですから落選は仕方ありませんが、彼は国会議員でない自分に耐えられなかったのかもしれません。内面のことはわかりませんが、気の毒ではあります。
さてさて、中川氏は「大物政治家」といっていいでしょうが(私が何かと批判する増元照明氏は、ご自分の
HPで中川氏を「巨星」と評しています(10月13日の記事)。さすがにここまで書くのは、増元氏くらいかもしれませんが…)、たいして知名度が高くない、あるいは悪い意味で有名になってしまった人物は、落選もしくは不出馬を余儀なくされたりしたらきついですよねえ。
たとえば、今ではほとんど名を聞くこともない
杉村太蔵氏ですが、彼、これからどうやって食っていくんですかね。私(たち)が心配するような話ではないし、したところで何がどうこうなる話でもありませんが、たとえば氏がいまさらどこかの企業に就職するったってねえ。彼を雇用しようとする物好きがそんなに沢山いるとも思えないし、いたらいたで、そんな人間のもとで働くというのは(私が杉村氏だったら)最高レベルに気が進まないですよねえ。彼がひとり者ならまだいいですが、奥さんもお子さんもいますからねえ。冗談でなく、どうやって生計を立てていくんだという次元で大変です。
彼の実家は歯科医だそうですから、普通の家庭よりは裕福なのかもしれませんが、だからといって1979年生まれの氏は、平均寿命まで生きればあと50年弱は生きていくことになります。そこまで親が養ってくれるわけでもないし、また氏は
>「いずれひと回りもふた回りも大きくなって、この場に挑戦したい。捲土重来を期したい」と述べ、将来、国政へ再び挑戦する考えを示した。
そうですが(出典は
こちら、
魚拓)現実問題として彼を小選挙区に立候補させたり比例に出す物好きな政党があるかどうかも疑問です。なにしろ、民主党の新人議員への講習で、反面教師扱いされたぐらいですから。彼の人生をトータルに考えれば、議員なんぞにならなきゃよかったというのが現実でしょう。
だいたい政治家になんかなったって、その経験ってそれ以外の世界ではほんと生かせませんからねえ。政治家としてできることって、あくまでその地位にいるから可能なことばかりで、政治家に落選したからといって、翌日から職安に通うというのもあまり現実的な話ではありません。ほんと、世間の眼は冷たいし、議員をやっていた歳月なんてあんまり直接的に得をする経験はありませんしねえ。
落選した自民党前議員が「職をくれ」といったとかという話がありまして、「馬鹿」としか言いようのない話ですが、でもたしかに落選したらそのようなことを言いたくもなるというものです。
片山さつきさんもねえ、議員なんかやるよりも官僚人生を全うするほうがよっぽど彼女の才能を生かせたと思うんですが、だまされたというか本人が馬鹿だったというべきか、よせばいいものを政治家なんかなっちゃってねえ。おかげさまでめでたくこの間の選挙は落選です。小選挙区の静岡7区で当選した城内実氏が13万票弱とったのに対して、片山さんは5万4千票強ですから、今後彼女が代議士になるのも非常に大変ではないかと思えます。これだって議員なんかなったおかげでその後の人生が大いに狂った例の一つではないでしょうか。
無名議員の例を出してみましょう。2000年から2003年まで社民党の衆議院議員をつとめた
原陽子さんです。当時、最年少議員(当選時25歳)ということで話題になりました。しかし2003年の選挙で落選、2004年に社民党を除名(!)されて、その後地元の市役所の臨時職員を経て現在社会福祉士をされているそうです。
こちらが彼女のブログですが、この記事を書いている現在で最後の更新が2009年の7月8日です。その後の衆議院解散や総選挙の結果等に彼女が関心がないわけはありませんが、更新が途絶えているのはやはりそのことについて語るにはあまりに苦い想い出を持ちすぎているということでしょうか。
極端な例では、自殺した
中島洋二郎氏、
新井将敬氏、昭一氏の父親である
中川一郎氏、
永田寿康氏(偽メール事件の人)、現職大臣として自殺してしまった
松岡利勝氏など、気の毒な人たちもいます。彼らも、なまじ政治家なんかならなければ自殺という最悪の事態には至らなかったでしょう。
そもそも、これからは、世襲政治家というもの自体、きわめてリスクが高すぎて、ばかばかしくてやってられない時代になるんじゃないですかね。
中川さんにしても、小選挙区で落選した町村、赤城なんて人たちも世襲政治家ですが、世襲政治家なんてものは、絶対当選する見通しがあるからなる価値があるわけで、比例復活した町村はまだしも、小選挙区も比例も全然だめだった赤城なんて、はたして自分の子供(について詳しいことは私は知りませんけど)を議員にさせる気がしますかね。自分はともかく、子供にはそんなにホイホイと国会議員にさせる気にはなかなかならないかも。
私は世襲政治家なんてものには賛成しませんので、それは別にわるいことではないと思いますが。
本業が弁護士とか(しかしそれだって、落選後にふたたび顧客を開拓するのは大変です)、あるいは家がとんでもない金持ちだとか(しかし莫大な金がかかりますからねえ、選挙は)、あるいは安部晋三みたいに(馬鹿のくせに)選挙が異常に強い人間はともかく(でもこれも当てにならないからなあ)、そうでない人は国会議員なんか目指さないほうがいいんじゃないかな。このブログを読んでいる人に、本気で国会議員を目指している人はあまりいないかもしれませんが…。
というわけで、結論は、国会議員になるということは、非常にリスクが高いと思います。なろうとする人は、それなりのリスクを覚悟しましょう。