植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

 篆刻印を集める 「ヤフオク神の巻」

2021年02月09日 | 篆刻
 篆刻印は、通常切り出したままの正四角の柱になっています。市販されるもののほぼ100%が中国産で、かなりいい加減に加工されるのでいびつになっていたりします、ワタシも最初は、この印材を2,3百円で買って篆刻の練習をいたました。ほとんどが安価な青田石で、半透明の緑灰色で彫りやすいものでもあります。これに、赤茶色や黒や白のバリエーションで、混色の「寿山石」というのが定番で、印材として普通に売られているのはこれらのいずれかです。
 これに、持ち手の部分が飾り彫りされているのを「紐」と呼んで、安物では数百円で売られます。四角いままで少し模様や穴が開いたりいるものから、獅子を象ったものが殆どです。おそらく中国の職人というよりパートのおばさんみたいな人が、機械で同じものを日に何百と彫ってるのではなかろうかと思います。

 そんな安物汎用品でも、それで篆刻を学び、実際に使う姓名印などには何の問題もありません。しかし、ワタシはいつの間にか、彫る目的や楽しみを忘れてしまい、石自体が持つアヤシイ魅力の虜になっていったのです。
 
 篆刻印、姓名印などというものは、作品を作らなければ使うことがありません。半紙や半切に練習で書いてはポイ、の書道ならばハンコを押して署名する「落款」を入れることもないのです。ワタシも、今年に入るまで、姓名印を作品に押したのは4年間でたしか2回だけでした。あとは遊びで押印するくらいで、用が無かったんです。

 それでも、篆刻印のことや印材をいろいろ知るうちに、非常に貴重な石とか見事な紐を施したものがあり、高値で取引されたり多くの収集家も存在することに気づきました。
 また、書道用品などをヤフオクで蒐集するうち、自然と先達の書家さんなどが使用した(彫った)印も一緒に集まってくるのです。また、自分の姓名印も、貴重で高価な印材を使って作りたいという願望もありました

 というわけで、ヤフオクで片っ端から良さそうな安い印を落札するうち、いつのまにやら数百個の印材に増えてしまいました。数からいえば一生かかっても彫り切れない量です。しかも、半分近くはすでに印面に彫りがあるのです。著名な篆刻家さんによって刻まれたもの、有名な書道家さんの印、高級印材などは非常に高くつくので、まとめて数十個というようなものに限って入札した結果であります。

 例えばこれ

 この50個ほどの篆刻印(3割が未使用)に新品の印泥がついて、5,750円で落札しました。印泥だけで最低2、3千円するものです。無茶苦茶安いのです。雅号が「青園」という方が自分で使っていたらしく、自作のものも含まれているようでした。これも、文字通り玉石混淆で、100円もしない割りばしのような太さの角印材もありました。一方、紐の細工が素晴らしいものも多数入っているので、おそらく印材だけでも数万円、プロに彫って貰ったものを含めると数十万円は元がかかっているはずなのです。
 ちなみに手前の筆は別に落札した新品25本ほどで2200円(笑)

 で、こちらはワタシの僅かなコレクションの中で「鶏血石」と言われる超高級印材。
真ん中と右のは「鶏血石」という触れ込みで4個2万円くらいのヤフオク落札分のうちの2つです。正直、本物を見たことが無いので、どれが真正なのかわからないのです(笑)。それで、オークションよりは信憑性が高いだろうと勉強料として最近ネットで、正規に買ったものが左、こんなちっちゃいので一個14千円!。上の写真のもの全部買ってさらに5千円のおつりがきます。

 一方、紐などの細工が素晴らしいものを一点物で落札したのが下の篆刻印です。
 これらはほんの一部ですが、一個2,3千円で入手しましたが、いずれも彫った篆刻家の名前等が側面に刻まれ(側款)、印面の彫りもさすがというような印影でありました。こういうものは、①高名な書道家が、②その技量や地位・格式に見合った篆刻印を③名高い彫師に依頼し、④精緻綿密な紐が施された高級な印材を使って、⑤非常に高額な代金を支払って作らせた、というパターンに相違ない、と信じる者であります。①に関しては、書道好きなお金持ち、政治家・なにかの家元などでも意味は同じですが。

 高級印材に似せた偽物は、普通の印材に色を塗ったり、多くが粉を固めたり化学素材でできた練ものだったりします。そういうものは、ぱっと見、ピカピカして美しいのですが、手の込んだ手彫りの紐はありません。印面も未使用です。偽物石を売る方でも、石の粉や溶剤を固めたものに、専門家がそれと見間違うような丁寧な細工まではしません。謳い文句に騙されず、安くお楽しみで素敵な篆刻印のコレクションを増やすには、「未使用」印材を避けるのが賢明であります。

 つまり、こういうことです。
篆刻印は、沢山彫る(予定)ので安いものをヤフオクでまとめて落札する(実益)。それは紐付きで実際に彫られているものが多い方がいい。そんななかで、たまに高級印材や篆刻家の作による印が紛れ込んでいたら「ラッキー当たり」。(幸運

 紐が珍しいデザインで精密なもの、ネットなどで市販されていないような古く、あまりピカピカしていないもの、加えて側款ありのものは良品・銘品が多い。さらに石の模様が美しいものが使われているのを見つけたら、田黄石や鶏血石といわれるものは避け、たとえ一点ものでもそっと安値で落札する、ということなんです。(趣味
 経験値を上げ、だんだんいいものを見分ける目利きとなり、運と感を楽しみ、ささやかなコレクションも増える、安あがりな道楽と言えましょうね。
コメント
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