まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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台北カフェ・ストーリー 第36個故事

2012-05-05 23:20:54 | 台湾映画(あ~な行)

綺麗な画面を見ているだけで、幸せな気分になってきます。

デザイン会社を辞めて妹チャンアル(リン・チェンシー林辰唏)と2人でカフェを開くドゥアル(グイ・ルンメイ桂綸[金美])。店内は、開店祝いに来た友人たちが持ってきた品物(多くはガラクタ)であふれ、客足もいまいち伸びない。しかしチャンアルの発案で店内の品物の物々交換を始めたところ、物珍しさからか噂により少しずつ客足も伸びてきた。

客で来たCAが持っていた台湾未発売のパグストラップと引き換えに、チャンアルは架空の身の上話を語り出す。ある客(チャン・ハン張翰)は、世界各都市で買った35個の石鹸を、ラブレターの代筆と引き換えに交換に出す。カフェを訪れるたびに、ひとつ石鹸の都市にまつわる物語を姉妹に語る男性客。そして語られた物語からイメージを膨らませてイラストを描くドゥアル。このイラストが穏やかな色合いで映画の情景にぴったりあっていました。

やがて男性客は「やっぱり石鹸は僕の思い出だから、交換しない」と言って、ドゥアルの描いた絵と一緒に持ち帰ってしまいます。おいおいって感じですが、物語と絵の交換だって。一方、35個の都市の物語を聞いたドゥアルは、現地を実際に訪れてみたいと思い、カフェを妹たちに託して世界旅行に旅立ちます。

主役の2人、桂綸[金美]と林辰唏の魅力が全編にわたって全開です。ケーキを作ったりカフェオレを淹れたり、とカフェを切り盛りするドゥアル役の桂綸[金美]、閉店後に売り上げを計算したり、空き時間に絵を描いたりする姿、奔放な妹チャンアルを持て余し気味な態度もさまになっていて、桂綸[金美]の透明感と相まって惚れ惚れするような姿です。

チャンアルは少し不思議ちゃん系?の入った女の子、物々交換が成立するかどうかは彼女次第。自転車でカフェのチラシを配ったり、空想話をCAに本当っぽく喋ったりするところでは、元気さと不思議さを合わせた林辰唏の魅力がにじみ出てました。

物々交換をカフェでやろうと言い出したのはチャンアルだけど、実は交通事故の修理代の代わりにトラック満載のカラーの花をもらったり、開店祝いの品々のお返しにそのカラーの花をあげたりと、開店前から物々交換は始まってます。ドゥアルの世界旅行のチケットも物々交換だし、カウチサーフィンという物々交換と似たような新しい旅行の形も取り入れてます。

35個の石鹸にまつわる物語は、サボテンの話とか、そのいくつかが断片的に語られただけだけど、ドゥアルの描く絵の不思議な印象と重なって、それだけでもひとつの独立した物語になりそうなくらい魅力的なものでした。ドゥアルが影響を受けてすべての都市を巡ってみよう、と思い立ったのも分かる気がします。

3回繰り返される、街頭インタビューと、姉妹と母親の並んだシーンも、ストーリーのいいアクセントになってました。インタビューでは台北の街行く人たちに同じ質問をして、いろいろな答えを引き出します。ドキュメンタリーっぽいこの部分は、幻想的な本編とは少し色合いが異なっていて、シヤオ・ヤーチュアン蕭雅全監督は「多様な価値観を表現したい」という意図でこのシーンを挿入したそうだけど、ちょっと唐突で繋がりが分かりづらかったかな。

一方、姉妹と母親の3人が並んで足つぼマッサージを受けたり、美容院で髪を洗ったり、ご飯を食べているシーンでは、毎度々々母親の小言に店員が反応するというお決まりの展開が笑いを誘います。

ホウ・シャオシェン侯孝賢が製作総指揮で入っているからか、柔らかな光に彩られるパステルカラーの色合いや、透明感ある光の使い方に、侯孝賢らしい瑞々しい雰囲気を感じました。スクリーンではオーバーラップやフェードアウトといった演出やカット割りも凝っていて、柔らかさが重なるような空気感をうまく出しています。音楽はピアノ曲が全編に流れて、上品で軽やかな情景づくりに一役かってました。

DVDが出たら、友人のカフェのオーナーにプレゼントしたい作品です。

公式サイトはこちら

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