蛍のひとりごと

徒然に、心に浮かんでくる地唄のお話を、気ままに綴ってみるのも楽しそう、、、

『地』のはなし

2006年03月13日 | 地唄箏曲よもやま
私が尊敬してやまないお師匠様は、実は見事な『地』をお弾きになられることでも、つとに有名でいらっしゃいます。




      『地』と申しますのは、大変、面白いものでございまして、
      その部分がまいりますと、ずぅっと同じ手を弾き続けます。

      ツンルン、ツンルン、ツンルン、ツンルン、ツンルン・・・
      ですとか、ツルテン、ツルテン、ツルテン、ツルテン・・・


      たったこれだけの手で曲を表現するのですから、
      神業とでも申しましょうか。




『地』を弾く心得は、「本手を生かして、自分も生きること」なのでございましょうが、それこそ、言うは易し・・・の典型でございますね。
実際には、遠慮して弾けば地味に終わって目立たず、頑張れば本手を邪魔してうるさいばかりといったところが大方でございましょう。





いつぞや、さるお方が芸術祭で『四段砧』という珍しい曲に挑戦なさいましたが、
この曲の出来栄えは『地』にかかっているといった演目でございました。

ツンルン、ツンルン・・・だけで一歩も引かず、表現力の豊かさにおいては本手を超える『砧地』で、ため息も出ないほど素晴らしい「本手を生かして、自分も生きる」のお手本となる演奏でございました。その会場に居合わせられた幸運な方々は、さぞ満ち足りた至福のひとときをお過ごしになったことでございましょう。
平素よりさまざまな名人のお手を息を詰めて、じぃっ~と拝見させていただきながら、豊かな表現力の鍵は、何と申しましても、自由自在な消し音の技にありそうなとお見受けいたしております。


いつの日か、もしかして、私にもあのような豊かな『地』を自由自在に操れる日が来るのでしょうか






邦楽をお聴きになるチャンスがおありになりましたら、例えば、歌舞伎座などにでもお出かけになられましたら、ちょっとお耳をすませてごらん下さいませ。運がよろしければ、思いがけない拾い物をしたようなお気持ちになられるかもしれません。










啓蟄は過ぎたと申しますものの、今年の春もごゆっくりのようですね。
今日はやはりコートを羽織って出稽古にまいりましょう。
縁の上で虫におどろくウラウラ陽気はまだのようでございます

  




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