まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

き〇がい農場

2020-11-26 | フランス、ベルギー映画
 「狼獣たちの熱い日」
 巨額の現金を強奪し逃亡したジミーは、田舎の農場に身を潜める。しかし、農場を営む一家はみな狂っており、ジミーは異常な世界を目の当たりにするのだった…
 世間で評判のよい、老若男女誰が見ても大丈夫な、無難で無害で破綻のないポリコレ映画よりも、駄作のレッテルを貼られながらも危険で有毒でハチャメチャなトンデモ映画ほうが好きです。B級犯罪映画のレジェンドスター、リー・マーヴィン主演のこの作品、類まれなる珍&怪作として一部マニアの間ではカルト的な人気らしく、私も以前から気になっていたのですが、ようやく観ることができました。期待通りの笑撃でした。こんな映画、今のポリコレ時代では絶対に製作不可能ですよ。話も展開も登場人物も、支離滅裂でアナーキーで意味不明で狂ってて笑えます。冒頭の現金強奪シーンから、もうハチャメチャ。市街戦みたいなチープかつ問答無用なドンパチ、幼い子どもまで無残に撃ち殺されます。舞台が農場に移ってからは、もうシュールなカオス状態。とにかく農場一家がどいつもこいつもヤバい異常者。

 いきなり出てくるのが、下半身をいじりながらプッシープッシーとわめいてる色き〇がいおばさん。性奴隷にしてる黒人の男にファックを狂おしくねだってます。色情狂ばばあ役は、フランスの秀作映画にも出演してたベルナデット・ラフォン。よーやるわ!と呆れてしまうほどの奇演でした。ジミーにも欲情して逆レイプしようとし、怒ったジミーに首絞められて死ぬ顔は、まさに妖怪な醜さ。家長であるおっさんは粗暴な変態で、コレクションしてる女もののパンティをクンクンかぐのが日課で、案山子に化けてヌードギャルをのぞき見したり(後に襲いかかるのですが、抵抗されたので惨殺しちゃう!)、若い妻を台所でバックからファック。妻は無表情で早く終われよ顔。家政婦は痴呆症?みたいなおばさんで、意味不明なことをブツブツ言ってます。いきなり発狂して首吊って死んだりします。

 家長夫婦の10歳ぐらいの息子が、当時の表現の自由に呆れるほど見た目もキャラもヤバすぎ。ギャングに憧れていて、タバコ吸うわ酒飲むわ危険運転するわ、娼館で豪遊するわ。こんな役、こんな演技、子役にやらせるなんてありえない!このトンデモガキンチョを演じてるのは、あの傑作「ブリキの太鼓」で主役のオスカル少年を怪演したダーヴィット・ベネント。まさに世界最恐の子役。オスカル少年もぶっ飛んでましたが、今回の息子も尋常じゃない異様さ。気持ち悪い!けどノリノリで楽しそうなところが笑えました。

 いちばん狂ってたのは、表面的にはクールで寡黙な若妻です。ジミーを匿う彼女ですが、それは恐ろしい魂胆があったから。夫を殺した後は、尾行する刑事を誘惑してファックした後に彼も殺したり、すごい暴走!すべて無表情でつまらなさそうにやってるのが怖い。演じてるのは、若き日のミュウミュウ。可愛い!けどニヒルでアンニュイ。場末のカフェのウェイトレスみたいな衣装も可愛かったです。農場で身を隠す男、匿う若い人妻、といえば「刑事ジョン・ブック 目撃者」を思い出しますが、あんな甘美で切ないロマンスには1ミリもなりません。
 
 ジミーも逃げようと思えばいくらでも逃げられたし、言いなりになる必要なんか全然なかったのに、何で?!と理解不可能な身の処し方。ただ繰り広げられる異常者一家の変態狂態におとなしくドン引きしてるだけなんですよ。レジェンドスター、リー・マーヴィンもすでに当時キャリア晩節、ヨタヨタしたお爺さんで、無様で無残な姿はまるで老人虐待な痛々しさ。は?!な彼の末路、映画の終わり方にも失笑。まともな筋なんかなく、潔いまでのコワレたイカレ映画。みんな狂い死に、屍累々な惨劇なのに、何かあっけらかんとした突き抜けた明るさが。シリアスな犯罪ドラマとしては大失敗、トンデモお笑い映画としては大成功。岡田あーみん先生の漫画が好きな人なら楽しめるかも。
コメント
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