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海岸防災林の北海道方式

2012年12月05日 | ハ行

 東日本大震災の被災地の海岸林には、マツに限らず広葉樹も活用をと日本海岸林学会を始め専門家が提言している。その1人、北海道工業大学の岡村俊邦教授は、手間をかけず混交林を育てる植樹法を20年来、北海道の河川で実践してきた。できるだけ自然の力を借りて、自然に近い森の再生を目指す。これが「北海道方式」だ。

 マツ林と組み合わせ

 海岸はマツ、と誰でも思う。マツ類は栄養の乏しい場所で育ちやすい。とくにクロマツは塩害に強いため、先史時代から海岸に自然に生えていたという。江戸時代には防潮林としてマツの植林が全国各地で進められた。

 しかし、マツ林を維持するには松葉かきが必要だが、松葉を燃料に利用しなくなった現代は行われなくなった。そ
こヘマツクイムシによる大量枯死が重なり、海辺のマツ林は危機的状況にある。

 被災地の海岸に再びマツを植えていいのか。同じ樹種ばかりでは病虫害に弱くなる。一方で、マツ林に愛着を持つ人も多い。この悩ましい問題を議論した林野庁の「海岸防災林の再生に関する検討会」は、「海側は地域に適した海浜性低木と高木としてクロマツ、内陸側は防風効果を高めるために背の高い広葉樹を導入する」という提言を今年初めにまとめた。

 自然任せ手間いらず

 岡村さんは国土交通省北海道開発局と共同で在来種を利用した森づくり手法を開発。「生態学的混播(こんぱ)・混植法」と名付けて、1990年代初めから石狩川や十勝川で実践してきた。

 今年も9月に十勝川支流の音更(おとふけ)川の堤防で、音更町立木野東小学校の4年生147人が植樹した。

 子どもたちの活動は、近くの森での種子集めから始まる。それを帯広河川事務所が1~2年かけて苗に育てる。事務所にあるのはエゾヤマザクラやミズナラ、エゾヤマハギなど16樹種。この中から好きな7本を選び、雑草の侵入を防止するためじゃりを敷き詰めた直径2㍍の丸いユニットに植える。1人1ヵ所ずつ責任を持ち、何をどこに植えたかの記録も作る。

 その後は自然任せ。とくに手入れは必要ない。多様な苗がそれぞれのペースで成長し、30年後には太い樹木が1本か2本、自然選択されて残ることを想定している。

 十勝川水系の堤防では、すでに4万本近い苗がこの方法で植えられ、10年程度たった場所は生物多様性に富んだ混交林ができている。

 「自然の森のでき方の研究からたどり着いたのがこの方法。北海道のような積雪寒冷地で成功しているので、東北の被災地にも適用できると思う」と岡村さんはいう。

 住民を巻き込み、記録を残して追跡調査を続けるといった手法も含めたシステム全体を活用してほしいと岡村さんは提案する。

 被災海岸での植林はこれからだ。まずは海ぎわの地盤整備をしなければならず、早めに整備が進んだ仙台市荒浜地区が海岸の国有林再生の先頭を切る。

 林野庁には国有林の世話を企業や市民団体などに委ねる制度があり、被災地でもこの枠組みを利用する。すでに「協力したい」という問い合わせが20を超す組織から来ているといい、11月にも実施方法を公表する予定になっている。

 海岸の条件は過酷で、植林の失敗例も多い。林野庁は、植えやすい場所を選ぶとともに、植樹後も一定期間は世話をするよう求める方針だ。
  (朝日、2012年10月10日。編集委員・高橋真理子)

    感想

 宮脇方式とかなり似ていると思います。まあ、学者にはメンツもありますから、自分の考えを出すのは否定しません。

 防潮林を作る方は、どちらを選ぶか考えて選べば好いでしょう。

    関連サイト

命を守る森の防潮堤
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