イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「金剛の塔」読了

2019年07月22日 | 2019読書
木下昌輝 「金剛の塔」読了


四天王寺の五重の塔は現在まで七度建て替えられ、現在は八代目だそうだ。そして、その八代目を除いて建築を受け持ったのが金剛組である。
仕事場が近かったのでよく四天王寺を訪ねた。この写真は去年の大晦日のものだ。



今の仕事場からは遥か遠いのでもう、そういうこともないだろう。


ウイキペディアを見てみると、
『日本の建設会社である。578年創業で現存する世界最古の企業である。
創業から1955年の法人化を挟んで2005年まで金剛一族が経営してきたが、同年11月より髙松建設(現髙松コンストラクショングループ)の子会社(現在は孫会社)へ移行している。』
とある。
2008年に解散するまで、1430年の歴史を刻んだ日本最古の会社組織だそうだ。そしてその初代金剛重光は聖徳太子の要請で朝鮮半島からわたってきた渡来人である。

ちなみに、現在の五重の塔は鉄筋コンクリート製なので金剛組の出る幕はほとんどなかったそうだ。そういうことが全国的なトレンドになって、伝統的な宮大工の仕事が激減したということも会社が立ち行かなくなった要因になってしまったそうだ。そういう意味では、この会社も時代に即して変化をしきれなかったということか。しかし、これだけ長い歴史を持ってくると、こういう会社を振り落した時代の流れのほうが悪いのではないかと思えてくる。

この物語は、初代を含めた8回の建設のうちの6回の建設場面の物語を、聖徳太子の絵が描かれた木札と東京スカイツリーのストラップが時空を超えて案内をするというものだ。
七つの短編がつながったような構成になっていて、技術的な面を強調していなくて、人情劇のような流れなのでなんだか講談っぽい。

ただ、それぞれの時代の大工たちがこんな感じで建設に情熱を傾けていたのだろうなとは想像ができるのである。


五重の塔は、戦や落雷で燃え落ちたことはあるけれども、地震で倒れたことはない。その大きな理由には、心柱の存在があるという。この心柱、塔の本体とは接しないまま五層目まで伸びていっているそうだ。だったら必要なさそうなものだが、なぜだか必要だそうで、東京スカイツリーもよく似た構造を持っているそうだ。(これは五重の塔を真似たものではなく、質量付加機構という構造で心柱とはまた別の論理で成り立っているらしい。)しかし、現在でもこの柱が構造上、どんな役割を担っているのかということがはっきりわかっていないそうだ。その理由が、本物を壊して実験することができないからだというのがこれまたおもしろい。
そして躯体に対しては大きな屋根も特徴であるが、この屋根は上の層を支えている柱の重みを使って梃子の原理で支えているそうだ。いわば巨大なモビールのような構造になっていてそれが地震の揺れを逃しているらしい。そして、大きな屋根が必要なのは雨が多い日本で本体を腐らせないために大きな庇が必要ということであの荘厳なスタイルができあがった。

この二つの構造は、雨が少なくて地震がない大陸での建設には必要のないものだ。この本にも、空想ではあるのだろうけれども、初代がそれに悩む場面が出てくる。そしてこれらの構造は日本の地に渡来してから考え出したものということになっている。
科学技術が発達したこの時代でもその原理がよくわからないものを、1400年も前の人たちがどうやって考え出したのだろうか・・・。
そんなことを考えると、本当に聖徳太子が時空を超えて彼らにその技を教えたのではないかと考えられなくもないのである。
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