植物園「 槐松亭 」

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「寿山石印材を極める」を究める 前編

2023年06月01日 | 篆刻
とうとう昨日到着しました。先週5/25に落札した品物が届いたのです。
待ち遠しかったなぁ・・・

それは、石印材50顆のセットで、「印材 寿山石『福建寿山石章』 寿山石資料 篆刻家必須の座右資料」と表記されておりました。即決35千円での提示額を見て、10分後には即決・落札いたしました。見つける二日前に出品されていたようで、すでに数人の「ウオッチ」が付いていたので一刻も猶予がならないと思いました。

自分が蒐集している石印材の、種類特定のためには、実際の(本物)の石を知る必要があるからです。
その石印材の中心地で、世界最大の産地が福建省の寿山であります。ホームセンターでは普通に売られている印材が「寿山石章」と青田石、いずれも粗悪な駄石が多く青田石に至ってはアフリカ産が多いようであります。その寿山石の9割以上は、山塊から切り出したほかに名前を付ける必要もない、変哲のない安物で、多少引っ掛かりがあったり割れやすかったりするけれど篆刻用に彫れる石なのです。

ワタシが集める対象の寿山石は、希少性があって美しい、印材として優れたブランド石であります。それも実は多種多様なので、所蔵・所有する印で、いまだに何と言われる石かわからない、あるいは本当にこれは「〇〇石」か?という様な微妙な石が多数含まれているのです。仮にこれらの石が、いくつかが偽モノであっても、天然石でそれなりの印材ならば、1個当たり700円ですから「激安」と言えます。


写真には田黄石数種類他、約100種類以上の寿山石の名称が記載され、そのうち50個がずらりと並んで収められておりました。説明書きには、3分角~8分角、小さいもので1.3㎝ほどとありましたが、数千個の石を扱っているワタシにとっては、その大きさの見当は付きます。「廃業の業者さんから入手したもので、一度眺めたきりのもの」とありました。出品者さんは、まだ出品件数が十数個で「書道墨硯〇」さんという方でした。

品物は大きな化粧箱に「福建寿山石章」とラベルが貼られ、ふたの裏には「福建省樟林雕刻加工場」と印字された紙に説明書きと石の種類が羅列されていたのです。福州市樟林村は寿山石の里と呼ばれる、石印材加工のメッカであります。そこで、扱われる端材や膨大な印材の中から、適当にチョイスして50本立ての見本セットを拵えたのだろうと想像しました。原石から半製品まで扱って、その出所も把握出来る本場・中心街なので、分析眼がある目の肥えた人がセットしたでしょう。真正の銘石でなくても、それぞれの種類の特徴を表す石を選ぶに相違ないのです。

写真では上から「田坑」・「水坑」・「山坑」に区別して記載され、凡そその通りの順に印材が並べられています。これは上の方が希少性が高く石の値段も高価ということでもあります。少なくとも一番上の段の10個のうちの幾つかはワタシがその蒐集のメインとしている超高級石「田黄石」として並んでいたのです。小さいもので10g大きいものは20gくらいありそうな自然石形の丸石・小石であります。これらがそれぞれ、もしも田黄の一種であれば、最低でも5千円、ものによっては1万円以上でないと入手できません。

この見本石を落札したのは「お値打ちもの」だからではなく、寿山石など石印材の種別を正確にするためであり、手持ちの印材の多くの種類を特定することにあるのです。それなので、届いた50個が何という石で、どのくらいの価値があり、その見分け方を習得することが大事でした。

そこで、まず書かれている漢字を全て判読することから始めました。明細表には150種ほどの名前があって、そのうちの50個が現物としてあるのです。また石が嵌っているケースにはビニールで覆われていて、その下に石の名前を記したラベルがありました。これをノートに書き写すことにしました。

それがなかなか読めない(笑)。そもそもが古いもので印字が薄れている、ビニールがしわしわで読み取りにくい、中文(中国語)は簡体字という字画を省略した漢字なので、日本人には読めないものが多いのであります。

50個のうち30個は特定できました。自分でも知っているような著名な石の名前なら、簡体字でも想像がつきますから。3字のうち2字まで読めればあとはほぼ知っている石の名前が浮かびますね。こんな感じであります
「頭」→头  「廣」→ 广  「園」→园

しかし、残りの20個ほどは文字が消えかかっていたり、ネットでも調べられるような字画になっていない見たこともない漢字がだったのです。そこで、3冊ほどある石印材の専門書を取り出して、似通った石の名前と突き合わせることにしました。それでも半分以上が不明でしたが「方宗珪」さん著の「寿山石印材を極める」という図鑑を持ち出しました。すると、150種ほとんどの名前が、この本とぴったりで共通であることに気づきました。他の本には記述が無いマニアックな石の名前がいくつも出てきます。中には方さんすら、「古書の記述のみで実物は見かけないという」ような種類もあります。

つまり、この石の見本セットと図鑑の情報は同じデータベース・情報から書かれているに相違ありません。考えられるのは、石工場の商品責任者と方先生のどちらかが、相手を参考にして作成したか、双方が関係者であったか、さもなければこの両者が参考にした基になる信頼置ける資料書籍・バイブルがある、かでありましょう。いずれにせよ、そうであるならば、この50個の石の名前は信憑性が高いというふうに考えていいと思います。

そろそろ予定稿に達しましたので、続きは明日 乞うご期待であります。

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