ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

2022年には、新規の死刑の確定者が出ないかもしれない(死刑判決自体も、地裁では現段階なし)

2022-11-22 00:00:00 | 社会時評

最初に断っておきますと、私は死刑反対論者ですが、以下の記事は、私のそういった考えや立場とは無関係です。事実を書いているということでご了解ください。

現在日本で、最後に死刑が確定したのが、私がいろいろ勉強させていただいているサイト「犯罪の世界を漂う」によると、関西青酸連続死事件の犯人とされる筧千佐子死刑囚が最後のようです。彼女の上告が最高裁判所で棄却されたのが、2021年6月29日ですので、たぶん7月中に死刑が確定したかと思われます。

で、現在最高裁に上告中の死刑判決を受けた被告人は、「最高裁係属中の死刑事件リスト」によると、4名いる被告人たちは、現段階2022年中に最高裁での上告棄却はないと思われますので、そうすると暦年としての2022年は、死刑確定者が出ない年になる可能性がありますね。

それで、こちらの表によると、新たな死刑確定者が出なかった年は、戦後では1986年のみとのことです。とすると、もしかしたら今年は、戦後2回目の、死刑確定者ゼロの年になりそうです。そして現段階地方裁判所では、今年死刑判決が出ていません。高等裁判所では、川崎老人ホーム連続殺人事件の控訴が棄却されたのが2022年3月9日で、現在上告中です。高裁では、現在(この記事を書いている11月20日時点)4人が控訴中です。現段階最後の1審死刑判決が出たのが、何かと話題になった特定危険指定暴力団・五代目工藤會総裁である野村悟被告に下されたものであり、これが2021年8月24日のものであり、地裁ではすでに1年以上死刑判決が出ていないわけです。なおこの裁判は、裁判員への危険をかんがみ、裁判員裁判の対象から除外されています。

ところで先日あった事件の判決についての記事を引用します。長い記事ですが、後のためにも全文引用することをご容赦ください。

>女性殺害事件で無期懲役 新潟地裁 別事件で無期懲役の被告に
2022年11月18日 18時01分 

新潟県新発田市で女性を相次いで襲ったとして無期懲役が確定している被告が、一連の事件とは別に20歳の女性を殺害した罪に問われた裁判で、新潟地方裁判所は無期懲役を言い渡しました。

喜納尚吾被告(39)は、▽新潟県新発田市で女性4人を相次いで襲い、このうち1人を死亡させた罪や、▽逮捕後に裁判所から逃走した罪などで、2018年に無期懲役の判決が確定していました。

その後一連の事件とは別に、2014年に同じ新発田市内で当時20歳の会社員の女性が運転する車に乗り込み、わいせつ目的で連れ去って殺害したなどとして服役中に逮捕・起訴され、あらためて殺人などの罪に問われました。

裁判では、検察が「すでに確定した罪を再び処罰することはできないが、刑の重さを判断する際に考慮することは許される」と主張し、「身勝手極まりない犯行で、立ち直りは期待できない」として死刑を求刑していました。

一方、被告と弁護士は無罪を主張していました。

18日の判決で新潟地方裁判所の佐藤英彦裁判長は、「被害者の車から検出されたDNA型などから被告が犯人と認められる」と指摘しました。

そのうえで、「被害者に落ち度はなく、強い殺意に基づく犯行だったことは明らかで身勝手極まりない。被害者の恐怖や絶望は筆舌に尽くすことができず結果は重大だ」と述べました。

一方で「遺族が死刑を望む気持ちは厳粛に受け止めなければならないが、過去の同じような事件は、ほとんどが無期懲役で死刑を選択することはできない」として無期懲役を言い渡しました。
被告の弁護士「控訴するかどうかは被告と検討」
判決の言い渡しのあと、被告の弁護士は「控訴するかどうかは、今後被告と検討して決める」と話しました。
新潟地検「内容を検討し適切に対応」
判決について新潟地方検察庁は「今後判決内容を検討したうえで適切に対応していきたい」としています。
被害者の母「判決の結果に納得できない」
判決のあと、女性の母親が弁護士を通じてコメントを出し「被告が自らの言葉で真実を語ることもなければ、娘の死を重んじることもなく、ひたすら自分の保身だけを心配し、最後まで否定し続けました。本当に許せないし悔しい気持ちでいっぱいです」と心情を明らかにしました。

また、無期懲役という判決について「娘の無念を思えば、判決の結果に納得できない気持ちもあります。検察庁には控訴することを検討していただきたいと思っています」としています。
今回の判決のポイント
被害者が1人の殺人事件で死刑が言い渡された例は限られていて、今回の裁判では、刑の重さを判断するうえですでに無期懲役が確定している、過去の事件のことをどこまで考慮するのかが焦点となっていました。

すでに確定した罪を再び処罰することは憲法で禁じられていますが、最高裁判所は「確定した事件を今回の犯行に至る重要な経緯などとして考慮することは許される」という考え方を示しています。

今回の裁判で検察は「過去に確定した罪を再度処罰することはできないが、刑の重さを判断する際に事情として考慮することは許される」と主張し、死刑を求刑していました。

判決は今回の事件がすでに確定している事件から間もない時期に起こされた経緯を踏まえ「常習性が非常に高い」と指摘した一方、「過去の同種の事案で死刑が言い渡されたケースとは、残虐性や犯行後の状況が異なり、同列には論じられない」として、死刑は選択できないと結論づけました。
判決の詳細
裁判では別の事件で無期懲役がすでに確定していることが、刑の重さを判断するうえで考慮されるかどうかが焦点となっていました。

検察は「すでに確定した罪を再び処罰することはできないが、刑の重さを判断する際に考慮することは許される」と主張していました。

これについて裁判所は18日「すでに無期懲役が確定している事件のあと、間もない時期に犯行に及んでいて常習性が非常に高い。被害者の恐怖や絶望は筆舌に尽くすことができず結果は重大だ」と述べました。

一方で「過去の同じような事件はほとんど無期懲役が出ている。死刑を選択されたものは犯行の悪質さが抜きん出ているため、同じように論ずることはできない。そのため死刑を選択することはできない」と指摘しました。
元刑事裁判官「二重処罰を禁止する原則は大事なもの」
判決が無期懲役だったことについて、元刑事裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は「死刑を言い渡す基準は非常に厳しく、被害者が1人であれば無期懲役という判断が定着している。検察はすでに無期懲役が確定している余罪があることを理由に死刑を求刑したが、改めて前の事件を考慮するとなると、『二重処罰』を禁止した憲法に反する。悪質な前科はあるが、それをもって今回の事件を死刑と判断するのは無理がある」としています。

すでに確定している事件と同時に審理されていれば判断が変わった可能性があることについては「非常に難しい問題で、この事件だけを見るとやりきれない思いを抱く人も多いと思う」と述べた一方、「法律は規定に従って用いる必要があり、恣意的(しいてき)な運用はできない。二重処罰を禁止する原則は大事なものだ」と指摘しています。

そのうえで「こうしたケースは判例が少ないため、まだ論理が深まっていない部分もある。控訴された場合は引き続き議論になるだろう」と話していました。

この事件での判決の妥当性についてはここでは論じませんが(私は死刑反対論者なので、死刑判決でなくてよかったと思いますが、私の意見はこの際どうでもいい話です)、この判決は、やはり死刑に対するハードルが、現在の裁判所にとってだいぶ高くなっているところが影響していると思います。

2000年から2007年まで、日本では、1審で毎年10件以上の死刑判決が出て、死刑確定者も、2004年から2012年まで、2010年を除き、二けたの死刑確定者が出ました。2010年は8名の確定者が出ています。

そして、2017年から2021年までの1審死刑判決は、2017年と20年、21年が3件、18年が4件、19年が2件です。新確定者数は、17年と19年、20年が3件、18年が2件、21年が4件です。確定者だけに話を限ると、2006年の20人、07年の23人、11年の24人などと比べると、たいへんな減り方です。

なお死刑の確定自体は、死刑判決を受けて控訴中、上告中の被告人がそれを取り下げれば、それで確定します。ということは、その年が終わる瞬間まで、新規死刑確定者が出る可能性はあるわけです。だからどうなるかはわかりません。が、今年の死刑確定者数は1名出るかどうかといったところではないかと思います。来年は、2つくらい最高裁で弁論→判決が出る可能性があります。前述したように、上訴中の被告人の取り下げによる死刑確定は、つねにあり得ます。

そう考えると、検察や法務省はそうは考えてはいないのかもですが、少なくとも裁判所は、「あんまり積極的に死刑判決を出したくはない」という考えではありそうですね。何かで読んだ話によると、裁判官の研究グループみたいなところが、裁判員制度になったら死刑判決は減るであろうと予想していたら、実際にはむしろ激増したので、裁判官がそれを抑止する方向で動いたというのです。URLは記録しなかったので、事実はどうかはあまり強いことを言えませんが、実際には、1審の死刑判決は、2007年が14人、08年が5名、裁判員制度開始が09年の8月でこの年9名、10年が4名、11年が10名となっていて、12年以降は、3名、5名、2名と続き、それ以降は4名が最高です。また高裁で裁判員裁判の死刑判決が減刑されているケースもあります。日本の治安は、殺人事件の被害者なども減っているので、そうなるとあんまり重罰を科すのが妥当ということはないのかなと思います。ひところは日本の刑務所も収容数が激増しましたが、最近はだいぶスカスカになっているのも確かです。

いずれにせよ死刑判決は漸減傾向にあるというのは事実かと思います。これは長期にみていかないといけないので、今後も私なりに観察していきます。

コメント (3)
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