植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

冷たい海に沈んだ人たちを想う

2022年04月28日 | 時事
気持ちが悪いエンディング、後味の悪い映画がいくつか記憶にあります。以前このブログにも書きました。その一つが「タイタニック」です。デカプリオ扮する画家の卵が上流階級の令嬢ローズとともに海に投げ出され、ローズを船の破片か何かに上げ、自分は海中で凍死するという最後が、なんとも嫌な感じに思えて二度と観ません。

今回の知床観光船の沈没は、やりきれない事故でした。昨日ようやく事故発生5日後になって初めて桂田精一社長が記者会見に出てきました。あまりのお粗末さ胸糞悪い態度に途中で見るのをやめてしまいました。今まで雲隠れしていたくせに(恐らく弁護士などと責任回避の謝罪文を作っていたのでしょうが)、いきなり土下座3回、こういうのはわざとらしく、本当に謝罪するという態度ではありません。テレビや映画でしか見られない一種のパフォーマンスです。おまけに冒頭「お騒がせします」と言いました。不倫や不祥事で騒動を起こしたならいざ知らず、自分の経営する会社の観光船が無謀な出航し26名という人命を失ったのです。お騒がせというレベルではないでしょう。

案の定、人が作った謝罪文(声明文)を棒読みしているので幾度か誤読をしていました。

分かっている事実は「事故」を起こしても当然という実に杜撰なものです。
①GPS装置は故障して取り外していた
②無線アンテナが破損していたのに放置
③衛星携帯電話については、「故障中で修理に出していた」
④運行を止めるように忠告されていたのを無視し、天気予報すら見ていない未熟な船長任せだった
⑤すでに複数回の事故を起こしていて船舶に亀裂があったものをちゃんと修復していなかった。
⑥ベテランの船長や船員を大量解雇し、素人同然の船長一人を操船させていた
⑦社長は船舶や観光船事業の素人で、他人の運行事業会社を買収しただけだった
⑧事故直後に社長は私用で会社を離れていて、事故の連絡を受けていなかった

挙げるときりがないのです。全く「ないない尽くし」もいいところ、無責任な経営者が、金をケチって様々な安全対策を怠っていたために起きた「人災」であります。避難ボートや筏でもあればまだ助かったかもしれませんが、ライフジャケットでは北海道の凍るような海では何分ももたずに意識が無くなるそうです。

にもかかわらず、「自分が至らなかった」と曖昧に責任の所在をぼかし言質をとられないようにしていました。事故の原因は分からない、出航の判断は船長に任せていた、天候が悪化したら引き返すように条件をつけていた、と社長自身の責任回避に終始しているように見受けられます。恐らく既に亡くなったであろう船長に責任を押し付け「死人に口なし」にするつもりなのでしょう。

事故船の発見、不明者の捜索は当然ながら、これから、事故原因の解明が始まり、遺族への補償が重要な問題となります。船舶には保険が入っていたでしょうが、旅客補償保険に入っていたのか気になります。この社長は事業拡大欲は強く、借金をだいぶ作っているようです。また、コロナの影響で社業は大いに傾き、運行収入目当てに無理したと取られても仕方ないようです。

つまりすでに逆さに振っても補償するだけの原資は出無かろうと思います。そういう人間に限って、あわてて個人資産を処分したり親族名義に移し替えして、自分は自己破産するといった卑怯な輩も多いのです。(これはあくまで憶測ですが)

どこまでいっても不愉快胸糞悪い人物です。ホテルニュージャパン火災 を起こした横井秀樹を思い出しました。彼はわずか3年の懲役刑でした。
こんな奴の為に命を奪われた、何の咎もない乗船客たちが気の毒で仕方ないのです。冷たい凍り付くような海に何を思いながら消えていったか、それを考えるだけでいたたまれない気持ちになります。
 沈みゆく船から携帯電話で、奥さんに「これまでありがとう」という連絡をしたお年寄りも居たそうです。せめて、早く不明者と船が早く見つかって、多くの人命を奪った責任に見合った罰をこの人物に与える、というエンディングにならなければ、被災者も遺族も浮かばれません。

コメント
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