イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「生物模倣―自然界に学ぶイノベーションの現場から」読了

2019年07月08日 | 2019読書
アミーナ・カーン/著 松浦 俊輔/訳 「生物模倣―自然界に学ぶイノベーションの現場から」読了

バイオミミクリー」「バイオインスピレーション」(生体模倣)という考えは、生物のからだの構造や行動を人間の生活に取り入れようという工学のことをいう。

思い浮かぶのは、液晶がイカの体表の色の変化の模倣。王将の餃子のたれのパックのビニールがまっすぐ手で切れるのもイカの体の構造の模倣。(そういう意味ではイカはすごい。この本の最初の章でも、コウイカの体表の変化速度と周りの景色に同化するレベルの高さから、それを参考にして高度な迷彩服の開発をしているらしいということが書かれている。)
新幹線の先頭車両はカワセミの嘴だったりあったりする。
しかし、この本はその先、分子レベルや社会性といった部分の模倣の可能性について書かれている。

結論からいうと、この地球上に生物というものが現れてからその99パーセントは絶滅している。それを考えると、バイオミミクリーというものが完璧なものであるとは言えない。ということだそうだ。
しかし、抜群のエネルギー効率ということでは生体模倣というものは遠い将来に向かって大きな価値を生むことは間違いがない。
ここでいうエネルギーとは熱量としてのエネルギーだけではなく、社会生活を営むうえでの作業効率というものも含まれる。印象に残ったのはシロアリの社会構造、そして植物の光合成(人工の葉の開発)というものだ。

シロアリの行動は個別の知能によって統合さているものではなく、だからといって女王アリが何かの指令を出しているわけではない。しかし、全体としては社会としての機能を維持している。これは単純なシロアリの反射行動が重なることで知能を持っているかのごとくの振る舞いをする。イワシの群れがまるでひとつの生き物のように動くというのも同じである。それをアルゴリズム化することで効率よく働けるロボットを作ろうという研究があるそうだ。

人工の葉はまさにエネルギー問題の解決。最終的には無機物(半導体)を使って炭化水素を合成しようというらしいけれども、人工光合成というのは確か大阪市大で研究しているというニュースを見たことがあるけれども今のところまったく役には立たないそうだ。そういう意味では確かにこの本は“現場”を取材している。

そう考えるとこの本に載っているバイオミミクリーはまだまだ端緒に差しかかったところなのだろうけれども、はたしてそれが実現した社会とはどんな世界なのだろうか。人間は蟻塚のような巨大なビルの中で何者かに操られるようにして生きているのだろうか。それが人間らしく生きていると言えるのだろうか。
人間は自らの寿命を伸ばすためにエネルギーを浪費しているというのは、「生物学的文明論」に書かれていたことだけれども、それでは効率だけを追い求める生き方は人間らしい生き方とは言えないということになる。もっというと、人間自体も自然界の中で生きている。それが生きのびるための行動の結果寿命を伸ばし、他から見ると効率的ではないエネルギーの使い方をしていると言われても、それは何と比べてなのかとなってくる。

だから僕は蟻塚のような巨大なビルの中であくせく働きたくはない。まあ、アリの巣のアリの2割は怠けているという研究もあるそうなのでその時は4割の方でいきたいと思うのだ。


そのバイオミミクリーは先に書いた通り、99パーセントの生物種が絶滅しているということからその進化は最適なものではなかった。この本には、進化には目的があるのではなく、今を生きるための「間に合わせ」があるだけだという。これはいい答えだと思う。先のことを思うから無駄なエネルギーを使っていると思ってしまう。今が間に合っていればそれでい。それ以上あくせくしない。そんな生き方ができれば一番いいように思う。
現実はそうとう難しいと思うのだが・・・。
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