イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「岬」読了

2012年11月26日 | Weblog
中上健次 「岬」読了

中上健次は戦後生まれで始めて「岬」で芥川賞を取った作家だ。新宮市出身で大学へは行っていない。「苦役列車」の西村賢太もこんな履歴のひとだろうか。
北野武や都はるみとも交流があったらしく、この前事故で亡くなった若松孝二監督の最後の作品「千年の愉楽」はこの人の作品だ。

先日の勝浦1泊で展覧会を見たのでまだ読んでいない本を引っ張り出してきた。

4つの短編はすべて同じテーマで、主人公が自身の出自に悩みと恨みを抱きながら生きてゆく姿を描いている。あの、国道42号線の東側にこんな世界が広がっていたのだ。
恨みを持つ実の父親の姿にどんどん似てくる自分はやはり父親と同じ人間なのか、その血からは逃れられないのか、生きている環境がそうさせるのか・・・。
作家自身の出自がベースになっているだけに生々しい。
もっと読み込んでいくことが必要だ。


僕自身も自分のしゃべり方や声に父親とあまりにも似ているのに驚くことがある。
やっていることも同じで、結局魚釣りばっかりで、おまけにサラリーマンのクセに2艘も船を持っていた父親を何者?と思っていたら、僕自身も小さな船を持っていると面白いななどと思い始めて同じようなことをしようとしている。
こういうのも「血」というのだろうか。高度成長期に生きた父親は、働くことが第一が当たり前の世界だったから、釣りをすることが少々後ろめたいことだと思っているふしがあったようだが、そこだけは開き直ってしまった僕とは違うところだろうか。
僕の子供はまったく魚釣りが好きではなく育ってっしまったが、やはり僕の「血」が現れてくることはあるのだろうか。そしてそれをどう思うのだろうか。

ぼくはいまのところ、貧乏ながらではあるがこれはこれで楽しい人生だなどと思ってはいるのだが・・・。

確か、ノーマン・マクリーンだったか、「父親から学んだことで、最大のことは魚釣りだった。」と書いていたことをおぼえているが、今のところ、たしかにそうだと思う。


コメント
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