ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「クレーン操作に日本の運命がかかっている。子供だけでもいったん逃げてほしい!」草野氏・原発作業員

2013年10月08日 | 日本とわたし
南相馬市在住のルポライター、奥村岳志氏の web magazine:『福島 フクシマ FUKUSHIMA』に掲載されていた記事を、紹介させていただきます。

付け加える言葉がみつかりません。
これが現実だということを、あらためて、頭と心に刻み込もうと思います。

本当に、こんな状態を抱えている国の総理大臣が、その元凶となっている原発を売り込みに行ったり、
安全を私が保証するとか、コントロール下にあるとか、子どもでも恥ずかしくて言えないようなウソを言ったり、
なのにそれを、追及したり非難したりする、まとまった報道もなく、毎日がただただ過ぎていってしまっています。

なんとかして、気づいてもらいたいと思う者たちは、まるで巨大なモグラ叩きの機械の前に立ち、
次から次へと、暗い穴からチラット飛び出すモグラの頭を、慌てて叩くのが精一杯。
叩かれたモグラは、イテテ、などとふざけた声で言い、何事もなかったかのように、元の、仲間のいる穴蔵に戻ってしまいます。

こういうことが続いていく社会は、やはりとても病んでいます。
我々は、モグラ叩きゲーム機の前に立って、ビニール製の、さほどダメージを与えることもできない金槌を持って構えているだけでなく、
モグラ叩き機のネジを外し、解体し、穴蔵にもぐっているモグラを手掴かみで引きずり出し、お天道の下で徹底的に叩かなければなりません。

↓以下、転載はじめ(太文字や色かえでの強調は、わたし個人の考えで行いました)

汚染水より深刻 使用済み核燃料の取り出し
収束作業の現場から





東京電力福島第一原発事故の、収束作業の現場で働く、草野光男さん(仮名 50代 いわき市)からお話を聞いた。
草野さんは、事故以前から、福島第一原発をはじめ、全国の原発で、長らく働いてきた。
 
草野さんは、汚染水問題などに関する、国や東電の公式発表と、現場で作業する者の、意識のかい離を指摘する。
とくに、4号機プールで、11月中旬から始まる使用済み核燃料の取り出し作業について、その危険性を訴え、
「クレーン操作に、日本の運命がかかっている」と話す。

また、避難住民が多く暮らすいわき市で、地域の中で生じている軋轢について、「かつての戦争のときと同じだ」と憂う。
(インタビューは、9月中旬、いわき市内)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オリンピック騒ぎに、暗澹たる気持ち

――まず、安倍首相が、国際オリンピック委員会で、「状況はコントロールされている」「汚染水は完全にブロックされている」と発言した件から伺います。

草野:
私の周りでは、その話は話題にもなってないですね。
多少でも、現場でやっている人間なら、あんなの大嘘だってわかっていますから。

――7年後のオリンピック開催については? とくに、福島で、原発に直接かかわっている立場からすると。

草野:
個人的には、嬉しいことは何もないですね。
全然、関係のないことだから。
オリンピックで、日当があがるわけでもないですし。
むしろ、日当は下がる一方ですから。
 
国としては、全体が、オリンピックにシフトしていきますね。
だから、福島はなかったものにしたい、と思っているでしょう。
放射能汚染はないし、もう福島も終わったということにして、後は、住民を帰してしまえば、それで終わりということでしょう。
オリンピックが7年後、その前に、全部帰すことが目標ですね。
そうしたら、安全宣言ができるわけだし、その先、健康被害とか出てくるかも知れないけれど、そういうことは全部、隠蔽ということになるのでしょう。

――オリンピックへの集中で、東北三県で、作業員の不足も心配されます。

草野:
東京に持っていかないと、困るわけでしょう。
そっちの期限の方が、決まっているわけだから。
だから、「構ってられないんだよ、東北なんかに。あとは、おまえらで勝手にやれよ」という感じでしょうね。
 
オリンピックの騒ぎを見ていると、暗澹たる気持ちになりますね。この国というのは。




コントロールされているのは情報

――では、1F〔東電福島第一原発〕の状況について伺います。

草野:
1Fの危なさは、作業員には、何のアナウンスもされてないですね。
だから、一見、平穏無事。
 
作業現場まで、バスに乗って行くんですが、そのバスの中に、1号機から4号機まで、それぞれどういう状況か、ということを書いたものが貼ってあります。
そこには、「全部大丈夫です」「4号機のプールは、コンクリートで固めているから、倒れる心配はありません」とありますね。

――それは、ある種の安全神話、ということでしょうか?

草野:
そう、その通りですね。
「コントロールされている」と安倍首相が言いましたが、それは、情報がコントロールされている、という意味だったんですね。



――汚染水の情報も、コントロールされていましたね。

草野:
私の見方だけど、東京電力の方は、政府に泣きを入れていたと思うんです。
「情報を抑えるのも、汚染水を抑えるのも、これ以上無理」と。
でも、政府は、
「ちょっと待て。選挙控えているんだ。選挙終わったら何とかすっから」と。
 
まあ、本当は、最初から漏れているんですけどね。
だって、コンクリートなんか、ガタガタに亀裂が入っているわけですから。
 
だけど、今、いちばんの優先事項は、オリンピックのため、アベノミックスのために、安全神話で情報をコントロールすることなんです。
人間の命なんか、どうでもいい、という考え方があるとしか思えません。


今がチャンス、とゼネコンが主役

――いま、草野さんはどういう作業を?

草野:
私の仕事は、地震や津波でやられた機器を、点検し修理することです。
大きな定期定検は、正常に稼働しているのを止めてやるものですが、それではなく、個々のモノの点検を常時やっています。
事故後も、それは変わりません。
全面マスク着用だけど、線量はそんなに高くありません。
でも、除染してないので、埃で内部被ばくするから、全面マスク着用になっています。

――汚染水対策や、建屋内の作業などは?

草野:
私たちは、その辺には、全然、関わっていません。
はっきり言って、今、主役はゼネコンなんです、事故後は
 
私たちみたいに、事故前から作業に入っていて、ある程度、原子力の知識のある人間は、あまり入れたくないようなんです。
それでなのか、重要な部署には行っていません
 
そういうわけで、ゼネコンがほとんどやっている状況です。
1Fのところにビルができて、そこに、ゼネコンさんの看板が、デカデカとあります。
「がんばってます」みたいな感じでね。
 
――原発が稼働していたときは、ゼネコンは関係ないですね。

草野:
稼働していたときは、ゼネコンは関係ないです。
事故が起こって、ゼネコンにとっては、今がチャンスなんですね。
 
だから、今、立場的には、ゼネコンの方が上です。
私たちは、ゼネコンの回りで、余っている細々とした仕事をもらっている、という感じです。
もともと原子力に関わってきた者は、蚊帳の外に置かれていますね。

全国の原発に入っていて、ノウハウを持っているアトックス〔原発保守管理が専門の会社。本社・東京〕なんかも、
入退管理とか、そういう小っちゃい仕事しか任せられていません

やっていることは、雑用です。
アトックスは、自前のホールボディカウンターも持ってるくらい、いろいろ技術力はあります
だから、活躍していると思われるけど、でも雑用です。
今なんか、仕事なくて、下請けにまで仕事が回らない状態
ですよ。
 
前に私がいた会社の人たちも、全国の原発の仕事に回っています。
浜岡に行ったり、柏崎に行ったりです。

――どういうことでしょうか?

草野:
ひとつは、今言ったように、原発のことをわかっている人間は、入れたくないという感じがかなりあります
 
それから、昔からの原発関係の会社に比べて、ゼネコンの方が請負の単価が安い、という事情はあるでしょうね。
 
ゼネコンにとっては、おいしい仕事です。
降りて来た金を、黙って自分たちのところで回せばいいわけだから。
要するに、公共事業ですから。
名前は収束作業だとか言っていますが、単なる公共事業だ、と思っているんですよ、彼らは。
 
以前に、大成や鹿島の下で仕事したことがあるから、あの人たちのやり方はわかります。
スーパーゼネコンなんて、名前は格好いいけど、ただのどんぶり勘定の会社です。
田舎のその辺の会社と変わりません。
 
それから、もうひとつ言えば、当初で、みんな線量を使い切っているんで、現場に入れない、ということも大きいと思います。
 
私の会社でも、班長クラスは、線量が制限いっぱいいっぱい〔※〕なんで、誰も、線量の高い現場に入れないんです。
だから、他の仕事をするしかないんです。

〔※電離則では、年間50ミリシーベルト以下、かつ5年間で100ミリシーベルト以下
また、東電の管理基準で、年間20ミリシーベルト以下だが、下請け会社の基準は、それに準じてまちまち〕
  
――それは、いずれにせよ、収束作業の現場として、かなり深刻なことでは?

草野:
そう、かなり深刻ですね。
一般の建設現場で働くような人たちが、会社としても、作業員としても、入ってきて、とりあえずやっているということですからね。

東電はただの管理会社

――ゼネコンが主役ということですが、そうすると、東京電力は何を?記者発表をしているのは、いつも東京電力ですが。

草野:
もともと東京電力には、何の技術もありません
東京電力は、ただの管理会社なんです。
書類を見てハンコを押すだけ。
だから、管理監督なら、誰でもできます。
東京電力の服さえ着ていれば。
これまで、現場を何とか支えてきたのは、各メーカーの技術屋さんと、現場の下請けでなんです。
 
今、こういう状況になって、東京電力に何を訊いたって、「いや、あー、うーん」という感じですよ。
もともと、現場を知らないわけだから、何の発想も出てきません。
そういう人たちに、「なんとかしろ」と言っても、どだい無理なんです。
 
結局、作業の質は、現場の人間が、どこまで真剣に仕事をやるか、にかかっているわけです。


東電の態度は「復旧」

――事故の前と後で、東京電力の態度に変化はありますか?

草野:
何も変わっていませんね。
事故が起きた、という点だけが違うだけで、後は全くいっしょです。
 
強いて言えば、事故直後の3~4カ月ぐらいでしょうか、東電さんが、ちょっとペコペコしていたのは。
でも、そういうのは、すぐに「収束」して、もうとっくに元の横柄な態度に「復旧」しています
 
――みんながそうですか?

草野:
電力さんでも、心ある人はいますよ。
でも、そういう人はみんな、変な場所に回されてしまいます
私も知っている、東京電力の担当者の人も、作業員にも良くしてくれたし、一所懸命だったし。
でも、今は雑用をやっています。


線量を食うと倦怠感

――給料や待遇はどうですか?

草野:
一日で1万1千円です。
うちはまだいい方で、もっと下の方になると、5次、6次とか、7次、8次とかもいるから、そうすると5~6千円ですね。

――それはもう、福島の最低賃金ですね。危険手当とかは?

草野:
周りで知ってる限り、もらってないですね。
収束宣言〔2011年12月〕の前から、危険手当という名目はなかったです。

――全面マスクという現場に行く場合でも?

草野:
関係ないですね。
だから、他の仕事をした方がいいんじゃないか、と私も考えましたよ。
除染にいっちゃおうかなあとか。
そっちで1万5千円もらえるなら。
全面マスクして、1万1千円は、やってられないなと思いますよ。
 
でも、なんで除染に行かなかったかというと、除染では、放射線管理が杜撰(ずさん)ですからね。
そうすると、ゆくゆく、すごい損をしてしまいます。
たとえ1万5千円だとしても、相当の内部被ばくをしているわけだから、除染をやった人は、そのうちバタバタ行きますよ
 
サージカルマスクをしても、あんなものでは効果は知れてますね。
だいたい、暑くてマスクなんかしていらないですし。
 
結局、除染の現場は、管理されていないから、証拠が残らないわけです。
私の場合、病気とかなんかあったときのために、証拠を残しておこうと思って、原発に残っているようなものですから。

――ホールボディカウンターの数値は?

草野:
毎月、ホールボディカウンターを受けていますが、マックスでだいたい6000cpm〔※〕です。
事故前だったら、6000なんて大変な騒ぎですね。
事故前は800cpmぐらいでした。
 
でも、今、6000という数字が出ているからと言って、何にも問題にはなりません。
東電さんがやっているのは、「自分らは、ちゃんとやっていますよ」という、いわばパフォーマンスです。
作業員の健康を守るため、ではなくてね。
企業を守るため、ただそれだけでしょう。
現場作業員は、使い捨てですから。

〔※〕〔cpm=カウント・パー・ミニット 1分あたりの放射線計測回数〕

――ご自身の健康状態については?

草野:
個人的な感想ですけど、ある程度、線量を浴びた日は、つらい
だるいし、倦怠感が出ます
 
それから、この間、内臓をやられています
医者は、酒だと言いますがね。
因果関係を、証明はできないですから。


労災は自己責任

――被ばくの問題以外に、現場作業での労災は?

草野:
そんなもの、昔から、現場でケガをしても、「自分の家でやったことにしてくれ」ということです。
労災なんか、まず出てこないですよ。
よっぽど、救急車を呼んだとかということにでもならない限り

――中小の事故は無数にあるが、全部、隠ぺいと。

草野:
隠ぺいというより、出ちゃうと大変なので、会社なり、本人なりが、自分から、「家で転んだ」という風に被ってしまうんです。
自己規制、自己責任ということですね。
 
労災になると、労基〔労働基準監督署〕が入るでしょう。
1週間とか1カ月とか、現場が止まってしまいますね。
そうなると迷惑がかかるから、「家で転んだ」ということに自分でするんです。
ひどい話ですけど。


収束作業はまだ始まっていないような状況

――収束作業の全体の状況を伺います。汚染水対策というのは、前に進むというより、後退を強いられているような事態では?

草野:
そうですね、いわば負け戦です。
 
――そうすると、現場は必死、という感じですか?

草野:
いや、それが、現場は意外と必死ではないんです。
まともに考えると、もう目も当てられないですから、日々をたんたんと過ごすしかないわけです。

――溶融した核燃料の取り出し開始を、前倒しにするという、工程表の発表〔今年6月〕もありましたが。

草野:
あれは工程表ではなくて、全くの希望ですから。
工程表と呼べる代物ではありません。
 
収束作業は、実質的には、まだ、始まってないという状況でしょう。
 
燃料が溶けたり、再臨界したりしないように、冷やすしかないわけです。
それ以外は何もできない状態です。
だから、周りを片づけたり、環境を整える作業をしているしかないのです。 
 
ところが、そうしていたら、汚染水が管理できなくなって、水で冷やすというやり方自体が、限界にきていしまったわけです。
 
それから、溶けた核燃料を取り出すという話ですが、それ自体、ほとんど無理ではないでしょうか。
鉛で固めてしまう方がまだいいのではないか、と私は思っています。

 
――展望を描けるような状態ではないと。

草野:
厳しいですね。
深刻に考えていたら、やっていけないんで、与えられた仕事をこなすしかないですが。

――作業員の被ばくが問題です。

草野:
そう、例えば、タンク一個をばらすのに、一週間かかっていますね、急いでも。
組み立てるときより、はるかに時間がかかっています。
それは、ものすごく汚染しているからです。
作業そのものが難しいのではなく、線量の問題があるわけです。
 
他所から見ている人は、「汚染水、許せない」「早くやれ」と言いますが、実際にやっているのは、東電ではなくて、作業員なのです。
 
それが原発というものです、昔から。
格好いいのは、中操〔※〕だけです。
よく資料映像などで、原発はこんなにハイテクでクリーンなんだと、中操の様子を見せたりしますが。
でも、あの裏に行ったら、配線一本一本、配管の一つひとつを、一所懸命つないでいる作業員がいるのです。
もう、究極のアナログ、肉体労働ですよ、原発は。
〔※中央操作室 原発を運転する中心部。中央制御室とも〕


4号機のクレーン操作に、日本の運命が



――4号機のプールにある、使用済み核燃料の取り出しを、11月中旬から開始するとしていますが。

〔4号機プールには、使用済み核燃料1331体と未使用の核燃料202体が保管されている。
そこに、広島型原爆で、約1万4000発分の放射性物質(セシウム137換算)が含まれているという。
東京電力は、2014年末まで、作業は続くとしている。
その後、2015年9月頃から、隣りの3号機プールの、使用済み核燃料の取り出しを目指すとしている〕

草野:
これは、リスクのある作業です。
汚染水のレベルではないですよ。
汚染水はまだ、流れているだけですから。
それ自身が、すぐに何かを起こすわけではない。
海に溜まっていくだけです。
それはそれで、のちのち深刻な問題なのですが。
 
だけど、4号機プールの使用済み核燃料は、そもそも事故のとき、アメリカをはじめ、全世界が震撼していた問題です。
福島だけじゃなくて、東京が飛ぶかもしれないと、本気で危惧されたものです。
 
だから、失敗が許されないのです。
 
――汚染水タンクの問題が明るみに出るまでは、やはり安全神話があって、そういう、基本的なレベルでの、破綻や失敗はないだろうと思われていましたが。

草野:
4号機の作業で、タンクのときと同じレベルの人為的なミスや、技術上の問題が起こったとき、
汚染水のように、「漏れてました」という具合では済まされませんね。
起こることは、そういう比ではない
ですから。
 
水の中でキャスク〔特殊な容器〕に入れて、密閉して釣り出すというのですが、果たしてうまく行くでしょうか。
プールはガレキで埋まっているし、燃料集合体だって、壊れているかもしれません。

 
水の中にあるうちは、まだいいのです。
遮蔽効果があるからですね。
釣り上げて、外に出したときが危険です。
例えば、この間のように、クレーンが倒れたりするわけですよ〔※〕。
そういうことが起こって、核燃料が露出してしまったら……もう、近くにいる人間は、即死するぐらいの線量です。
一気に、命の危険にさらされます。

〔※9月5日に発生。3号機のクレーンのアームが、中央付近から折れ曲がった事故〕

――さらに、地震や津波の再来や、竜巻の襲来、ということも考えられますね。

草野:
そう。
地震や何かで、冷却システムが故障したり、プールにヒビが入って水がなくなるということだって、可能性としてはあります
もし、水がなくなったら、核燃料がむき出しになって、温度がどんどん上がり、大量の放射性物質が、まき散らされてしまいます。
 
そうなったら、作業員も、もう、現場から退避せざるを得なくなります
あるいは、決死隊になってしまいます
それが、チェルノブイリで起こったことでしょう。
東京まで避難になります

――使用済み核燃料の取り出し作業が、1~4号機全部で、10年ぐらい続くとしていますが。

草野:
気の遠くなる作業です。
その間、一回の失敗もないなんて、この間起こっていることを見ていたら、難しいでしょう。
また、10年の間、地震も津波も竜巻もない、という保証もありません


(事故後の4号機プール内の画像)

――作業員の確保の問題もあります。

草野:
そうですね。
個人的には、これだけのクレーン作業を扱える技術者が、集まるだろうかと思っています。
 
遠隔操作はできないでしょう。
この間のプールのガレキ撤去作業で、1日の被ばくが、2ミリシーベルトとかいっていますね。
すごい被ばくです。
線量の高いところに、クレーンで行かなければなりません。
作業時間が限られます。

そうすると、ものすごい人数がかかるわけです。
しかも、技術がないといけません
 
だから、作業員の確保というところで、限界にぶつかるかも知れない、と私は思っています。

――深刻な危機と、隣り合わせで進むわけですね。

草野:
そうですよ。
だから、オリンピックだとかと言って、浮かれている場合ではないわけです。
4号機で、釣り上げて一本ダメにしたら、もうそれで終わりになってしまう。
クレーンの操作に、日本の運命がかかっている

そう言っても過言ではありません。
その間に、地震が来ないことを、神に祈るしかないのです。非科学的ですけど。
 
でも、皆さん、祈りませんね。
アベノミックスで、景気がよくなるかどうか、なんてことしか話題にしていない
ですね。

――何が必要でしょうか?

草野:
不発弾を処理するとき、半径何メートルって、住民を避難させてからやるでしょう。
せめて、子どもを避難させるとか。
そこから行けば、すべての答えが出ると思うんですが。
でも、そんなことは、誰も言わない
ですね。
 
とにかく、子どもはいったん逃げてほしいです。
私は、最後までいるつもりです。
どのくらいまで見届けられるか、というのはありますけど。


被災地で見える住民の分断

――ところで、いわき市にいると、いろいろな問題が見えてくると思いますが。

草野:
そうですね、まず、国民をバラバラにする政策ですね。

――具体的にはどういうことですか?

草野:
例えば、東電の賠償をもらっている人と、もらっていない人との差がすごいです。
 
避難区域で、東電関係の会社をやってた社長さんなんか、売上げの何十%がもらえて、さらにあれやこれやで、すごい額になっていると言います。
そういう人たちは、被害を受けても、余裕綽々です。
でも、他方で、何にも知らないお年寄りなどは、賠償の請求の仕方もわからない、という状態です。
農家の人たちだって、途方に暮れている状態です。
でも、外から見たら、全部、同じように賠償をもらっている、と見られています
 
いわきでは、たしかに新車が増えているし、道も混みますね。
2万4千人ぐらいでしょうか、避難してきている人は。
ゴミの分別の仕方とかわかんなくて、そういう事細かなことから、いわき市民との間で、軋轢が生まれています。

――しかし、本当に文句を言わなければならない相手は、そこではないと。

草野:
そうなんです。
そういう風にしたのは誰なんだ、ということが問題なのですが、それをみんな、忘れているわけです。
 
身内で争っている場合ではないでしょう。
どうしてこうなってんだ。
こういう状況にさせたのは誰なのか。
そういう東電を、野放しにしている国ってなんなのって。
そこを見失っているように思います。

 
――参院選では、福島でも、多くの人が自民党に投票しました。

草野:
個人的な見方だけど、未だに、面倒を見てもらっている、という感覚があるのではないでしょうか。
被害者なんだけど、賠償なり、復興なりで、面倒を見てもらっている、という感覚です。
もともと、自民党が原発をやってきたことは分かっているはずなのに、目先のことしか見えていないんです。

――政治の次元ではなく、もう少し根本的なところで、変化が必要だということですね。

草野:
簡単には変わらないでしょうね。
変われるなら、こんなに原発は出来てなかったでしょうから。
原発を持って来れば、豊かになるとか、若い人が戻るとか言ってきましたが、結局この様です。
なのに、未だに、原発がダメなら、次は何をもってくるかといった発想になってしまう。
再生可能エネルギーを持ってきたとしても、その発想のままでは変わらないんです。
そういう発想をしているうちは、田舎はダメでしょうね。
儲けを持っていくのは結局、ゼネコンや大企業であり、都会なのですから。

――建設過程で、一時的に景気がよくなるだけですね。

草野:
そう、終わったら何もありません。
 
原発ができたときも、お蔭で出稼ぎがなくなった、と言っていました。
たしかに、仕事があるときはいいけれども、仕事がないときは、結局、みんな、全国の原発を回っているのです。
私も、1年のうち、半分も家にいませんでした。
定検、定検で回っていますから。
これは、形を変えた出稼ぎではないのでしょうかね。

――原発問題を考えるとき、都会と地方という問題に、目を向ける必要があるということですね。

草野:
都会の人は、原発がいいとか悪いとかということを、一刀両断できますね。
単に、電力を消費している側ですから。
しがらみもないでしょう。
だから、反対するのも簡単です。
 
でも、福島など、原発のある地域では、そうは行かないのです。
その感覚というのは、なかなか説明しても分かってもらえないのですが、そこが、一番の問題なのです。

 
家族や親戚の中に、東電の社員はいるし、下請けの社員もいる。
高校で成績いいのは東電で、悪い奴は下請けで。
じいちゃん、ばあちゃんも、畑や漁のないときは、原発に働きに行く。
そういう具合ですから。

 
本当に恐ろしいですね。
原発による丸抱えです。
田舎の弱みに付け込んでいる
、という感じですね。


あの時代といっしょ

――「復興に向かっているんだから、健康被害だとか、東電の責任とか、国の責任とか、そういうことは言うな」という空気もありますね。

草野:
私の友だちが、子どもいるから心配で、ある施設に行って、
「放射性物質の検査はどうなっているんですか」って聞いたら、その施設の検査が十分でなかったらしいのです。
そこで、その人が、フェイスブックにそのことを書いたのですが、
そうしたら、「そんなこと言ってんじゃねえ」と、メッセージが送られて来て、脅された、という話がありました。
 
いじめの構造と一緒で、声の大きい連中の仲間に混ざらないと、自分に被害が及ぶ、という恐怖感があります
だから、とりあえず、強い方に混ざっておくということになります。
それがいやだったら、もう何も言わないでおくしかありません。
疑問や危機感をもっている人に、ものを言わせない力が働いている、と思います。
 
あの時代といっしょですよ。
かつて戦争のとき、戦争反対と言えなかったでしょう。
終わってから、「自分は、反対だった」と言った人は、それなりにいましたが、それでは遅かったわけです。
 
いま、それと同じ状況じゃないですかね。
本当に恐ろしい。
ああ、この構造って、変わってないなと思います。(了)

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11 コメント

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業務委託 業務受託 (kumaka)
2013-10-10 02:23:58
以前勤めていた職場を思い出します。
私の職場であった大手企業は、実際の業務はグループ会社でもある他社に全面委託。私はその業務を受託していた会社の契約社員なのでした。
原発というとてつもなく危険な産業。その会社のオーナー、経営、運営がもっとシンプルな構造であれば、原発の危険さを肌身に感じられ、原発の拡大を控えられたでしょうか。
こうした企業の構造。今はたいていはこんな形態でしょうか。
それにしても安倍さん。私はこんなに他人を憎んだことはないと思う程の思いを感じています。とんでない嘘つきとして蔑みも。
kumakaさんへ (まうみ)
2013-10-10 10:02:14
大企業というのは、えてしてそういう、現場の業務とは乖離した世界をもっていますね。
わたしは、ほんの半年だけ、大手のガス会社の経理業務に就きましたが、
大きな部屋の一部に、現場作業の人たちの机があり、緊急対応などの連絡が入ったりして、いろんな仕事の内情を目の当たりにすることができました。

連絡の中には、とても危険なものもあり、会社に残る我々は、担当の技術者さんが、無事に処理をし、戻ってきてくれることを祈りながら待ったものです。
もうずいぶん昔のことですが……。

安倍氏に限らず、事故後の内閣や東電や原子力関連の幹部の人間に対しては、正直に言わせてもらうと、わたしも憎悪の気持ちを持っています。
どうしてあそこまで、無責任な態度を取り続けていられるのか。
とにかく、闘わねばなりません。
Unknown (トロツキー)
2013-10-11 15:05:05
参院選で福島の有権者が自民に投票したのは、
おたくらみたいな反原発が信用出来なかったからだよ。金貰ってるからとか、そういう短絡的な話じゃない。
中核とか革マルみたいな暴力集団と繋がってる連中に投票なんかしないよ。

大体、インタビューした草野とかいう作業員は
実在するのかね?脳内で作り出した架空の人物じゃないの?
おたくらはよくやるからね。ペンと剣で権力を奪ってきたからデタラメやデマを流すのになんの躊躇もない。目的のためなら手段は肯定されるんだろ?
なんせ銃口から革命は始まるが基本理念だからね。
でもね (頑張って下さい。)
2013-10-11 23:09:02
ま、よくある大局感の感じれない話ですね。問題定義は出来るが、問題解決に至らないよくあるパターンですね。嫌なら日本人を辞めればいい。必要十分条件を満たしてから、どうぞ。
収束…? (白やぎ)
2013-10-12 02:03:19
連日垂れ流され続けている汚染水。
最近、メディアでは汚染水問題ばかりを繰り返し報道されている。
確かに汚染水も非常に切迫した問題である。
しかし、大気中に放出される放射性物質は現在も止まっていない。

今も毎時1000万ベクレル 大気中に放出続く
財形新聞 2013年10月8日
http://www.zaikei.co.jp/article/20131008/155680.html

>東京電力福島第一原発事故に伴い大気中に放出された放射性物質は「セシウムの134、137を合わせて2万兆ベクレルになるとみている」と東電の廣瀬直己社長が7日の閉会中審査の参議院経済産業委員会で語った。
 廣瀬社長は「現在も毎時1000万ベクレルの追加的放出がある」と大気汚染が継続的に続いているという深刻な状況にあることを示した。

追加的放出?
もっともらしい言い方にも聞こえるが、『あの日』から2年7カ月。
状況は何一つ変わっていない。むしろ悪化の一途をたどっているとしか言えないだろう。
1000万bq/h……という事は、単純計算でも 1日=24時間で2億4000万bqである。

セシウムだけでこの有様だ。
それ以外にストロンチウムやトリチウムなども含まれているとなれば、一体どれだけの量になるのだろう?
現在進行形で大地に降り注ぎ、風が吹けば埃としてさらに拡散しているのだ。

であれば、除染しても新たに汚染される事を前提に国が多額の費用を投入して行っている除染事業にどれだけの効果が、いやどれだけの意味があるのか?

「一時的に放射線量の値が下がっても、2週間もすればまた元の値に戻る」という住民の話をどこかで聞いた。
その時は「森林などもあるから、そちらから流れてくるのかな?」と思った。
もちろん、原因の一つではあると思うが、放出が止まっていないのなら当然の話である。

これからますます汚染水の海洋流出や土壌汚染がひどくなってくる。
コメも、野菜も、魚も……。安全な食べ物もどんどん少なくなってくるだろう。

メルトスルーした核燃料の状態はおろか、デブリの場所すら把握できていない。
冷却を止めれば、どんな事態になるかわからないから、とりあえず水で冷やしている。
完全に冷却されていたとしても、線量が高く人間は近づけない。
そこまで見越したうえで廃炉の計画を立てているとはとても思えない。

4号機についても、建屋をコンクリートで補強した。震度6強の地震にも耐えられる、といっているらしいが建屋は一度ダメージを受けている。
ダメージを受けた部分をも完璧にカバーするだけの補強がされている根拠は……シミュレーション結果、らしい。まさに机上の空論ではないだろうか?

燃料棒取り出しについても同じ事が言える。
プールの上からのぞいて見ただけで、なぜ「問題ない」と言えるのか?
途中でラック(もしくは燃料棒自体)が変形していたら?
取り出し途中でクレーンにトラブルが発生したら?

1500本以上の燃料棒を、一度のミスもなく、すべて完ぺきに取り出せるのだろうか?
もっとも、取り出せなければそこで終了である。
そうなった時、被害は計り知れない。少なくとも東日本は壊滅との事だ。
もちろん、他国にも多くの被害が出るだろう。

「状況はコントロールされている」などと妄言を口走るヒマがあるなら、それこそ国民の代表として、守るべき国民のために命をはる覚悟で臨んでもらいたいものである。



トロツキーさんへ (まうみ)
2013-10-13 05:45:03
体調を崩してしまい、返事が遅れて申し訳ありませんでした。

反原発といっても、本当にいろいろな形で、いろいろな人が存在しています。
短絡的に決めつけず、とにかく、そういう違いは違いとしてそのまま尊重し、
原発のような、非倫理的なもので発電をしないと決められるよう、これからもコツコツ粘り強く、社会に訴えていきたいと思います。
がんばります。

草野氏についての質問は、このコラムを書かれた、南相馬市在住のルポライター、奥村岳志氏に、直接お尋ねください。
白やぎさんへ (まうみ)
2013-10-13 05:46:41
返事が遅れてすみませんでした。
この記事は、体調を崩す前に、書きたい記事の候補のひとつでした。

ちょっと遅れたという感じではありますが、いつか載せたいと思います。
ありがとうございました。
転載致したく… (百枝明彦(ももえだ あきひこ))
2013-10-14 12:49:44
まったくその通りだと思います。

〈これが現実だということを、あらためて、頭と心に刻み込もうと思います。〉
同じ思いです。

mixiの日記に転載致したく思いますが、よろしいでしょうか?
〈全体に公開〉を考えていますが、不都合あれば〈友人の友人まで〉あるいは〈友人まで〉でも。

いきなり失礼しました。
よろしく、お願い致します。
明彦さんへ (まうみ)
2013-10-14 23:28:59
はじめまして。
明彦さん、ここに載せた記事は、いつでも自由に転載してください。
もちろん全体に公開してください。
特にこの記事は、ひとりでも多くの方々に知ってもらいたいと思っていますので、どうか、よろしくお願いします。
ありがとうございました。 (こんこん)
2013-10-25 03:23:13
貴重な情報ありがとうございました。

世の中というのは「頭がイカれた連中」がトップになっている世界なので愚劣極まりないですが、
特に下記の情報が特にためになりました。
『東電はただの管理会社。
~でも、なんで除染に行かなかったかというと、除染では、放射線管理が杜撰(ずさん)ですからね。
そうすると、ゆくゆく、すごい損をしてしまいます。
たとえ1万5千円だとしても、相当の内部被ばくをしているわけだから、除染をやった人は、そのうちバタバタ行きますよ。 サージカルマスクをしても、あんなものでは効果は知れてますね。』

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