複数名でプロジェクトを手がけるのに何かと役立つのが「コラボレーションツール」だ。コラボレーションツールは、ドキュメントファイルやスケジュール、顧客情報などを、プロジェクトに携わる全てのメンバーと共有できるだけでなくオンラインでの共同作業も可能で、プロジェクトを円滑に進めることができる。最近では、高機能のクラウド型コラボレーションツールが幾つか登場しているが、その多くは有料サービスで、無料のものについては制限が厳しく、実用的ではない場合も見受けられる。
そんな中、富士ゼロックスが打ち出したオンラインコラボレーションツール「SkyDesk」は、無料サービスにも関わらず多機能で、ビジネスパーソン同士のコミュニケーションを本当の意味で簡単?効率化してくれるのだという。今回は、富士ゼロックス株式会社 新規事業準備室 プランニング&マーケティンググループ マネジャー 小栗伸重氏と、新規事業準備室 斎藤博章氏に、SkyDesk の詳細をうかがった。
富士ゼロックス株式会社 小栗伸重氏(左)と斎藤博章氏(右)
■ SkyDesk の強力な情報共有機能
SkyDesk は、ビジネスシーンでよく利用する「Mail(メール)」や「Calendar(カレンダー)」、「Tasks(タスク管理)」、「Cards(名刺管理?共有)」などの10以上の機能をオンラインで提供し、それらで入力?作成したドキュメントファイルやスケジュールなどのデータは全て Web 上に格納される。格納されたデータは、強力な情報共有機能により、シームレスにメンバー間で活用できる仕組みだ。
また、データは「組織」「組織グループ」「個人グループ」単位で共有できる。例えば、「組織」は実際の会社、「組織グループ」は「組織」に属すユーザー同士のグループで、会社の下にある“○○課”“○○部”単位でグループを作成することができる。「個人グループ」はプロジェクトごとに設定できるバーチャルなグループを指す。個人グループは、他社のメンバーを呼び込むことも可能で、小規模の企業などが1つのプロジェクトを複数企業と協業する際にも役立つという。
プロジェクトごとにグループを作れるようにしたのは、SkyDesk の企画段階に聞いたユーザーの声によるものだった。ソーシャルメディアは、非公開グループの作成や、コミュニケーションの手法が発達しているが、かたや仕事用のツールでそれらが充実したものは少ない。一部のユーザーは、Facebook や Twitter などを社内?社外のコミュニケーションに仕方なく使っていたが、当然、大企業のメンバーは社内ポリシー的に利用できないなどの問題があった。そこで、富士ゼロックスが考えたのがバーチャルグループというアイディアだった。
SkyDesk へログインすると最初にホーム画面が表示され、画面中央の「アクティビティ」は「今起きていることをカジュアルにつぶやける」と小栗氏が例えるように、Twitter ライクに組織?組織グループ内で情報共有が可能だ。投稿内容は、Twitter のタイムラインのように流れていくが、重要な連絡事項についてはマーカー付きで上部に固定表示できる。新しくドキュメントが共有?変更された際の自動通知も表示されるため、アクティビティをチェックしていれば自分に関する業務をもれなく把握できる。
「SkyDesk」のTOPページ。画面中央に「アクティビティ」、上部の「コラボレーション」「セールス」から SkyDesk の各アプリケーションへアクセスできる
■ 充実したアプリケーション群が遠隔地と机を繋げる
富士ゼロックス 小栗伸重氏
SkyDesk の「Docs(ドキュメント管理)」に格納されているドキュメントは、SkyDesk のアプリケーション「Writer」と「Sheet」で直に編集できるが、共有ドキュメントに指定すれば複数人と共同編集が行える。例えば、遠隔地にいるメンバーの作業画面を自分の PC に表示させ、SkyDesk の「Chat(チャット)」を使いながらドキュメントファイルを双方でブラッシュアップできるといった具合だ。実際に小栗氏も、オフィスが離れた場所にある広報宣伝部と戦略統轄部門の担当者と SkyDesk 上でリアルタイムにプレスリリース原稿を作成するなどしており、「メンバーが遠方の協力会社でも、机が繋がっているかのように仕事ができる」と説明する。
「Chat」は、「Facebook チャット」「Google トーク」と連携しており、自身のソーシャルネットワーク上のユーザーともチャットが可能。SkyDesk 経由でも、相手は Facebook?Google からアクセスしたように見える。小規模の企業や SOHO のユーザーは、個人と仕事の人脈がオーバーラップしている場合が多い故、現存するソーシャルメディアとの連携はこだわったという。
「Tasks(タスクス)」は、個人タスクのほか、組織?グループにおける共有タスクも存在する。タスクは他メンバーへもアサインでき、アサイン情報はアクティビティでも表示されるため、知らない間にタスクが自分に回され、手付かずにしてしまうこともない。「Note(メモ)」や、パートナーの URL リストとして活用できる「Link(リンク)」についても、組織?グループ単位で共有が行える。「Mail」は POP にも対応し、SkyDesk のメールアドレスのほか、Gmail や会社のローカルアドレスも運用できるなど拡張性は高い。
SkyDesk のアプリケーション「Sheet」
SkyDesk のアプリケーションと 「Mail」
■ 外出先でもスキがないコラボレーションを
SkyDesk は、外出先でも様々な機能へアクセスできるよう、スマートフォン用ページと専用アプリ3つを用意している。現在、アプリは iPhone 版のみの提供で、スマートフォン用ページも iPhone のみのサポートとなるが、将来的には Android も正式対応する予定だ。
アプリのひとつ「SkyDesk Mobile」は、「アクティビティ」「Mail」「Docs」「Calendar」「CRM(顧客管理)」「Cards(名刺管理)」を利用可能だ。「Docs」「Cards」を選択すると、それぞれの専用アプリが起動する。
専用アプリ「Docs」は、格納されている全データを閲覧できるほか、iPhone 内にある画像のアップロード機能も備える。アップロード機能は、外出先で撮影した画像や、メモとして保存した Web スクリーンショットを「SkyDesk」へ保存するといった使い方を想定している。
■ 長年培った複写機のノウハウを生かした名刺管理機能
富士ゼロックス 斎藤博章氏
「昨今、仕事でクラウドやモバイルを活用しようという動きが加速しているが、名刺や手書きのメモのように全ての情報がデジタル基点というわけではない。アナログメディアも仕事の媒体として、デジタルへシームレスに繋げたかった」と小栗氏が説明するように、もうひとつの専用アプリ「Cards」は SkyDesk の中で最もこだわった機能の一つだという。
顧客の名刺を iPhone のカメラで撮影すると画像データが SkyDesk のサーバーへ送信され、余白の切り取りや補正などが行われた後に名刺データとして登録される。PC 版の「Cards」は、JPG ファイルを一括登録できる機能により、保有している大量の名刺画像を簡単に SkyDesk へ登録することも可能だ。
この補正処理には富士ゼロックスの複写機のノウハウが生かされており、名刺に書かれた氏名や会社名、役職、電話番号をテキストデータとして抽出してくれる。テキストデータは、連絡先として「Contacts(連絡先)」へも追加できるほか、商談の見込み顧客であれば「CRM」への登録も可能だ。実際に斎藤氏に、名刺を iPhone で撮影していただいたところ、即座に SkyDesk へ名刺データが登録され、かなりの精度でテキストが抽出された。
「Cards」(PC)の画面。名刺データからテキストデータを正確に抽出してくれる
名刺データは、「Docs」内にあるドキュメントと同様に組織内の他のユーザーと共有が可能だ。また、名刺交換日の項目に名刺撮影日のタイムスタンプを自動反映させることで、別途入力する手間を省けたり、打ち合わせ内容のメモや、ホワイトボードに書かれた文章?図を撮影した画像を付加できたりなど、ビジネスシーンで便利な機能も多数盛り込まれている。
サービス開始当初は、一部機能に制限を設けてサービスを提供していくが、今後機能を拡充していくことも予定している。
■ 無料で役立つからこそ、どんどん使ってほしいコラボレーションツール
富士ゼロックスはこれまで、営業マンを通じて対面販売する製品が大半だった。今回の SkyDesk のように、Web を通じてエンドユーザーへ直接提供するサービスは、セブン-イレブンと展開する「ネットプリント」などに次いで比較的新しい試みだという。
また、プリントアウトに関するビジネスを中心に展開してきた同社にとって、プリントアウトされたものをクラウドサービスに繋ぎ合わせる SkyDesk は新しい試みとのことだが、ソーシャルメディアに見られる卓越したコミュニケーションのフレーバーや、充実したアプリケーション群、スマートフォンとの連携、富士ゼロックスの複写機のノウハウがフィードバックされた名刺管理機能などにより、使ってみたいと思わせるコラボレーションツールに仕上がっている。
「無料の SkyDesk を小企業や SOHO、フリーランスなどプロジェクト型で仕事をしているユーザーにどんどん使っていただきたい。SNS で友達と繋がるように、SkyDesk 上で仕事仲間と繋がり、プロジェクトの効率化に役立ててほしい」(小栗氏)