生きさせろ! 難民化する若者たち
非正規雇用の若年層にスポットを当てて、『働くこと』と『生きること』が今の世の中でいかに歪んでいるかを、実際の取材をもとに丁寧に書いている。
フリーター、派遣社員や請負社員、アルバイトやパートとして企業に低賃金で使い捨てにされる商品としての労働力、その姿は悲劇的で悲惨である。不安定な雇用形態のために労災保険や雇用保険、社会保険にも加入されず(雇用主には加入させる義務があるというのに!)、風邪をひいて仕事を休めば翌日から収入が途絶えてホームレスやネットカフェ難民になるなんて、まがりなりにも世界第3位のGDPを誇る豊かな日本にあっていいのか?
『格差社会』という言葉が数年前から言われているが、『貧困問題』に焦点をあてるべきではないか?先日厚生労働省が初めて発表した日本の相対的貧困率は15.7%、日本で1800万人以上が貧困にあえいでいる。生活保護を申請しに行っても受け付けてもらえず餓死(今の日本で餓死なんて!)したり、役所の前で自殺に追い込まれる日本っておかしくないか?
一方、正社員になったらなったで、名ばかり管理職や長時間労働のあげく、自殺や過労死、病気に追い込まれる人が増え続けて自殺の労災認定も増えてきている。今の若者(といっても高年齢層はもうすぐ40歳台になる)は正社員で働こうと、非正規雇用で働こうと、企業や経営者のいいように使われているのだ。
この悲惨な状況は、1995年に当時の日経連(今の経団連だ)が発表した「新時代の『日本的経営』」で、働くひとを次の3種類に分けたことから、企業が意図的に作り出したものだとわかる。
1.長期蓄積能力活用型
2.高度専門能力活用型
3.雇用柔軟型
いわゆる非正規雇用の階層は、この雇用柔軟型という形で、すでに経営者の中で形作られていたのだ。そして、いわゆるフリーターが正社員になるケースは年齢があがるにつれて絶望的に難しくなる。だからといって正社員になったとしても、時給700円程度の過酷な長時間労働が待っているだけなのだが。いったい経営者は雇用柔軟型の人たちの将来をどのように考えていたのだろうか。まさしく『使い捨て』の労働力としてしか考えていなくて、そんな人たちの将来なんて知ったことではない、というのが本音だろう。そのツケが、今の内需不振や少子化に回りまわってきているというのに。
この本では、キヤノンの派遣社員やY電機の正社員、ニコンの請負社員、Y社の正社員、またフリーターや子連れ派遣、日雇い派遣で働いた人たちの具体例を出しながら、この経営側の考えに対して反撃宣言をしている。そしてフリーター労組やフリーター支援のNPO、貧乏人大反乱集団など実際に反撃をはじめている人たちを紹介している。
今の社会の生きづらさは、けっして私たち個人の責任ではない。企業と政府が意図的に作り出しているのだ。社会構造の問題であって、自己責任の問題ではない。
自分は正社員だが、安穏とはしてられない。明日は我が身、そして子どもたちのために、まともな社会、生きていける社会を再び作るために、憲法で保障された生存権を当たり前にするために反撃を開始しよう。自分は雨宮処凛に連帯する。
ちなみに自分の会社、一昨年から昨年にかけて業績悪化で社員のボーナスは下がっているが、役員の報酬総額はなぜか上がっている。今年のボーナスも社員はもちろん下がっているのだが、役員報酬がどうなるか見ものだ。
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