是枝監督がまたひとつ素晴らしい映画を届けてくれました。
航一(前田航基)と龍之介(前田旺志郎)は、両親の離婚で大阪から九州にに引っ越してきて、航一は母(大塚寧々)の実家鹿児島に、龍之介は父(オダギリジョー)の地元福岡で、離れ離れで暮らしている。離れて暮らして6ヶ月、航一は桜島の火山灰に慣れることができないまま、また家族4人で暮らせることを願っていた。
一方、龍之介は兄弟の秘密の約束で、父が他の女の人とくっつかないように見張るために父について行ったのだが、庭で野菜を育てたり、学校でも仲良しの友達ができたり、父のバンド仲間と花火をしたりと、案外楽しい毎日を送っていた。
九州新幹線が全線開通して福岡と新鹿児島がつながる日、それぞれの駅から出た一番列車が最初にすれ違う瞬間を目にすると奇跡が起きて願いが叶う、という噂を耳にした航一は、龍之介と連絡をとり、鹿児島の友達と一緒に奇跡を起こすために、その瞬間を見にいく。。。
何といっても子供たちが走る走る。学校へいくのもスイミングスクールからの帰り道も、そして新幹線を見る場所を探すときにも。自分が子供の頃はあんなに走っていたかなっていうくらい、いつも走っているイメージが残っています。
そして音楽がまた絶妙で、そのシーンを盛り上げるようなテンポの良いものだったり、それぞれのシーンに音楽があるとこんなに空間のイメージが膨らむものかと感動ものでした。
子供たちは、今どきの子供らしく子供っぽい無邪気なところがありながらも、変に大人びたところもあり、それがまたリアルな感じで笑いを誘います。軽羹のほんのり加減や龍之介とたこ焼き屋さんのやりとり、父親から新幹線を見にいくお金を出させるくだりは、クスリと笑えます。
子供たちだけでなく、周囲の大人たちもどこかしら可愛らしい仕草がうまいなあ。母親が酔っ払って龍之介に電話するところや、父親が航一と大切なものについて電話で話すところ、阿部寛や中村ゆりが演じる先生が航一たちのズル休みを黙認するさま、突然やってきた7人もの子供たちを家に泊めて夕食に出前を頼む老夫婦、鹿児島で新幹線開通にあわせて軽羹をまた作ってみるおじいちゃん(橋爪功)、フラダンスが趣味のおばあちゃん(樹木希林)も、いい味を出しています。
子供たちは大冒険を経て、女優になるという自分の夢をはっきりさせた女の子(内田伽羅)もいれば、桜島の火山灰に少し慣れてきた航一がいたり、龍之介の父のバンドのラジオ出演が決まるという軌跡が本当に起きたり、それぞれ何か大事なものを得て、子供時代の大切な一頁になったのではないでしょうか。彼らが大きくなって、中学生や高校生になり、大人になってもこのときの体験は色褪せることはないのだろうなあ、と思います。
そして、航一一家が4人で一緒に暮らすことはもうないかもしれないけれど、航一と龍之介はきっと二人で会ったり、お互いの親の家に行ったりするようになるんだろうなと思います。樹木希林が孫の内田伽羅との共演が話題になってたけれど、同じ画面に入ることはさすがになかったですね。でも内田伽羅ちゃん、綺麗です。
子供たちの活き活きとした瞬間を切り取って、巣晴らしい物語を作り上げてくれた是枝監督に感謝です。
公式サイトはこちら。
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