「走りだす言葉たち」 松井多絵子
昨日4月16日朝日夕刊の「あるきだす言葉たち」はわたしには眩しい。木暮陶句郎の「春光」がとても眩しい。
★雪踏んで石狩湾の叫び聞く
読みながらこれは「走りだす言葉たち」だと思った。この冬の北海道の豪雪、きびしい冬だっただろう。まだ冬がつづいているらしい。「いいかげんにしてくれ」と石狩湾が叫ぶ。スゴイ句だ。
★薄氷に夕闇が貼りついている
夕闇が薄氷に迫る。押し寄せる寒さを「貼りつく」と捉える、するどい感受性。
★それぞれの太陽背負ひ野に遊ぶ
野原で遊んでいる子供たちに陽がさしている。それだけのことだが、「太陽背負ひ」がこの句を盛り上げて、春のよろこびを伝える。
★風光る川辺に交わすことばにも
川の近くでの語らい。その言葉たちを光らせながら風が過ぎてゆく。そよ風のような句だ。
★影と影また触れ合ひて園うらら
園とは幼稚園か。幼子たちが戯れている。影と影が触れ合うのは鮮やかな光が、影を際立たせるからだ。春の光と影の交錯がうつくしい。
※作者のプロフィール こぐれ・とうくろう 61年群馬県生まれ。日本伝統俳句協会賞、村上鬼城賞ほか。「ひろそ火」主宰。『陶然』 紙面の木暮陶句郎氏の写真は春愁の面差し。こういう男は女を泣かせるかもしれない。(内緒のはなし) 4月17日 松井多絵子
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