まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

団地の美少年

2016-07-08 | フランス、ベルギー映画
 フランス映画祭③
 「アスファルト」
 郊外にある寂れた団地。車いす生活をするハメになった独居中年男は、真夜中の病院で夜勤の看護師と知り合う。鍵っ子の高校生は、隣室に越してきた落ち目の女優に興味を抱く。アルジェリア系の老婦人の部屋には、不時着したNASAの宇宙飛行士が現れて…
 面白かった!クスっと笑えて、かつほのぼのしてて、でもかなりヘン、という珍妙ハートウォーミング群像劇でした。
 パリ郊外?のボロ団地を舞台に、住人たちが遭遇したり引き起こしたりする珍事が、淡々と静かに、それでいてまさかのファンタジー?!なシーンや展開に驚かされたりと、ユーモラスに描かれています。あの独特の空気感が好き。住人たちのやりとり、会話も、ユル~く皮肉が効いてたり、ベタベタもドタバタもしておらずドライな感じは、さすがフランス。ああいう笑い、好きなんですよね~。日本のクドカン先生とか三谷コーキ先生は、面白いでしょ!笑えるでしょ!才能あふれてるでしょ!みたいな押し付けがましさが強くて、ついていけなかったり鼻についたりするけど、この映画はそんなヘンに才気走った、笑える奴だけ笑えばいいとう上から目線的な構えもなくて好感を抱けました、

 フランスって、ボケだけでツッコミがいないのが基本なのでしょうか?みんなボケてて笑えます。3つのエピソード(独居おじさんと夜勤ナース、高校生の男の子と落ちぶれた女優、アラブ系の老婦人とNASAの宇宙飛行士)が、それぞれ独立して展開するという構成。同じ団地で暮らしていることと、たまに聞こえてくる謎の不気味音以外は、3つは何の共通点もなく繋がることもありません。3つのお話の団地住民はみんな惨めで孤独な底辺生活、いろいろ問題を抱え、人生に行き詰まり疲れてるのですが、深刻な現実にもどこかひょうひょうと、なるようになる、みたいな軽やかさがあって、でもそこには希望はある!とか諦めない!とかいったポジティヴさはなく、どうでもいいわ…みたいな投げやりっぽさも、何かフランス的。苦境にあるのにジタバタせず、ヌルい絶望や孤独に甘んじている、みたいな生き方は、ちょっと私にもカブるところがあって苦笑いも誘われました。

 3つのお話、登場人物たちはみんな、大真面目に投げやりでトボけてて笑えます。ポツっとナニゲなく言う台詞には、結構シビアでもある皮肉や毒もあったりして、私にはツボでした。ぜんぜん接点がない、性別も年齢も国籍も言葉も違う人たちが、ユル~く優しく心を通い合わせる姿に、ほっこりさせられます。社会も世界もどんどん殺伐とバラバラになっていってる今日この頃ですが、それはやはり誰に対しても何に対しても優しさや寛容さが欠け、無関心すぎるからかもしれないな~と、この映画を観てあらためて思いました。

 出演者の好演も忘れがたいです。団地に越してくる落ちぶれた女優役、イザベル・ユペールの冷ややかでトボけた演技、今回も冴えてました。クールだけど、かなりダメ女なユペりん。隣室の男子高校生との友情が、ほのぼのしてていい感じでした。男の子の説教やアドバイスに、ツンツンしつつ従うユペりんが笑えた。男子高生が兄、女優が妹、みたいな逆転関係も微笑ましかった。
 二人が仲良く古い映画のビデオを観るシーンが好き。若かりし頃のユペりんの映像が使われていましたが、あれは「La Dentellière」の彼女ですよね?

 その男子高校生役、ジュール・ベンシェトリが可愛いイケメン!初登場シーンは、女の子かと思った。でもクールな男っぽい雰囲気とキャラで、カッコいい。ダメ熟女の女優にぶっきらぼうだけど親身に、無邪気にフレンドリーに接する姿に萌え~。あんなカッコカワいい高校生に、私も親切にされたい~。女優に対して、まったく下心がないところも笑えた。女として、あれはちょっとガッカリ&屈辱かも(笑)。ブリーフ一丁姿もキュート。部屋ではいつも独りの鍵っ子?な彼が泥酔して寝てる女優に向ける、優しく寂しそうな瞳が印象的でした。ジュールくん、この映画のサミュエル・ベンシュトリ監督の息子で、母親は故マリー・トランティニャン…てことは、ジャン・ルイ・トランティニャンの孫!アップになったら、やっぱ祖父ちゃんに似てるかなと思った。いい作品にこれからも出て、人気俳優になってほしいものですね。

 夜勤看護婦役のヴァレリア・ブルーニ・テデスキも好きな女優。彼女も相当ボケた演技で笑えます。ほとんどニューハーフな見た目の彼女ですが、少女みたいなか細い声が可愛い。そして、ファッションセンスがいい女優、といえばまず彼女が頭に浮かぶ私。今回はほとんどナース姿でしたが、夜勤明けで着てたワンピースが、やっぱ素敵。
 宇宙飛行士役は、アメリカ人のマイケル・ピット。オデッセイのパロディ?!地味に素朴になったトム・ハーディ、みたいな顔に見えました。彼はフランス語が、老婦人は英語が全然解からない、けど、だんだん何となく意思疎通できるようになるのが微笑ましかった。老婦人がめっちゃ善い人で、そしてやっぱボケまくってて可愛いです。彼女が作るクスクスが美味しそうでした。ラストに明かされる、謎の怪音の正体にもニヤリとさせられます。

 ユペりんの最新作は、ミヒャエル・ハネケ監督の“Happy End”で、共演は↑のジュールくんのお祖父ちゃんであるジャン・ルイ・トランティニャン、「愛、アムール」チーム再結成が楽しみですね
コメント (4)
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