植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

ニセモノに囲まれる とんだお目汚しでスミマセン

2022年03月16日 | 篆刻
昨日、仕事場を模様替えすることにいたしました。わずか4畳ほどの狭いオフィスに大きなデスク、書道篆刻用作業机、棚が大小7個を詰め込んでいて、年中、あちこちぶつかりものが落下し、通行にも支障が出ているのです。

 最大の障害が、PC2台が置かれた真ん中にあるデスク、これが歩行を妨げ空間を狭くしているのです。そしてもう一つが、考えなしにヤフオクでため込んだ印材やら書道具・関係書籍であります。よく学者先生が自室や仕事場からテレビ出演するとき、壁から何から資料や書物がうずたかく積まれていて今にも崩れそう、あんな状況です。来週末頃から子供たち3家族が帰省し出たり入ったりする予定なので、今のうちに屋上から2階まで、こぎれいにしておかなければ、みんなから顰蹙をかうのが避けられません。

 思えばこの建物が出来た時から8年間、このデスクがずっと定位置、品物が増え棚と物入が増えパソコンが3台になっても不動だったのです。これを全面的に動かし使いやすいようレイアウト変更することを昨日突然思いついたのです。思いたったが吉日。いきなり着手いたしました。
 これで普通のブロガーならば最低ビフォーアフターの写真を撮り、レイアウト変更の図面を書くところですが、ものぐさ、かつ多忙のワタシ、そこらは省略し、なんの予備的な片付けもないままいきなり机をずらすという暴挙に出ました。

 変更の骨子は、このデスクを壁に押し付ける、収納の棚や引き出しも背中の壁に並べる、それだけであります。デスクの上に電源の点いたPCやらキーボード、電話機ペン立てリモコンなどが乗ったままなのです。そのデスクを少し動かすたびに、OA機器を繋ぐコードが引っかかり椅子が邪魔をし、印材と半紙を入れた棚が行く手を阻みます。いいんです。そこで、考えながら端っこから決めていけば少しづつ形を成すのです。

 今まで角に置いてあった別のPC作業台兼用具入れを左にずらし、そこにデスクを四苦八苦して部屋の角に押し込みました。並んでいる篆刻の作業机は逆側にずらし空いたスペースに印材収納箱がピッタリおさまりました。もう勝ったも同然(笑)なので、ここで中断。(写真は整理途中なのですがこれでもましになったのです)。背中側に今ある本棚兼印材収納棚を少し動かし、それと全く同じ商品を後ほど買ってきます。すでに印材は収納に収まり切れずそこらに積んであるし、書道と篆刻の字典や書籍なども置ききれないのです。この際、倍の収納容量を確保し、きちんと整理しようと思います。


 さて、それはそれとして、昨日届いたのが「栄寶斎」の印泥。本物ならば現在売られているもので2,3万円、一昔前の逸品ならば2,30万円はいたします。これが3千円(笑)。栄寶斎は粗悪な模造品が多数出回っているという専門家さんの意見、そのものずばりです。
 はい、見たところ「栄寶斎」の印泥のようですが、一発でアウト・偽物と思われます。印泥は金箔が乗っておりぱっと見、高級感が漂うのですが、端に偏っています。きちんと作られた印泥は、油分を吸って柔らかな固形物ですから、何年も傾けていても流れてずれたりしません。届いたものはベタベタしていて、ゆるい固めの流動体なので、とうてい押印には不適でありました。しかも見た目は明るい朱ですが、実際に紙に付けるとダマになり、黒ずんで見えます。だめもとで「艾(もぐさ)」を加えて固く「しめて」みようと思いますが恐らく使い物にならないでしょう。

ついでに、きのう届いた「偽物」の田黄石をお見せしましょう。
ヤフオクでは、ほぼすべての人が偽物と判断してスルーしたものです。案の定人造石でありました。こんな大きな田黄石が本物なら、百万円近くいたします。「三井家蔵」と書いたラベルが張られた箱書きも、字は下手だし桐箱も妙に新しいので、100%贋作であります。もし、仮に三井家が一時でも収蔵していたとしたら、その関係者は全く見る目が無い骨董品音痴だったのでしょう。
 更に、以前紛れ込んできた似たような田黄石の偽物(人造石)がこれであります。
いずれも偽物と承知で3,4千円で落札し、話のタネ、部屋のインテリア・置物扱いなので腹も立ちません(笑)。書道具研究および印泥研究家(自称)のワタシは、書道・篆刻に関わる骨董品・文物などに、相当な確率で偽物が混じっているということを身をもって体験し、その都度小銭を失っております。水滴・硯・筆・印泥・印材、全てに渡って粗悪品が紛れこんでおります。そしてその出所は贋作・偽物文化の本家「中国」なのです。正直、どうせ偽物造るならもう少し精緻で本物ぽいやつ作れよ、と突っ込みたくなります。

というわけで今日は全く目の保養にならない「お目汚し」の写真にて大変失礼を致しました。
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不思議な印泥 印泥の価値は値段にあらず(中編)

2022年03月15日 | 篆刻
昨日の続きであります。

 篆刻家さんや書道家さんなど、落款を必要とする人たちにとって良い印泥とは①捺し易いこと ②色が美しいこと ③滲まず何百年もその色合いが不変であること になります。

 ①は印面に印泥を当てた時、ベタベタして溝が詰まるとか、ダマになるのは論外です。かといって、付きが悪いために強く押しても印影がかすれたり薄くなるのも困ります。丸く盛り上げた印泥を印の面にポンポン、と軽く押しあてた時、まるで微細な粉をまぶしたように均一にうっすらと朱が付着するのがいいのです。

 ②は、落款を入れる人の好みもあります。古色と言って暗く濃い赤または赤紫色がいいという方もいます。赤みが強い方が重みや枯れた趣が出やすいと考えるのです。しかし、日本人や中国人は、概ね明るい橙色をよしとする人が多く、傾向的には値段が高く高品質の印泥は、黄色味が強い「黄口」に近づく傾向があります。昨日紹介した高式熊(コウシキウ)さんや李耘萍(リウンピョウ) さんの提供する珍品とか上品とかのお高い印泥は、明るく艶やかで鮮明に印が捺せます。 

 ③は落款印の必須条件で、捺した時の色が半永久的に変わらないことが大事です。昨今の粗悪な安物は数年で赤黒く変色して作品が台無しになると言います。ということは、現存している印泥では、良質な原材料を使っていて、数十年あるいは100年以上前に秘伝で製造された印泥で、これまできちんと保管メンテナンスされたものが最上であるとも言えるのです。印泥は古いものに限る、というのが持論であります。

 さてそこで、今回入手した印泥の一つがこれです。
現在市販される新品の印泥にはほとんど箱の表に印泥社名か印泥名が表示されます。ところが、この印泥には表示のラベルは無く、箱の中にも説明書が付いておりません。厚紙に書かれている文字は「竹閣紅冰 涼堂降雪」中央の丸印は「清朝内廷御製印泥」で西泠 曹勤精製の文字が中央にあります。左には曹勤手製印泥高式熊と印字されております。印合(容器)は厚みがある紺色の陶器で、高式熊印泥に共通するものでした。曹勤さんは現役で、西泠印社の4代目マスター(大師)であります。字の通りならば、正当な印泥作りの継承者が、手作りで清朝時代の印泥を再現し中国篆刻の重鎮の高さんが公認ということになります。因みに「西冷」は二水ではなくさんずい「西泠 」が正当であります。

 印泥自体は鮮やかで明るい橙色、今時流行の高級印泥カラーであります。しかし、予想を覆したのは2両装と思われるそれが相当な硬さに固まっていたことでした。
 ワタシの推理では、これは通常市販されている物でなく、例えば、学術研究機関である西泠印泥廠限定で、清王朝時代の朝廷内で伝えられた製造法を再現し、訪問記念や賓客へのお土産用などに作ったものでは無いかと思います。つまり非売品です。印泥に縁の無い人が、それとしらずに貰って未使用のまま自宅保管しているうちに固まったのでしょう。早速印泥メンテナンス専用のひまし油を耳かき2杯分くらい投入し30分ほど時間をかけてかき混ぜました。元はいい原料を使っているはずです。油などの成分が蒸散し乾燥した程度なので、品質に変わりは無かろうと思います。

 さてもう一つの印泥は、箱に西泠印社のラベルが張られていました。これが安っぽいシール(笑)。内容物はやはり明るい朱色の印泥2両装、これも未使用品であります。ちょっと前までの印合(印泥容器)には、青みがある龍文で、底には景徳鎮とか乾隆年製の文字が焼かれていますが、これらは工場で大量生産する安物です。

 こちらの容器は蓋・底部に何も模様が無く「白磁」の体裁を模したのでしょうが、ほぼ無価値とみます。これがいかなるものかのヒントは、固い用紙に印刷された小さな説明文で、ごく最近印刷されているものです。こちらにも「西泠印社 曹勤」の文字が書かれてますが、肝心の印泥の種類や等級は不明です。見てわかることは、中央に金箔が乗っていて黄口の系統で、上の印泥に極めて近い等級・種類であろうということです。
 経験的に言えば、こうしたものが、一個数万円もする高価な高級品なら、それらしい雰囲気をだすような箱や印合を使うでしょうし、箱や蓋の裏に手書き風の表記や品種の表示があるはずなのです。
 もし、偽物を作るなら手の込んだ細工をしてもっと高額な高級品を装うでしょう。
 以上が、この印泥は、(杭州)西泠印社 のうちでもランクがやや高い方の品物で間違いないだろうという根拠であります(笑)。その値段は、品種が特定できませんが、「上品式熊」 程度と考えると、定価1万円ちょっとというところでしょうか。またしても、非売品か試作品という根拠のない結論でもいいかと思います(笑)。

 いずれにせよ、落款に使う印泥として良い品物かどうかは、値段や品種・ブランドでは無く、実際に印を捺してみないことにはわかりません。捺し易く良い印泥はどれ?どの色が美しいの?
続きはまた後日、先日落札した「北京栄寶斎」の印泥が届いたら、じっくり比較してみようと思います。




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今回届いた印泥と印材を検証(前編)

2022年03月13日 | 篆刻
 印泥の世界シェアは恐らく90%以上が中国であります。主要なメーカーは大体4社あります。最もよく見かけるのは「上海西泠印社 」「西泠印社( 杭州 )」「潜泉印泥(上海)」「石泉印泥」あたりですが、さらに「漳州(しょうしゅう福建省 )八宝印泥 」が加わります。他に「北京一得閣」「蘇州姜思序堂 」などの印泥が出回っておりますが、漳州八宝印泥以外は、新製品が出ていない所を見ると店じまいしたか、とてもマイナーで日本ではほとんど知られていません。

 これ以外には「(北京)榮宝斎」が別格としてあります。今でも北京の一等地にある老舗の書道美術品店の榮宝斎の印泥は、最も良質でブランド価値もあって数十年前は驚くほどの値段で売買されていたようです。偽物・粗悪品もずいぶん出回っていると専門家の説明もありました。しかし、近年になるに従って製法変化や素材の入手難などで、今はさほど高価なものが扱われているわけでもないようです。ワタシは、その栄寶斎印泥は3個収蔵いたしております。ここだけの話、昨夜ヤフオクで見かけ、3100円で落札しました。4個のどれも、本物か偽物か、あるいは垂涎ものの逸品かどうかは全くわかりません。

 印泥は、およそ印泥会社別個で等級を決めています。それによって価格も1両装(30g)あたり千円位から数万円と差が生じます。等級の区別は成分とそれによって生じる色合い、秘中の秘といわれる製造法、一流の印泥職人(大師)監修・製造か、そして印合(容器)の質等で決められるのです。
 
 実際は、同じ印泥廠からの品でも、時代によってその品質には大きくバラツキがあります。中国の多くの会社は共産党による建国の後、文化大革命によって伝統品が一気に劣化し、国有企業化され品質を落とした様です。北京一得閣もそれまでの個人事業だったのが「北京製墨廠」 と名を変え、その後民営化一得閣の屋号を使ったものの中身はまるで変ってしまったのです。石泉印泥廠は、もっと以前から良品を出していましたが、内紛・お家騒動が続いて様々なのれん分けや、社名変更が行われ判然と致しません。
  
 そんな中、著名な篆刻家・書道家さんで組織された学術団体(呉昌碩 を中心)で良質な印泥を再現するようになったのが「西泠印社」です。そこから枝分かれし呉隱さんが起こしたのが「( 呉氏)潜泉印泥 」、さらにその中心的人物が(三代目)李耘萍女史 です。彼女は元は上海石泉印泥廠長で、が最高品質の印泥を発明し、いまでは印泥製造の第一人者で、3年前に亡くなった篆刻界の重鎮高式熊さんと組んだ高級印泥を世に出し、李耘萍印泥の会社を起こしました。耘萍ブランドは、潜泉・石泉・耘萍・高式熊という4つの印泥に冠されるようになっています。

 ワタシは40個ほどの中古・時代物の高級印泥のコレクションがあります。いったいどの印泥が一番いいか、どれが最高なのか、これを判定するのはほぼ不可能です。前述の北京榮寶斎の、最高級で品質が最上であった時代のものでもない限り、骨董品として高価なものはありません。(ただし「粉彩」と言われるような骨董価値がある容器=印合は別です)

このたび新たにヤフオクで落札した印泥2個、印材6個計16千円の品が届きました。前々回のブログ値打ちものが、安い中できらりと光る  - 植物園「 槐松亭 」に予告(笑)しました。篆刻・印泥研究家(自称)としてこれらの品々がなかなか興味深い(想像とはだいぶ違う)ものだったのです。

5個の印材は、パリン石と見ました。それぞれに紐が彫られ、印箱もついていますのでまぁ1個千円前後でしょう。まず見慣れないのが下の赤茶色のケースに収められた「紅芙蓉石」です。
普通印箱は蓋と一体で紙の箱に布を張り合わせたもので、小さいものなら2,3百円、上質な麻布なら千円前後、革張りならば千円以上いたします。こちらの箱は、なんと下箱に中蓋を被せ、サイドから上蓋を横に差し込む体裁になっています。かっちりとして手の込んだ印箱です。こんなのは初めて見ました。

 石は非常に奇麗に磨かれた良材で、恐らくは、中に入っていた紙片に書かれた「紅芙蓉石」と思われます。1.5㎝角ながら10㎝の長さも珍しく、紐は鹿ににせた珍獣でしょうか。とても美しく珍しい意匠の細工であります。箱にも石にも痛みや傷が無く、未刻で決して古い文物ではありませんが、なかなかの値段で売られていたものであろうと思われます。例えば、中国の観光地や大都市の老舗書道店の鍵付きのショーケースで展示販売されるような類です。「これに刻印を依頼すると4,5万円かかります」みたいな。

さて肝心の印泥ですが、予定の稿を越えたので続きは明日といたしましょう
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桜の前の小花たちも見逃せない

2022年03月13日 | 植物
5時起きでマイガーデンに出ております。

ワタシの活動拠点は、自宅から500mほど離れたコンビニの裏手にあります。コンビニの2階が仕事部屋で、書道と篆刻、メダカ飼育に洋ランなどを育て、時には蕎麦打ちもいたします。

 園芸は、建物の裏手で、本来は、小規模開発の許可条件の「緑地帯」であった場所をメインにしています。当初は100本弱のレッドロビン(アカメ)とツツジ10本ほどであったのですが、バラ好きのワイフにそそのかされて、アカメを抜いてはバラを植え、ツツジを抜いては果樹を植え、ついに全体で60坪ほどの植え込み・緑地を全部「バラ・果樹園・菜園」に変えてしまいました。

 コンビニの裏手のスペースながら、日当たり良好で南向き、出来るものなら戸建てをたててワタシの庵としたいほどなんです。ほとんどの部分が、コンビニに来る人たちの目に触れないので、好き勝手に土いじりが出来ます。ワイフもここは基本的にワタシ任せで立ち入ろうとしません。知り合いからは「〇〇さん(ワタシ)、以前からお花が好きだったの?」とか「なんで汗水たらして園芸やってるの」などと聞かれます。

 別に好きでもなく興味も無かったのです。きっかけはワイフの希望でしたが、見よう見まねでやってるうち園芸が面白くなっただけです。ガーデニングの目的は、と問われれば「自分の為」そして「健康」の為としか言いようがありません。陽光を浴びて、季節の移り変わりや風を感じ、誰とも言葉を交わすことなく1日が過ごせるのです。精神衛生上、これほどいい事はありません。いつも意見が対立するワイフですが、ガーデニングのいいところは、しゃべらなくて済む、で一致します。

 更に、やり始めれば立ったりしゃがんだり、上を向いたり下を向いたりで自然と体を使っているのです。畑を耕せば汗をかくほど筋肉運動になります。草むしりは手と足を鍛えてくれます。憂き事・雑事も頭から離れ無心になれるのです。誰からも指図されることなくやりたいときに好きなだけ土いじりをし、疲れたらそばのコンビニでコーヒーがただで飲めます(それは無い笑)。青空を見上げ、野鳥が訪れて囀ります。優しい風が頬を撫でていきます。

 血糖値が高く高血圧の薬も10年飲んでおりますが、普段の生活や行動で発症する生活習慣病は、普段の生活から改善すれば徐々に正常になりますね。美味しいものを食べ、心が健康で、こうして体を動かすことさえできれば、なにより良薬であろうと思います。

 そして、無農薬・有機栽培の野菜や果物が、ほぼ一年中採りたてで食べられるのです。こちらが枯らすことさえしなければ、植物たちはしっかり自立し、頼りないワタシでも、ちゃんと応えてくれます。文句も言わず、なかなかいじらしいのです。

 さて、今の季節は「小花」が咲いてくるのです。桜の前には「アーモンド・桃・プラム」などが咲き始めます。アーモンドの花は桜より美しいと思います。これがあと10日もすれば満開になります。

こちらはオージープランツ「グレビレア」の蕾。オージープランツは育てにくい品種が多いなか、地植えでほったらかしでも強健です。


常緑ガマズミ(ビバーナム・ティヌス)。秋には紫色も実もつきます。
 

 雪柳の花も咲き始めました。純白でしなだれるこの花は遠くからでも美しいものです。

沈丁花は今が盛り、二階の部屋までその香りが漂って参ります。

あと2週間もすれば関東の桜開花情報が流れて来るでしょう。でもワタシのお花見はすでに始まっているのであります。
 
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値打ちものが、安い中できらりと光る 

2022年03月12日 | 篆刻
このところヤフオクで「田黄石」などの希少で人気が高い印(材)が妙に高値になるのです。需要が大きいせいか田黄石の出品も多く真贋不明の石を含めると常時数百の田黄石が見つかります。

 明らかな偽物・人造石を除くと数万円の値段が付き、一部の珍品はヒートアップして深夜まで入札合戦が続いて最後は「出品取り消し」も多発しています。落札予定時間が夜10時としても、最高額が更新されるたびに6,7分期限が延長されそれが延々と繰り返されるのです。それに回数や時間に一定の制限があって自動的に入札停止となるのか、あるいや出品者側の操作によるのかは存じません。

 ワタシも、たまにこれは欲しいと思うと、最後の数分の入札合戦に参戦することがありますが、「熱く」なって思わぬ高値でつかまされるのを恐れ、だいたいはすぐに撤退するようにしています。その撤退基準は「入札件数・競争相手数・時間・金額」であります。残り時間が数十分となった時すでに50件以上の入札があれば中には懐がとても豊かな人、熱狂的に欲しがる人がいるので価格競争するとエスカレートします。最後に複数が諦めないで競争になるとやはり意地になって降りなくなるのです。また、起きて趨勢をチェックすると睡眠時間を削られます。

 自分が最高額になるとすぐに、それを上回る入札があると危険信号、深入りは禁物です。それでまぁいいか、と諦めたら翌朝その価格で落ちたことも何度もあります。しかし、ではもう少し(500円か千円くらい)乗せたら落札出来たか?というとその可能性は低く、その場合、相手方がもっと高値を出す公算が大きいのです。

 さて、そんなわけで、このところほとんど不調に終わっていたのですが、ひさしぶりに3件落札しました。そのうち2件は最低入札価格、つまり無競争での落札です。一つは、篆刻関連の中国本3冊千円、もう一つは「幽玄斎」の中筆であります。これは、仮名書きや調和体(漢字とひらがなの混じった書)に向いた長鋒の羊毛筆二本です。幽玄斎の筆は10本程度所有していますが、非常に良質で書きやすいので、昔は(恐らく)とても高価で、専門の書道家さんでないと買えないような高級筆です。今はネットで「幽玄斎」を検索しても商品はヒットせず、高知県と台東区に書道販売店があるだけです。

 その幽玄斎の中古筆、写真に見えるラベルの定価で2本27千円が2,999円でありました。ワタシの見立てでは、30年ほど前の古筆ですが、墨が付いたまま固まっているので状態が悪いとみて人気が無かったのだと思います。30年前と推定する理由は①幽玄斎の価格ラベルには消費税が付加されていない ②今や原料供給が途絶えた良質の羊毫筆=細嫩光鋒(サイドンコウホウ)を使っている  ③幽玄斎は「文林堂」という書筆屋さんの職人の敬称(屋号)ですが、軸には幽玄斎や文林堂・筆名が刻まれていない(店頭販売のみ)のでインターネット販売が主流になった20年くらい前にはすでに廃盤となっていると思われるからです。未使用の幽玄斎の筆は見つかりません。
 「ビフォー」今朝ポストに投函されていた手入れの悪いこの筆をとりあえず洗いました。
写真左2本が「アフター」です。へたりや毛切れもなく、新品同様の状態です。定価の1割で、滅多に出回らない幻の筆を入手でき、至極満足であります。因みに右の5本もすべて幽玄斎の古筆、これだけで定価が15万円ほどいたします。

 幽玄斎筆は、使ってみないとその良さが分かりません。特徴は細めの軸で、普通の筆より5㎝くらい長いものもあります。手練れの書道家さんが愛用したその穂は、入手困難で高価な山羊の白い色が抜け飴色と銀髪の中間程になり艶やかさもあります。非常に高価な毛を用いるせいで、割合穂先のボリュームが少なめで、大筆は見たことがありません。

 狭義の細嫩光鋒とは、中国長江下流地域のごく限られた地方のみで野生であった山羊を食用に飼い、その若い雄山羊の髭(たてがみ)の毛を指します。世の中で、最も供給が少なく最高の品質の筆の原材料なのです。細光鋒 と同じところから選別して採取しますが、ごくわずかしかとれないのです。非常に細い絹糸のような毛なので熟練しないと書きこなせません。昔は高く売れたのでそんな貴重な山羊も姿を消し、今は似たような山羊の毛が代用されています。 

 落札したもの三つめは、印泥2個と「紅芙蓉」の紐つき印を含む6個の印材計16千円でありました。実は同じ出品者で「田黄石」らしき印2個が出ていたのですが、残念ながら期限間際で3万円を超えていたので断念しました。(どうやら時間切れで入札取り消しになったようです)

 印泥の一つには非常に質がいい「高式熊」の表示をみつけたのです。1両装(30g)で安いランクのものでも8千円ほどします。もう一つは珍しい印泥で「品名・印泥会社名」が明示されていないのです。(お土産用の粗悪な印泥にもそうしたものがありますが)。初めて目にする印泥ですが、直感で自称印泥研究家としてぜひ入手したいと考えたのです。

 その印を入れる「印合」が安物では無く、現在、一般的に流通する中国の印泥では最も著名で高級な「 高式熊 」やそれとタイアップした印泥製造の第一人者李耘萍( 潜泉印泥 の中心人物)のブランドなどに使われているような印合でした。これが少なくとも2両装残っている(ほぼ未使用)ようなのです。

 さて、この印泥は明日にも到着する様ですが、これは別稿にて紹介するだけの由来や価値がありそうなのです。
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