えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

何を捨てるか

2016-02-17 10:03:07 | 歌う

                 何を捨てるか

 もしクリントンがアメリカの大統領になったら、女たちの肩書き獲得志向がエスカレートするのではないか。いつからか女から名刺を頂くことが多くなってきた。大学非常勤講師、某誌編集委員、某美術館学芸員、コンサルタント、ディレクター、翻訳業、作詞家などなど、私はただの主婦なので肩書きがない。名刺もない。まことに肩身が狭い。

 ♦ つり革につかまり重きカバン持つわたしの腕はわたしの履歴 

 この私の1首を読んだ方から 「もしかしたら雑誌の編集を?」などと聞かれてとまどったことがある。書類や原稿などではなく、外出の帰りには食品を買う、腕は絶えず私に使われているのである。

 ♦ うしろから背中を押してくれないか午後の光の無数の腕よ

 あと2週間で3月、すでに春への序奏が始まっているが、私はまだ冬眠のままでいたい。

 ♦ 蹴りたいのはわたしの怠惰、なにもせず春のひかりを待ちわびている。

 ♦ 朝かげの漲るバスのなかに立ち夜の顔しているかもしれぬ

 寒暖の差が激しい春のはじめは日々の気分も変わりやすい。こんな時期こそ詠めばいいのに。メモ帳は空白が続く。原稿用紙はその白い窓をかたく閉ざしている。

 ♦ 目標に遠く離れた位置にいて何を捨てればいいのか風よ

                2月17日 松井多絵子


山田航の推敲法

2016-02-16 09:49:53 | 歌う

                  山田航の推敲法

 ある女性歌人の1首に「ご苦労さまです」と書かれたのを見たことがある。たしかに、その歌は難産で生まれた児のような感じもした。力作という評でなく、「ご苦労さま」は評者の皮肉だろうか。今日は角川短歌2月号特集 わたしの推敲法・山田航を少し読んでみる。

    ♦ 鉄道で自殺するにも改札を通る切符の代金は要る 

 「当たり前じゃないの」「これでも短歌なの」「居酒屋帰りの駅での飲み友との会話?」いや、そんなことはない。何度も読んでいると 「これはすごく気の利いた1首だ」と私はため息。しかし山田は「ボクだって詠むのに苦労してますよ」と次のように書いている。

 「私はシンプルな口語の歌ほど推敲に時間をかける。いかにも推敲してなさそうに見える歌は、推敲してなさそうに見せるための推敲を繰り返している。この歌は改札前で思い付き、ホームへ行く手順を実際に確認しながら作った。「飛び込みじさつをする人も切符代を払わなけりゃホームに行けない」という発想自体はすでに完成している。
   

 (原案)地獄への通行料だ電車へと飛び込む人の片道切符   

 (第二案) 鉄道で自殺するにも改札をくぐる切符の代金は要る

 「くぐる」は華美な表現に思えてしまい「改札を通る」という即物的な表現に変えた。この歌は徹底的にシステム化された現実世界の取材、文体も修辞も抑制したかったらしい。修辞の華やかさはほどほどにすることですね、山田航さま」

                       2月16日  松井多絵子

 

 

 

8原案。

 

 

 

 

 

 

 


ねこはすごい

2016-02-14 10:43:20 | 歌う

                  ねこはすごい 

 ▲ 猫は耳を尖らせ我の嘘を聞き夫はタバコのけむりを放つ   松井多絵子

 日曜の新聞は本の広告が派手だ。カタの凝らない本ばかり、が私の目につく。「また猫か」とおもうが ✿ 「ねこはすごい」 が気になる。著者は山根明弘(理学博士・動物学者)。
♦ 知られざる”ねこのふしぎ”に迫る!

① 時速50キロで走る。に私は驚く。都内を走る車の速度と同じではないか。まさか!

② 臭覚は人の10万倍   これもオドロキだ。猫は勝手気ままに歩き回り何故か飼い主の許へもどってくる。ネコ自身の臭覚が道案内になるのか。

③ 動く物体を「コマ送り」で見ることができる。 視力も抜群で、野良猫は生存できるのか。

④ ヒトの心の病を癒す。猫が癒しているのではなく人間が猫に感情移入しているのか。

⑤ 子育てするオス「イク二ヤン」  人間よりよほどましですね。

 猫がこれど話題になるのは、私たちのもっとも身近な動物だからであろう。短歌の作品の素材になりやすく、私もしばしば猫を詠んでいる。でも猫の歌は成功しにくい。いかにも思い込みの歌に思われがちだ。来月から 漱石の吾輩は猫である の連載が始まるらしい。100年前の作品でも猫は変化していないはずだ。私はこの小説を読んだ記憶はあるが、何時だったか思い出せない。この機会に猫の気持ちをじっくり伺いたいと思っている。        

          白猫の背よりその手を手袋に、ペットショップを去りゆく青年

                       2月14日  松井多絵子


深く、深く、深く反省

2016-02-13 12:15:37 | 歌う

                深く、深く、深く反省

 ♥ 青は愛、赤は愛憎そんなことあの日話した茶房を過ぎる   松井多絵子

 バレンタインデイの今日、チョコを彼に渡すのをためらっている女性がいるかもしれない。すでに贈ったことを後悔している女性もいるかもしれない。男性国会議員で初めて育休取得を宣言する一方で、妻の出産目前に不倫の自民党の宮崎謙介衆議院(35)が12日、疑惑を認めて議員辞職を表明した。この記事を読み私はひどく寒くなった。

 もしこれがバレなかったら、宮崎議員はカッコイイ男だろう。しかし不倫相手の女性は彼の良きパパぶりを、その妻の幸せな様子を知ったら女としてが我慢できないのではないか。私なら週刊誌に手記を書き謝礼を請求する。彼女はタレントらしいからスキャンダルで名を売り、芸能界で活躍することで彼に仕返しをするかも。彼は女の気持ちが分からない男だ。

 12日の会見でのお詫びの言葉も空々しい。「私自身の非情に未熟な人間としての欲が勝ってしまった。国会議員のはしくれとして、自ら主張してきたことのつじつまが合わない、深く深く深く反省し議辞職をする決意を固めた。なんともカッコイイが言葉だけのお詫びに思えるのは私だけだろうか。お詫びの言葉は便利な言葉が多いような気がする。

 宮崎は国会議員だったため話題になったが、こんな男はどっさりいるかもしれない。いわゆるエリートコースをたどってきた彼のようなカッコいい男と付き合い、シャネルのバッグを抱える気分にを味わう女たちにも問題がある。受験戦争を勝ち抜いて1流会社の社員になった男を勝利者のようにありがたがり彼らを傲慢にしてしまうのではないか。

  宮崎君  生涯かけて償うそうですが私はアナタの生涯を知る時間がありませんよ。

                         2月13日   松井多絵子

  、

 


石川啄木の磁力

2016-02-08 09:37:06 | 歌う

              → 石川啄木の磁力 ←

 ♥ 啄木がじっと見たのは左手か右手かあるいは冬の妻の手  松井多絵子

 冬になるとなぜか啄木が私に近づいてくる。寒さが極まる2月は啄木が私の傍らに、今日の朝日歌壇 {うたをよむ}は 三枝昂之の ✿ 「石川啄木の磁力」 このコラムの書き始めの段落を引用してみる。

 「今年は石川啄木生誕130年の節目にあたるから、今回はこの歌人について立ち止まってみたい。啄木は不思議な男だ。満26歳という短い人生だったのに今でも人々に愛され、国際啄木学会まである。昨年12月6日に早稲田の大隈講堂で開かれた緊急シンポジュウム「時代の危機と向き合う短歌」にも実は啄木の磁力が働いている。

 2か月前の緊急シンポジュウムは大隈講堂が満員の盛況。私もそのなかの1人だった。団体主催名は「強権に確執を醸す歌人の会」について、私は昨年12月7日、このブログで書いている。2か月前のブログだがお読みになっていただけたらアリガタイデス。

    呼吸(いき)すれば、/ 胸の中にて鳴る音あり。/凩よりもさびしきその音!

    眼閉づれど、/心にうかぶ何もなし。/さびしくも、また、眼をあけるかな。

 啄木は明治末年の4月にこの2首を残し世を去った。嚝野の果ての荒涼を思わせるこの2首を谷村新司が摂取していることを、今朝の✿「うたをよむ」で私は初めて知った。

 啄木の仕事で大切な一つが大逆事件の詳細な記録を意図した「日本無政府主義者陰謀事件経過及び付帯現象である。亡くなる前の年の1月24日、彼は身体の不調に耐えながらこれを書いた。三枝昂之は啄木の研究でも知られている。私は生誕130年の今年は啄木について書かれたこと読みたくなってきた。啄木の磁力だろうか。 

                   2月8日  松井多絵子