植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

(安いかもしれないが)愉しめるのが石印材

2023年03月18日 | 篆刻
ここ2,3週間、あれだけ集中して彫っていた「篆刻」は休止状態で、1本も彫っておりません。自治会やパソコン不具合、園芸、メダカなど諸雑事に追われ、幾つかの深い悩みや精神的なショックによって、「それどころではない」状況が続いているのです。いずれそれらはいつの間にか消えたり、なるようになる、のでしょうが。少なくともあと3週間は慌ただしく心が休まらない日々となるのが確実なのです。

そんな日常でも、ヤフオクのチェックだけは欠かしません。食後から就寝までの数時間だけが、他に何もせずに済む安らぎの時間で、ひどい悩みでも、その時間だけは趣味やスマホに集中することで忘れることが出来るのです。正直テレビは点いているだけで、ほとんど観ることはありません。時間の浪費で、CMばかりの民放も、大相撲や政権を援護する優先するNHKも観る気にはなりません。

ヤフオクは、消耗品・実用品が優先であります。原則1件1万円以下で、蒐集する「石印材」もよほど魅力的な美品・銘石でなければ、深追いしません。結果としてはどこにでもあるような安物の石がほとんどであります。しかし、中にはとても優雅な石や美しく丁寧な細工物が入手できるのが楽しみなのであり、ささくれた心を多少なりとも癒してくれるのです。

石の種類や価値は鑑定家でもなかなか分からないようです。例えば印材の王様、と言われる宝石並みの値段で取引される「田黄」ですが、その定義である山坑に近い渓流や寿山郷の田黄坂一帯の田畑に埋もれていた、という条件はよほどでなければ確認出来ません。あくまで見た目が「ねっとりしている」とか紅筋や蘿蔔紋(らふくもん) が無いといけないなどは主観によってだいぶ違ってきます。あまりに高価なので、似たような石を「田黄」として販売する輩が無数にいるのです。実際、高山凍・黄芙蓉・杜陵坑などの別の黄色い石でも田黄を凌駕するような美しい石も多いので、区別はつきにくいのです。

最近入手したものはこれです

印面に彫があって実用印として用いられているものです。上から「広東緑」、青田石、パリン石であろうと思います。広東緑は微透明な白を基調として半透明の緑の石が混じるのが多いのですがこれだけの大きさで透明度が高く黒色に近いのは珍しいのです。「倣完白山人」と彫られているので、中国の篆刻の大家「鄧 石如 」さんの摸刻でありましょうか。真ん中は「耕石刀」とあり、もしかすると大正昭和で活躍した篆刻家で歌人の「服部耕石」さんかもしれません。「仁風軒図書」と彫られております。

一番下は「武内錦節女史」に頼まれた「張信」と言う人が彫った印です。想像するに中国に旅行した武内さんが、篆刻・印章店に赴きその場で彫って貰ったのでしょう。細工がなかなか凝った紐や極小の長文漢文が刻まれていて、結構な料金を支払ったはずです。

お次は定番の田黄のような石(笑)であります。箱の裏には鉛筆の走り書きで「1000ー 田黄」とメモがありました。印箱は、ワタシの知る限り、最も上質な布張りで、伝統的印泥メーカーの蘇州姜思序堂で使っていたものと同じでした。1000は価格表示で中国の1千元とすると、現在のレートで20千円位で買い求めたのでしょうか。田黄にしてはやや安いと言えます。時代が分かりませんから、もっと昔の1980年なら人民元は150円位、すると15万円であったかもしれないですね。印面は未刻、丁寧な浮彫「薄意」が施され、紅筋らしきものも見え、掘り出し物であったかと喜んでおります。これは5個まとめてで15千円で落札できたものの中の一つですから。

最後はこれ。説明書きには「田黄」の文字はなく、寿山石でありました。白茶けた石質が混じり透明感が乏しいので田黄ではない、と皆さんも判断したのでしょう。それでも、その薄意が丁寧であったのでちょっと競ったため5,700円の落札となりました。未刻印で、幾筋かのヒビが走っております。恐らくそんな特徴から連江黄かと思われます。

こんな価値があるかどうかもわからない石ですが、自分の掌に乗せ艶が出るように優しくこすったりして愉しむ「掌玩」、これが良いのであります。憂き世を忘れ悩みもその時は消えてまいります。
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