まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

愛という名の地獄

2008-08-03 | フランス、ベルギー映画
 「美しき運命の傷痕」
 今は亡き名匠クシシュトフ・キエシロフスキ監督の遺稿を、「ノー・マンズ・ランド」でアカデミー外国語映画賞を受賞したダニス・タノヴィッチ監督が映画化した、愛に傷つき苦悩する三姉妹の物語。
 ドラマチックな音楽をバックにした、万華鏡のようなシーンがやがて、他の卵を巣から落とし続ける生まれたばかりのカッコウ?の雛を映し出すオープニングが、とても印象的です。他者を排除して自分が生存しようとする、恐ろしくもたくましい姿が、これから始まる物語を重なるのかな、と期待させられますが...
 原題が“地獄”であるこの映画、思ってようなドロドロした内容でもムードでもなかったです。陰鬱で重苦しい感じ。全体的に赤味がかった映像が独特です。
 ラスト近くまで顔を合わせない三姉妹。それぞれ別個で進める話が交錯する構成になってます。三姉妹をもっと面白く絡ませてほしかったかも。
 三姉妹を悩ませるものは、離婚や不倫、孤独といった割とありがちなもの。彼女たちの言動ってかなり異様で、ちょっと精神的にイタんでるのでは?と思わせる不気味さがあります。その根本的的理由が、現実的に抱えている問題のせいではなく、過去に起きた悲劇によるトラウマにある、と判明すると、それはいったい?という謎めいた秘密によって、話が面白くなってきます。その秘められた真実に、愛は結局のところ、人間を地獄にも堕とし得るんだなあ、と怖くなりました。
 もしも故キエシロフスキ監督だったら、もっと神秘的で透明感ある運命の描きかたをしただろうなあ。それと、女優をもっと美しく撮ってたはず。「ふたりのベロニカ」と「トリコロール赤の愛」のイレーヌ・ジャコブは、ほんと聖なる美しさだったよなあ。三姉妹を演じる(こんなに似てない姉妹もなかなかいない)エマニュエル・ベアール、カリン・ヴィアール マリー・ジランは、三人とも実力ある個性的な女優なんだけど、いまいち魅力的に見えなかったのが残念。三人とも、妙に生々しい女なんですよねえ。リアルな感じって、“運命”というテーマには何だかそぐわない。この映画だと、運命というより因果って感じ。
 脇役陣が、なかなか豪華です。
 三姉妹の母役は、老けメイクのキャロル・ブーケ。ざんばら白髪、鬼のような無表情で、怖い...ジャン・ロシュフォール、ジャック・ペラン、ジャック・ガンブラン、ギョーム・カネ、と男優がシブい面々。ギョーム・カネが告白する過去の真実が、びっくりです。
 
 

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