ダライ・ラマは、自分が亡くなるまでには中国のチベット自治区ほかにおいて、チベット亡命政府が主張するような「高度な自治権」なるものが実現する可能性はない、と考えていると思います。本音をいってしまえば、ダライ・ラマは自分が存命中にラサに帰還する日がくることはないと覚悟しているんじゃないんですか。亡命政府のメンバーも、それはできない相談だと考えているんでしょう。
この間もちょっと書きましたけど、なんだかんだといって、ダライ・ラマがラサに(表立って)帰還するためには、実際には中国にチベット亡命政府側(ダライ・ラマもふくむ)が全面屈服するしかないと思います。次なるダライ・ラマが登場したらまたいろいろな思惑が交錯するかもしれませんが、現ダライ・ラマについては、中国側が彼を受け入れる日は来ないでしょうね。

ペマ・ギャルポは『北京五輪後のバブル崩壊』という題名(いまからすると、とてもむなしいタイトルです)の本の中で、次のように主張します。
>(前略)ダライ・ラマ法王の「暴力の否定」というタガがはずれたら、中国政府にとっても事態はさらに困難な状況に発展することは火を見るより明らかだ。
そして中国政府が、そんな最悪の事態をも軍事的に弾圧によって抑えようともくろんでいるのであれば、国際社会はそんな暴挙を許さないだろう。(p.200 改行部分は、スペースを空けました)
残念ながら、仮にダライ・ラマのおもしが外れて一部のチベット人グループが過激な路線に走ったとしても、中国政府は十分に対応できるという自信と見通しがあるんじゃないんですか。そしてたぶん中国政府はそれを確実に鎮圧すると思います。中国政府からすれば、そんなことは取るに足らないことでしょう。なにしろ、「分離独立は認めない。認めるものは、民族の罪人だ」(胡均濤)ですから。
>そして中国政府が、そんな最悪の事態をも軍事的に弾圧によって抑えようともくろんでいるのであれば、国際社会はそんな暴挙を許さないだろう。
と、ペマ・ギャルポは主張しますが、どうですかねえ。広場かどこかに集まった民衆を戦車その他で散らしたとかするのなら、世界もそれは黙ってはいないでしょうけど、ペマ・ギャルポの書いている話はそんなものではなく、ずばりテロリズムでしょう。いまの世界は「テロとの戦い」を建前として標榜していますから、世界もよほどのことがないかぎり中国のやり方にあからさまに文句を付けることはないんじゃないんですか。よほどのことをしたとしても、世界中で反中国のデモが荒れ狂うなんて可能性はあっても、そのころはいまをはるかに越える次元で中国は国力を増していますから、世界中の政府も中国にモノ申すなんてことはあんまり期待できないし、抗議をしたとしても(現在と同様)ポーズとしての抗議・非難といったところでしょう。
そもそも、ダライ・ラマに限らずチベットの僧の「転生」なんて宗教上のお約束のフィクションじゃないですか。ある意味、そんな非現実的な話をこれからの政治に利用するというのもなんとも時代錯誤です。チベット側からすれば、ダライ・ラマ死後に世界からの支持がどれくらい得られるかきわめて不透明なのでそんなことを主張しているのですが、最終的には中国側は居直るだけだと思います。彼らが次のダライ・ラマをどう扱うかは私は判断できませんが、どっちみち中国のチベット支配の道具か邪魔か、どちらかにしか中国側はみなさないでしょう。
ついでながら、このペマ・ギャルポの本は、
>自然も地下資源も水資源も豊かなチベットは、中国に侵略される前の一九五〇年代には、中国より豊かな国家だったのだ。(p.190)
1950年代ってのは、1940年代の誤植でしょうか。それとも1959年以前という意味かな。チベットのような神権国家(当時)と中国(中華民国、あるいは中華人民共和国)のような国を直接「豊か」さ(どのような?)という点で比較するのも、どうもねえです。
ほかにも
>チベット人すべてが独立を取り戻せば、恐らく三〇年から五〇年の間には、アジアの国々の中でも上位の暮らしができるくらいの国家に成長するだろう。だからこそ中国に狙われるのだ。(p.191)
など、なかなかすごい記述が多い本です。いくらなんでも独立したら(見込みは低いですが)30年から50年後にチベットがアジアの中でも裕福な国になるっていうのは、私には過大評価もほどがあるっていう気がするんですけど。チベットに工業が発展するんですかね? 海がないから、貿易その他も中国に急所を押さえられちゃっていますよね? 西蔵鉄道の利権は、中国は絶対手放しませんよね。それでもなんでも現在のチベットが豊かになるためには、余計なお世話ですが、五体投地とかの祈りの時間を削って商業活動・生産活動に今以上にいそしまなければならないし、(中国がそれをしたわけだけど)僧をへらして行政公務員、商売人、専門職、世界に通用するビジネスに携わることのできる人材をたくさん養成してまた優秀な労働力も増やさないといけません。
できますかね、そんなこと。するためには、チベットの長き歴史をいろいろ否定する必要があるように思うんですけど。でもそれをしないと、
>アジアの国々の中でも上位の暮らしができるくらいの国家
にはなれませんね、気の毒だけど。
だいたいチベットをいまでもダライ・ラマが支配していたら(毛沢東が国共内戦で負けてもどっちみち蒋介石がチベットを占領したでしょうが)、今ほどの社会インフラはとても整備されていないし、公衆衛生その他も大差があったんじゃない!?
ペマ・ギャルポは、チベットでもえらい人の子どもだったということで、彼が中華人民共和国に激しい憎しみと恨みをもつのは当然でしょうけど、なーんかね。
どっちみち当分チベット独立なんてなさそうですから、1953年生まれのぺマもその日を見ることなく亡くなるんでしょうからそれは気の毒ですがね。日本人読者向けの本を書くのなら、もうすこし冷静な分析でお願いしたいものです。
この間もちょっと書きましたけど、なんだかんだといって、ダライ・ラマがラサに(表立って)帰還するためには、実際には中国にチベット亡命政府側(ダライ・ラマもふくむ)が全面屈服するしかないと思います。次なるダライ・ラマが登場したらまたいろいろな思惑が交錯するかもしれませんが、現ダライ・ラマについては、中国側が彼を受け入れる日は来ないでしょうね。

ペマ・ギャルポは『北京五輪後のバブル崩壊』という題名(いまからすると、とてもむなしいタイトルです)の本の中で、次のように主張します。
>(前略)ダライ・ラマ法王の「暴力の否定」というタガがはずれたら、中国政府にとっても事態はさらに困難な状況に発展することは火を見るより明らかだ。
そして中国政府が、そんな最悪の事態をも軍事的に弾圧によって抑えようともくろんでいるのであれば、国際社会はそんな暴挙を許さないだろう。(p.200 改行部分は、スペースを空けました)
残念ながら、仮にダライ・ラマのおもしが外れて一部のチベット人グループが過激な路線に走ったとしても、中国政府は十分に対応できるという自信と見通しがあるんじゃないんですか。そしてたぶん中国政府はそれを確実に鎮圧すると思います。中国政府からすれば、そんなことは取るに足らないことでしょう。なにしろ、「分離独立は認めない。認めるものは、民族の罪人だ」(胡均濤)ですから。
>そして中国政府が、そんな最悪の事態をも軍事的に弾圧によって抑えようともくろんでいるのであれば、国際社会はそんな暴挙を許さないだろう。
と、ペマ・ギャルポは主張しますが、どうですかねえ。広場かどこかに集まった民衆を戦車その他で散らしたとかするのなら、世界もそれは黙ってはいないでしょうけど、ペマ・ギャルポの書いている話はそんなものではなく、ずばりテロリズムでしょう。いまの世界は「テロとの戦い」を建前として標榜していますから、世界もよほどのことがないかぎり中国のやり方にあからさまに文句を付けることはないんじゃないんですか。よほどのことをしたとしても、世界中で反中国のデモが荒れ狂うなんて可能性はあっても、そのころはいまをはるかに越える次元で中国は国力を増していますから、世界中の政府も中国にモノ申すなんてことはあんまり期待できないし、抗議をしたとしても(現在と同様)ポーズとしての抗議・非難といったところでしょう。
そもそも、ダライ・ラマに限らずチベットの僧の「転生」なんて宗教上のお約束のフィクションじゃないですか。ある意味、そんな非現実的な話をこれからの政治に利用するというのもなんとも時代錯誤です。チベット側からすれば、ダライ・ラマ死後に世界からの支持がどれくらい得られるかきわめて不透明なのでそんなことを主張しているのですが、最終的には中国側は居直るだけだと思います。彼らが次のダライ・ラマをどう扱うかは私は判断できませんが、どっちみち中国のチベット支配の道具か邪魔か、どちらかにしか中国側はみなさないでしょう。
ついでながら、このペマ・ギャルポの本は、
>自然も地下資源も水資源も豊かなチベットは、中国に侵略される前の一九五〇年代には、中国より豊かな国家だったのだ。(p.190)
1950年代ってのは、1940年代の誤植でしょうか。それとも1959年以前という意味かな。チベットのような神権国家(当時)と中国(中華民国、あるいは中華人民共和国)のような国を直接「豊か」さ(どのような?)という点で比較するのも、どうもねえです。
ほかにも
>チベット人すべてが独立を取り戻せば、恐らく三〇年から五〇年の間には、アジアの国々の中でも上位の暮らしができるくらいの国家に成長するだろう。だからこそ中国に狙われるのだ。(p.191)
など、なかなかすごい記述が多い本です。いくらなんでも独立したら(見込みは低いですが)30年から50年後にチベットがアジアの中でも裕福な国になるっていうのは、私には過大評価もほどがあるっていう気がするんですけど。チベットに工業が発展するんですかね? 海がないから、貿易その他も中国に急所を押さえられちゃっていますよね? 西蔵鉄道の利権は、中国は絶対手放しませんよね。それでもなんでも現在のチベットが豊かになるためには、余計なお世話ですが、五体投地とかの祈りの時間を削って商業活動・生産活動に今以上にいそしまなければならないし、(中国がそれをしたわけだけど)僧をへらして行政公務員、商売人、専門職、世界に通用するビジネスに携わることのできる人材をたくさん養成してまた優秀な労働力も増やさないといけません。
できますかね、そんなこと。するためには、チベットの長き歴史をいろいろ否定する必要があるように思うんですけど。でもそれをしないと、
>アジアの国々の中でも上位の暮らしができるくらいの国家
にはなれませんね、気の毒だけど。
だいたいチベットをいまでもダライ・ラマが支配していたら(毛沢東が国共内戦で負けてもどっちみち蒋介石がチベットを占領したでしょうが)、今ほどの社会インフラはとても整備されていないし、公衆衛生その他も大差があったんじゃない!?
ペマ・ギャルポは、チベットでもえらい人の子どもだったということで、彼が中華人民共和国に激しい憎しみと恨みをもつのは当然でしょうけど、なーんかね。
どっちみち当分チベット独立なんてなさそうですから、1953年生まれのぺマもその日を見ることなく亡くなるんでしょうからそれは気の毒ですがね。日本人読者向けの本を書くのなら、もうすこし冷静な分析でお願いしたいものです。








というよりその方が「犯罪者として弾圧できる」と願ったりかなったりかも。
「過激路線に走る=テロという犯罪」ですから。
>中国より豊かな国家だったのだ
「中国の貧乏な地域と比較してる(さすがに首都北京なんかと比較しないでしょう)」「今話題の国民総幸福量(GNH)でも持ち出して、『精神的豊かさまでこみなら俺たちの方が上だ、チベット仏教はすごいんだ』と言ってる(これなら日本や欧米より上と言うことすらできます)」かどっちかですかね。
でも地下資源がどうこう言ってるから「精神的豊かさ」はないか。まあ何も考えずに適当なことを言ってるだけかもしれませんが。
大体資源が豊かうんぬんっていうんなら中国だってチベット抜きでも資源は豊かでしょうに。また産油国や北朝鮮(埋蔵レアアースがすごいと言われている)だって資源は豊かですけどね、国が豊かって言えるかどうか。資源うるだけでは豊かな国にはなれんでしょう。一方資源小国の日本は経済大国なわけです。やはり今の時代工業製品にしてうった方が儲かる。で当時のチベットにそんな技術力はないでしょう。
>チベット人すべてが独立を取り戻せば、恐らく三〇年から五〇年の間には、アジアの国々の中でも上位の暮らしができるくらいの国家に成長するだろう。だからこそ中国に狙われるのだ
独立を取り戻しても今いる中国人実業家を全て追い出すなんて事はできないし、やったらかえって経済が崩壊すると思うのですがその辺りどう考えてるんですかね。
>チベットをいまでもダライ・ラマが支配していたら(毛沢東が国共内戦で負けてもどっちみち蒋介石がチベットを占領したでしょうが)、今ほどの社会インフラはとても整備されていないし、公衆衛生その他も大差があったんじゃない!?
ネパールやブータンがそれに近いんですかね。両国の経済状況は全然知りませんが。
>日本人読者向けの本を書くのなら、もうすこし冷静な分析でお願いしたいものです。
「中国は昭和天皇の処刑を望んでた」云々なんて怪文書で本書く人ですからね。もうどうしようもないんでしょう。
「過激路線に走る=テロという犯罪」ですから。
私もそう思います。中国側からすれば、チベットの過激な勢力が暴れてくれれば弾圧の大義名分ができるというところでしょう。
>「中国の貧乏な地域と比較してる(さすがに首都北京なんかと比較しないでしょう)」「今話題の国民総幸福量(GNH)でも持ち出して、『精神的豊かさまでこみなら俺たちの方が上だ、チベット仏教はすごいんだ』と言ってる(これなら日本や欧米より上と言うことすらできます)」かどっちかですかね。
私も「中国が来る前は飢えなかった」とかいう記述はいくらでも読みましたが、さすがにチベットが中国より豊かだったという主張はあんまり目にした記憶がありません。ラサのほうが上海より豊かだったんかよ、とかいろいろ考えますが、ペマ・ギャルポもわざと曖昧な書き方をしていますからね、かなり悪質な文章ですね。
>独立を取り戻しても今いる中国人実業家を全て追い出すなんて事はできないし、やったらかえって経済が崩壊すると思うのですがその辺りどう考えてるんですかね。
ジンバブエが白人を追い出したら碌でもないことになったのと同様、完全に経済は崩壊するでしょうね。
>もうどうしようもないんでしょう。
私もそう思います。