『442日系部隊』のすずきじゅんいち監督が、太平洋戦争時の日系アメリカ人を追ったドキュメンタリー3部作の3作目。今回は、対日作戦で重要な役割を果たした極秘部隊MIS(Militery Inteligence Service)を描き出します。
太平洋戦争当時にMISだった人たちへのインタビューと、当時のモノクロ映像、そして現代のロケで構成されていますが、白眉は何といっても退役軍人たちへのインタビューでしょう。「二世」と「帰米」の違いから始まり、特に日本語を流暢に操る「帰米」がMISに集められ、日本の軍事資料の翻訳にあたったり、前線で日本兵捕虜の尋問にあたったり、沖縄戦など民間人もいたところでは彼らへの投降を日本語で呼びかけたり。
そして戦後、占領軍の中でもMISは重要な役割を果たし、日本人と米軍との仲介役として日本の占領政策に欠かせない存在となりました。
日系人とはいえアメリカ国民であり、アメリカへの忠誠心は他の人種と変わらないものがありますが、やはり完全には信頼されていなかったらしく、前線では常に白人兵とコンビを組んで行動しています。アメリカ軍が日本兵と間違わないように、というのがその理由ですが、監視の意味も当然あったことでしょう。MISの退役軍人からは「大和魂」という言葉が出てきて、「442部隊」と同じように、恥ずかしい姿を見せるまい、白人兵や黒人兵に後れを取るまい、という気持ちが強かったのだろうと思います。
中には、兄弟や親戚で日本軍と米軍に分かれていたり、学校で肩を並べて学んだ同級生が捕虜になっていたりと、戦争の理不尽さを強く感じさせる状況も。また、彼らが証言している占領後の日本人の姿、バターとジャムをたっぷり塗ったパンをもらっても、その場で食べずに家に帰って同じくお腹を空かせている妹と一緒に食べる、という男の子や、GHQでの取調べの前に、一晩家族に会うために帰宅させたら、お礼に白米のおにぎりをもらったなど、思わず涙が浮かんでくるような振る舞いがあり、東日本大震災のときに世界中から称賛された精神は昔から日本人の美徳だったのだなあ、と日本人であることを誇りに思います。
一方で、正々堂々と戦うといえば聞こえはいいですが、敵性言語だといって英語の勉強を禁止したり、捕虜になった時の対応方法を教育していなくて軍事機密をぺらぺら喋ったり(生きて虜囚の辱めを受けることなかれ、で捕虜になったらという可能性をあえて無視していたのだろう)、前線の兵士が普通に作戦行動を逐一日記に書いていて、全部米軍に解読されたり(その日記のおかげで私たちは当時の日本軍のことを知ることができるのですが)、指導層と言われるレベルの問題は、現代にそのまま引きずってしまっているなあ、という感じです。
明治維新とその後、日露戦争くらいまでをもっと深く研究しないと、日本の復活は難しいんだろうなあ。
公式サイトはこちら。
12/8 銀座シネパトス
霧社事件を描いた台湾映画大作『セデック・バレ』 GW公開!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます