植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

今回のお宝鑑定は「12個の古印」

2022年03月31日 | 篆刻
 楽しみにしていたヤフオク落札の『印材 まとめて』が到着しました。古玩・中国の著名な篆刻家の作、あるいは一点物で田黄石などいわれるような銘石はありません。文房具屋さんで売っている実用品の印の木箱に収められた12個、刻印済みの印で、23,500円の落札額でした。

 印朱で汚れた古ぼけた中古品の印など、普通の人にはなんの価値もなく、それに1本あたり2千円を支払うなど「気が知れない」と思うでしょう。しかし、篆刻を残りの人生のライフワークとして取り組んでいるワタシにとっては、世に出て数十年あるいは100年以上経過したような印材について、その質や種類を知り、印面の彫・側款を読み取り、由来などを探るというようなことが非常に役に立つのです。書物には感じられない生きた教材・手本でもあります。

 一点数万円以上するものならば、落札価格に見合った価値があるでしょうが、だったら正規品をネットや美術商から求めれば済みます。まして勉強代としては高く、贋作をつかまされるリスクもあるのでおいそれと手が出ません。

 それに比べて、まとめて出品されるものは、それなりの目利きの出品者がひとからげで出してよかろう、と判断されたケースが多いので、個々の品は「安物」である確率も高いのです。しかし、そんながらくたまがいの中にこそ値段以上のとびっきりの価値の品物がある、これが印材の奥深いところであり、ヤフオクの密かな魅力でもあります。

 ヤフオク出品の中で今回見つけた印材12点は、そうしたワタシのような金持ちでない、印材の好事家にとって、もってこいのような品物に見えました。それは①全てが印面に彫があり非常にレベルの高い方の作に見える ②印材が古材で自然石を生かしたものが多い ③鶏血石が含まれている ④会津八一先生の雅号「秋艸」の作款が刻まれるものがある、といった魅力的な品群だったからです。ワタシの見立ては、自分の作品用として、自作あるいは篆刻家に依頼した印ではなく 、それなりの審美眼と専門知識を備えた蒐集家さんのコレクションではなかろうかということです。出品者さんは、質のいい古美術商(渋好みの時代物専門)でもありました。

 そこで、原則1万円以内ルールを破って、ワタシのヤフオク評価の50倍の評価点をもつオークションの猛者相手を向こうに回して、気合で落札に至ったのであります。

 さてその品物がこれであります。一個ずつ厳重に緩衝材で巻かれておりました。これを丁寧に取り除くときのドキドキ感・高揚感はお金には代えられません。

前の所有者さんが大事にしていたのは、上ぶたに厚く張られた和紙、そして印箱の底部には印の高さに合わせて書道紙で底上げしていたことに表れております。オークションにあった写真より、実物の方が更に魅力的で美しい印でありました。

 早速、その印の彫を見るために押印してみました。

これが、期待を上回るなんとも素晴らしいものでした。拙い篆刻の知識や自分の腕前からみて、とうてい足元にも及ばない名刻であると思います。空間を巧みに生かした「章法」とゆるぎない「刀法」が見事であります。左上は「天然景物足清娯」、 一番右上は姓名印「源嘉重印」でそれ以外は、「竹」か上下逆の「艸」、その下は「紙短情長」など、遊印・関防印の類のようです。

 これからじっくりと彫られた文字を解読するのが楽しみです。更に、最も「鑑定」のキモとなる石の種類の特定であります。もし一流の書人の手になる銘品であれば、その印材も然り、今回の印材12点はどれも違う種類の印材に見え、これがどこの何石なのかが分かれば、自ずと、どれほどのお宝なのかも知れようというものです。

 個々に石を調べましょう。続きはまた後日。乞うご期待(笑)
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