えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

ことしの新米

2015-08-25 09:41:52 | 歌う

               ・・・ ことしの新米 ・・・

 ことしの新米がもう売られている。4日前に私は新潟の星峠で見た棚田は見渡す限り緑だった。いま出荷されているのは宮崎県のコシヒカリ、鹿児島・大隅半島の王子米らしい。日本列島の寒暖の差をあらためて思う。今も、幼い子までオニギリを好む日本の國は。

                 みずほの国        松井多絵子

       卵かけごはん、味噌汁、一夜漬け、みずほの國はやはりよき國

       二等米でも炊きたてはおいしくて河野裕子の卵かけごはんを

       いたような、いなかったようなひと卑弥呼、マンガの卑弥呼の眸は大きい

       女王卑弥呼は男を支配したのなら、女にやさしいひとだったなら

       米づくり始めしひとは卑弥呼なれ浅きみどりの棚田ひろがる

       茶店にて食むおにぎりがおいしくて卑弥呼はたぶん豊満なひと

                                 歌集『厚着の王さま』より

              ※     ※     ※    ※  

    新刊歌集 

 ✿ 岡井隆歌集  『暮れてゆくバッハ』  書肆侃侃房・本体2200円

            詩や散文、水彩画も添えて。

      言の葉の上を這ひずり回るとも一語さへ蝶に化けぬ今宵は

 

 ✿ 加藤治郎  『家族のうた』  ふらんす堂・本体1800円   

 365日短歌入門シリーズ。明治から平成まで『家族』を詠んだ名歌の数々。それぞれの時代の空気が感じられる。

 

 

 

 

 

  

 


ぶどう・ぶだう・葡萄

2015-08-24 09:13:15 | 歌う

               ・・・ ぶどう・ぶだう・葡萄 ・・・

 スーパーの果実売り場はすでに秋。紫や薄うす紅、緑などの葡萄が並んでいる。まるで詩歌が並ぶように。葡萄はつる性落葉低木、木からその房をもぎ取り食べる愉しさ。いま歩いている道のかなたは山梨県の、葡萄の園があるかもしれない。葡萄の名歌は多い。岩波現代短歌辞典には「葡萄」の項目があり、2頁にわたり穂村弘が解説している。

 ✿ とびやすき葡萄の汁で汚すなかれ虐げられし少年の詩を  寺山修司

 愛誦性富んだこの作品は語感の生々しさに比し抽象次元の出来事のように感覚される。

 ✿ 口中に一粒の葡萄を潰したりすなはちわが目ふと暗きかも  葛原妙子

 生の根底に在る「不気味なもの」を直観してしまう。人間深部を直接照射する。

 ✿ 沈黙のわれに見よとぞ百房の黒き葡萄に雨ふりそそぐ  斉藤茂吉

 重く激しい時間の流れによって支えられた「沈黙」の深さに打たれつつ、その詩的誠実さの     なかに慰籍の透明感がたたえられている。

 ✿ 食むべかる葡萄lを前にたまゆらのいのち惜しみて長し戦後は  島田修二

 <葡萄>と<たまゆら>の響き方に効果をあげている。

 ✿ 黒葡萄しづくやみたり敗戦のかの日よりいく億のしらつゆ  塚本邦雄

 <敗戦>という語の選択、さらに<黒葡萄>と<しらつゆ>の対比が効果をあげている。

 以上の解説は15年前の穂村弘。かなりむづかしいですよ。37歳の穂村弘の解説は。
掲出の五首はみな「葡萄」の表記だが「ぶどう」「ぶだう」なども多い。  

 

      まだ熱の下がらぬこの路この先に緑のぶどうの楽園よあれ 

                      8月24日  松井多絵子  

 

           


地球そぞろ歩き ⑬

2015-08-23 09:44:25 | 歌う

           ・・・ 地球そぞろ歩き ⑬・・・ 

 ▼ 見おろせば緑の波が寄せてくる星峠棚田、八月末の   松井多絵子

 8月21日、9時に赤倉温泉ホテルを出発し青海川駅へ向かう。ツアーのバスの車窓は新緑の木々が連なる。この辺りは豪雪地帯らしい。まだ春なのだろうか。1時間ほどバスにゆられて信越本線の青海川駅に着く。日本一波打ち際に近いといわれる駅である。ここから見渡す海原はなんとも広い。ブルーグレーの壮大な半円の海原をながめながら、地球はやはり丸いんだなあと思う。日本海沿いに走るローカル線に乗り柏崎へむかう。約8分の乗車。貴重な8分だった。

 柏崎駅から約20分で星峠の棚田に着く、新潟県十日町松代地域、山の斜面に沿い階段状に広がる棚田の絶景スポットだ。米を作り、小さなダムとして山を支え、にほんの里100選に選ばれた星峠の棚田は自然のアートだ。私もアートの1部となり棚田の裾に立つ。

 津南へ向かう。「向日葵畑」ではなく苗場酒造の見学である。日本百名山「苗場山」の伏流水で仕込んだ日本酒。創業1907年。円形の風呂のような釜で焚かれたご飯が日本酒になる過程を見る。大きなタンクで寝かされ、発酵してできた日本酒を試飲、せっかくだが私にはどれも同じ味である。しかし銘柄により価格はかなり異なる。試飲しながら牧水をおもう。

 ❤ さびしさのとけてながれてさかづきの酒となるころふりいでし雪  若山牧水

 何年か前に見た「津南の向日葵」を見ることなく津南を去り、南魚沼で郷土料理の昼食を済ませて帰路へ向かう。帰路までの歩数 2462歩  クラブツーリズムツアーを利用。
※信越の秘境・雷滝苗名滝、赤倉温泉1泊、ローカル列車、星峠の棚田、(費用21900円)

                        8月23日  松井多絵子                        

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次席の人たち

2015-08-22 09:41:26 | 歌う

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             ~ 次席の人たち ~

 例年通り短歌研究9月号は✿新人賞発表、遠野真が受賞した。「さなぎの議題」30首。
平成2年生まれの大学生、「未来短歌会」所属だが、この3月に入会したばかりで私は会ったことがない。まるで民話の「遠野のカッパ」が急に現れたように戸惑っている。応募作品589篇が無記名で1次選、2次選、選考委員は栗木京子、米川千嘉子、加藤治郎、穂村弘。選考過程は誌上に詳しく報告されている。受賞者と次席は僅差である。が受賞者の名は表紙を飾る、金屏風の前に立ち挨拶、ライトのなかで花束を受け取り拍手を浴びる。

 今年は次席が2人、さぞ悔しかったであろう、私が好きなお二人の5首を抄出する。

         ✿ 「感傷ストーブ」   川島結佳子

     真夜中にラジオを点ける掌に刺さる光は緑色なり

     まだ家があるかのように道端にせり出す八つ手 今日もぶつかる

     将来は見ない聞かない言わないでポップコーンと帰る夕暮れ

     百円のサボテン枯れる否 枯らす私は砂漠よりも砂漠で

     (孤独死でいいよ。もう寝る。) ザル状の陽射し差し込むフローリングに

 

         ✿ 「鋏とはなびら」    杜崎アオ

      気づかないうちにせかいは暮れてゆく歯医者の目立つ駅前通り

      鳥の家 鳥のいる家 鳥かごのある家 鳥の墓のある家

      まず音がやがて湿度がそののちにやっとのことでとどく、ことばは

      わけもなくあやまりたくてしかたない唇におく匙のつめたさ

      ひざこぞう立ててすわればほつほつと離れ小島のようにつながる

 

※ 「感傷ストーブ」の川島結佳子、S61年生まれ、東京在住、派遣社員、「かりん」所属

  「鋏とはなびら」の杜埼アオ 北海道江別市 その他は記載なし

          お二人のこれからを期待してます 、 8月22日 松井多絵子

           


老後破産が心配

2015-08-19 09:55:15 | 歌う

             ・・・ 老後破産が心配 ・・・

❤親切な言葉のような意地悪な言葉のような お年寄り とは  松井多絵子

 50代からの人生を、学ぶ、楽しむ、ための月刊誌 「いきいき9月号」の広告がコワイ。
「老後破産が心配です」。長生きをすればするほどお金が要る、稼ぐことは出来ないのに支出ばかりふえる。しかしつい何か月か前までは老人はリッチ、消費の王さまとして持ち上げられていたではないか。デパ地下やスーパーで高級食材を買うのは老人、旅行や会食も老人、子供や孫に気前よくおごり、高価なプレゼントをする。老人は生きている間に自分の孫子の喜ぶ顔を見たいのだ。「いきいき9月号」の特集記事の見出しを取りあげてみる。

 ① 老後破産を防ぐ5か条 (子どもに貯金額を言ってはいけない。など)。

 ② お金に関しては線引きが重要。(親子の間でも「借用書」をもらう、など)

 ③ 結婚しない子ども (との賢い向きあい方)

 ④ 夫が定年したら夫婦関係を変えよう

 ⑤ 夫がストレスにならない間取り (家具や照明器具を活用しながらできる解決法)

 ⑥ さりげなく夫を動かす㊙作戦 (自分が我慢するのではなく夫を変える)

 「いきいき」は女性の読者が多いのだろうか。④⑤⑥はいまや老女の最大の悩みを取り上げている。老後破産へ導くのは夫かもしれない。自分の縁者にいいカッコし散財する。退職後も重役気取りの夫、趣味のない夫に悩まされている老後の女たちが私の周りにわんさといる。絆を求め交際費の多すぎる老女も多い。よき友も死んでしまえば頼ることができない。自分の生きがいこそ何よりも信じられる。頼れるのではないか。

     ❤ 空のこの青こそよけれ清らかにわれを包みて護りてくれる

                   8月19日   松井多絵子