ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「これまで本気で守ろうとしなかった憲法を変える?私はこの国に言いたい。憲法を実行せよと」中村哲氏

2013年06月07日 | 日本とわたし
『憲法を実行せよ』

この言葉が心にどすんと落ちてきた。

『他国に攻め入らない国の国民であることがどれほど心強いか。
アフガニスタンにいると『軍事力があれば我が身を守れる』というのが迷信だと分かる。
敵を作らず、平和な信頼関係を築くことが、一番の安全保障だと肌身に感じる。

憲法9条は日本に暮らす人々が思っている以上に、リアルで大きな力で、僕たちを守ってくれている』



13年前に日本を出た。
困るのは英語ぐらいで、まあなんとかやっていけるやろと思てたアメリカは、それほど甘いもんやなかった。
住み出した次の年に同時多発テロが起こり、IT業界のバブルがはじけ、全国一斉に戦争戦争のプロパガンダが始まり、周りにキナ臭い空気が漂い出した頃、
テレビでは毎日のように、画面の端っこに、危険度を示す帯が現れ出し、それがオレンジになったり黄色になったり、そのたんびにアナウンサーが、厳しい顔して恐怖を煽ってた。

人が集まってるとこには極力寄っていかんようにし、マンハッタンにつながる橋やトンネルを通る時は必ず、これで人生が終ることになっても良しとしようと覚悟する。
そんな世界になってしもてからも、ひとつだけ、わたしの精神を安めてくれるものがある。

わたしの祖国日本は、戦争を放棄した国。
わたしがどこに暮らしていようと、そこがどんな環境であろうと、わたしは日本人で、戦争を放棄した国民のひとりである。

その厳然たる事実。

この中村氏のように、命を左右するような出来事がごろごろしてる厳しい環境なんかではないけれども、
普通に、のんきに生きてるこのわたしでも、やっぱり海の外に出て生きるというのはそれなりに大変でもある。

そんな自分を考える時、これまでわたしは、日本という国を背負ってると思てた。
けどちがう。逆やった。
憲法9条を持つ日本という国が、守ってくれてるんやということに気がついた。

日本から出た人間だけやない、日本で暮らす人たちもまた、わたしらと同じ、リアルで大きな力で、自分らを守ってくれてると気がつかなあかんと思う。

↓以下、転載はじめ

憲法よ 医師・中村哲さん
【毎日新聞】特集ワイド 2013年06月06日 東京夕刊

<この国はどこへ行こうとしているのか>

◇守るより実行すべきだ--医師・中村哲さん(66)

◇9条はリアルで大きな力 日本人だから命拾い、何度もあった


薄暗い会場のスクリーンに1枚の写真が映し出された。
干ばつで広がる砂漠には草木一本生えていない。

「この地に私たちが用水路を建設した1年後の写真がこれです」

次の写真が映し出された瞬間、会場にいる約1200人から自然と拍手が湧き起こった。
まぶしいほどの緑、緑、緑。壇上で、ペシャワール会現地代表の中村哲さんが静かに言い添える。

「この地に15万人の難民が戻ってきました」

拍手が鳴りやまない。
生命力あふれる大地の写真は、どんな言葉より雄弁だ。

茨城・土浦市民会館の2階席の片隅で、壇上の中村さんに目を凝らした。
日本よりアフガニスタンにいる方がずっと長いこの人が、ことあるごとに憲法について語るのはなぜなのか。
その理由を知りたいと思った。


2時間に及ぶ講演後、別室で話を聞いた。
アフガニスタンでは丸い帽子がトレードマークなのに、この日はネクタイにスーツ姿。
「保護色です」とちゃめっ気たっぷりの中村さん。
「日本じゃスーツを着ておけば、街にいても目立ちませんからね」

でも、微妙に似合っていないかも。
両手の甲が驚くほど日焼けしている。
帰国直前まで重機を運転していたというこの両手、いったい何人の命を救ってきたのだろう。


1984年から最初はパキスタンのハンセン病の病棟で、後にアフガニスタンの山岳の無医村でも医療支援活動を始めた。
2000年、干ばつが顕在化したアフガニスタンで「清潔な飲料水と食べ物さえあれば8、9割の人が死なずに済んだ」と、白衣と聴診器を捨て、飲料水とかんがい用の井戸掘りに着手。
03年からは「100の診療所より1本の用水路」と、大干ばつで砂漠化した大地でのかんがい用水路建設に乗り出した。
パキスタン国境に近いアフガニスタン東部でこれまでに完成した用水路は全長25・5キロ。
75万本の木々を植え、3500ヘクタールの耕作地をよみがえらせ、約15万人が暮らせる農地を回復した。
総工費16億円は募金でまかなった。

「僕と憲法9条は同い年。生まれて66年」

冗談を交えつつ始めた憲法談議だったが核心に及ぶと語調を強めた。

「憲法は我々の理想です。理想は守るものじゃない。実行すべきものです。
この国は憲法を常にないがしろにしてきた。
インド洋やイラクへの自衛隊派遣……。
国益のためなら武力行使もやむなし、それが正常な国家だなどと政治家は言う。
これまで本気で守ろうとしなかった憲法を変えようだなんて。
私はこの国に言いたい。憲法を実行せよ、と」


「実行」という言葉を耳にした瞬間、あざやかな緑の大地の写真が脳裏によみがえった。
理想は実行された時、あんなにも力強く人の胸に迫るのだ。

01年米同時多発テロ後の米英軍の爆撃以降、アフガニスタンでは外国人への憎悪は募るばかりだ。
治安が急速に悪化した08年、仲間の日本人男性スタッフが殺害された。
政治的な誘拐ではなく金銭目的だった。
地域住民は必死に犯人グループから男性を救出しようとしたが、かなわなかった。
外国人をターゲットにした誘拐や襲撃は今も増える一方だが、その後、仲間が狙われたことは一度もない。
それでも念のため、一時は25人いた日本人スタッフを帰国させ、今は事務職員と2人だけ。
現場に出る日本人は中村さん一人だ。

日本のニュースはもっぱらインターネットで読む。
「日本はどうなっているのか」といら立つことが増えた。
「この干ばつは戦争どころじゃない。一人でも多く生きて冬を越せるように」と危険な作業に挑み、政府軍と反政府軍の衝突と聞けば工事中の用水路をざんごう代わりに隠れる、そんな厳しい日常から見る祖国の改憲論は、

「どこか作り物くさい。政治力をアピールしたいだけの芝居のように見える」

ならば、中村さんにとって憲法はリアルな存在なのか。
身を乗り出し、大きくうなずいた。

「欧米人が何人殺された、なんてニュースを聞くたびに思う。
なぜその銃口が我々に向けられないのか。
どんな山奥のアフガニスタン人でも、広島・長崎の原爆投下を知っている。その後の復興も。
一方で、英国やソ連を撃退した経験から『羽振りの良い国は必ず戦争する』と身に染みている。
だから『日本は一度の戦争もせずに戦後復興を成し遂げた』と思ってくれている。
他国に攻め入らない国の国民であることがどれほど心強いか。
アフガニスタンにいると『軍事力があれば我が身を守れる』というのが迷信だと分かる。
敵を作らず、平和な信頼関係を築くことが一番の安全保障だと肌身に感じる。
単に日本人だから命拾いしたことが何度もあった。
憲法9条は日本に暮らす人々が思っている以上に、リアルで大きな力で、僕たちを守ってくれているんです」


社会主義者でありながら愛国主義者で儒教的な道徳を重んじた父から幼い頃、論語を読まされた。
意味も分からず繰り返し唱えた倫理は、後にキリスト教徒となった今も心にある。
イスラム教徒たちに囲まれて暮らした29年間でたどりついたのは「宗教は異なっても人が生きる上での倫理はそう変わらない」という実感だ。

「道徳や倫理は完璧に守れるものではない。
何とか守り、実行しようと努力することが人間を大きな誤りから押しとどめてきた。
憲法も同じ。
倫理を多数決で変えようなんて筋違い」


救おうとしてもなお、干ばつ、病気、戦闘で人の命が失われていく国にいるからこそ、日本にいる人より、憲法をリアルに感じられるのかもしれない。

あなたにとって9条は、と尋ねたら、中村さんは考え込んだ後、

「天皇陛下と同様、これがなくては日本だと言えない。近代の歴史を背負う金字塔。
しかし同時に『お位牌(いはい)』でもある。
私も親類縁者が随分と戦争で死にましたから、一時帰国し、墓参りに行くたびに思うんです。
平和憲法は戦闘員200万人、非戦闘員100万人、戦争で亡くなった約300万人の人々の位牌だ、と」

窓の外は薄暗い。
最後に尋ねた。

もしも9条が「改正」されたらどうしますか? 

「ちっぽけな国益をカサに軍服を着た自衛隊がアフガニスタンの農村に現れたら、住民の敵意を買います。
日本に逃げ帰るのか、あるいは国籍を捨てて、村の人と一緒に仕事を続けるか」

長いため息を一つ。それから静かに淡々と言い添えた。

「本当に憲法9条が変えられてしまったら……。
僕はもう、日本国籍なんかいらないです」


悲しげだけど、揺るがない一言だった。【小国綾子】
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15 コメント

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憲法9条 (じゅんこ)
2013-06-08 12:23:49
 まうみさん、こんにちは。
中村哲さん、長年素晴らしい活動を続けていますね。
「本当に憲法9条が変えられてしまったら……。 僕はもう、日本国籍なんかいらないです」
この言葉、同感です。
時々、ニッポン人傭兵とかいるでしょ?そういう人たちには日本国籍を捨てて戦争に参加して欲しいと思っています。日本人である資格がないですよね。
以前、イラクで人質になった高遠菜穂子さんも言ってました。「憲法9条が守ってくれた」って。それで、2008年には「憲法9条世界会議」を千葉県幕張で開催して、延2万人の来場者があったんですよね。
「武装解除」を書いた伊勢崎賢治さんも、5/31号の週刊金曜日で、「実感したのは、「平和国家」という日本のイメージがいかにものをいうか、他国に武力介入しない経済大国に対する信頼の厚さです。」と書いています。
平和ボケしてるのは、戦争をしたがってる人たちですね。
憲法9条変えないで (ゴン太)
2013-06-09 08:21:22
初めまして。いつも遠い国にいる人のほうが分かってるよな・・・と思いながら読んでます。
外国でのテロの報道を目にする度、わざわざよその国に正義のためと称して戦争を仕掛けた結果だよなと思う事が多いです。
そして、日本で外国人によるテロが無いのは憲法9条のおかげで、外国で自衛隊が爆撃をしたらその分返ってくるのに、自民党や自民党に票を入れる人たちは何を考えているんだろう?と腹立たしいです。
原発を本当の意味で収束させるだけでもひとつの戦争に立ち向かうより大変な事なのに・・・と。
じゅんこさんへ (まうみ)
2013-06-09 09:39:33
じゅんこさん、記事の中にも書いたんですけど、こちらで暮らしてて、日本人である、ということが、ほんとに助けになったことっていっぱいあるんです。
もちろん、わたしだって平和ボケして生きてた人間ですから、歴史をあまりに知らなくて、お叱りを受けたことも多々ありましたけど、それでもやはり、戦争を放棄した国、という意味の大きさを、日本に暮らしている人たちも、気づいて欲しいと思います。

あの高遠さんも、当時えらい目に遭わはりましたもんね。
自己責任とかいう言葉が流行ったのもあの頃でした。
思いっきり使い間違えてましたけど……。
こちらでは皆、日本がどんだけ異様な反応をしてるかを、ずっと報道してました。

じゅんこさん、わたしも同様に、もし、今の政権の愚行を止められへんようなことになったなら、国籍のことを考えるかもしれません。
まあ、ここの国の籍を持ったとしても、あんまりろくなことは無いんですが……やれやれ……。
ゴン太さんへ (まうみ)
2013-06-09 09:44:53
はじめましてゴン太さん。
コメントしてくださり、ありがとうございます!

ほんまですよね、おっしゃる通りです。
テロなんて、自ずから招いてることで、それをまあいけしゃあしゃあと人のせいにして……厚かましいのもほどがあるってもんです。
このアメリカという国は、他の国もそうやと思いますけど、政治やってる人間がアホやってことと、それに加えて、もっとアホな軍の力がこれまた強い。
アホ度が高いだけに痛いですね。薬のつけようがないんです。
ここがコケるか弱るかしたら、地球はもっともっと平和になると思います。
市民はええ人いっぱいいるんですよ~。これもまた、他の国もおんなじですよね。

ほんまに、原発事故、忘れたんか?と、怒鳴り込みたい気分です。
どこまで他人事みたいにとぼけてるんかと。

ツッコミ入れたりましょうよ、もっともっと!
Unknown (なお)
2013-06-09 10:16:10
外務省HP
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/

竹島と尖閣諸島

9条でも守れない事があるみたいです(*_*)

あ、北方領土も。。。
なおさんへ (まうみ)
2013-06-09 12:16:17
コメント、ありがとうございます。

わたしにはこの、竹島と尖閣諸島、そして北方領土のことを、どこまで詳しく把握しているのかと聞かれると自信がありませんが、

このような事柄に対する解決への道を探る際にも、日本の戦争放棄という厳然たる標は、見事に活きていると思っています。

9条の信念は、不戦という、一番強い者でないと貫けないものだと思います。
こんにちは (たかこ)
2013-06-09 12:33:59
自分も、憲法9条を変えるて欲しくないな~と思っています。
自分の、父親が戦争に行って、シベリアで抑留されていたりしていたので、よく話を聞いてたりして、あまり戦争のイメイジが嫌なので、憲法9条を変えるは、嫌です。
あと、他の国でテロもあったり、イラク戦争の時の写真をネットで見たり、本を読んだり(歴史の本読んだりいろいろな本を読んでいます。)してたら、戦争も反対です。
質問してもいいですか?
アメリカの人たちの方が、戦争するのを反対してる方が、多いんでしょうか?
アメリカの大学生さんや、高校生さんは、いろいろと本や新聞を読んだりするんでしょうか?(ニュースはネットでも、見てるんでしょうか?)


たかこさんへ (まうみ)
2013-06-09 13:17:40
たかこさんの思いを話してくださり、ありがとうございます。
戦争は何の解決にもならず、町だけでなく、文化も自然も破壊し、人の命を蔑ろにする、そしてそういうことができる人間を作ってしまう、最も愚かな行為だと思っています。

ご質問ですが、たかこさん、このアメリカという国は、本当に大きくて(地理的に)、50の州ごとに風土も文化も、そして法律も違う、それぞれに独立した性質を持つ国なので、
アメリカの人たちということで質問を受けても、それに答えることはできません。
わたしが暮らす、東海岸の、それも身近なところでの様子なら、自信を持ってお答えできるのですが……。

戦争に反対している人、銃規制に精力を注いでいる人、原発に反対している人、モンサントを阻止しようとしている人、
それはもう、こちらにはたくさんいらっしゃいます。
連邦政府と州政府に分かれているので、反対運動の先をひとつにまとめることは難しいのですが、問題を問題として捉えている人はけっこう多いと思います。
ただ、州によっては、全く考えの違う方が多いところもあるようです。
それでも、その州に暮らしてみないとわからないのですが……。

こちらの大学生や高校生、もっと小さな子ども達も、本や新聞はよく読んでいます。
パソコンをひとり一台、というような世界で生きているので、多分ネットもよく利用していると思います。
小学生の子でも、よく政治や文化のことを聞かれたり話したりします。
回答ありがとうございました (なお)
2013-06-09 14:30:04
竹島不法占拠、尖閣諸島への領海侵犯と憲法9条を守っても全く解決の糸口が見えないから、憲法改正に大多数の日本人は動いているみたいです。ところで、9条改正に反対される皆さんは、もし外国が武力で日本に攻めてきた場合は、やはり無抵抗を貫くんでしょうか。管理人様はアメリカ在住で心配ご無用でしょうが。

結論をいうと9条はお花畑理論じゃないかなーっと思います。中韓みたいに9条なんて関係なく攻めてくる国や北朝鮮みたいな国もあるわけですしね。

Unknown (なお)
2013-06-09 14:36:10
ここは、9条を守る人達のブログだったのですね。

空気を読まず失礼しました。。。

それでは。

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