☚ 疲れている手 ☚
すこし涼しくなると夏の疲れが表われる。クーラーがよく利くテレビ局では、手や爪のカサカサやヒビ割れ、亀裂などの原因になるらしい。全身を見られるのが仕事の女優やモデルだけでなく、女子アナやリポーターなど、手元がアップになる頻度の高い女性たちにとって、ケアーは欠かせない。私はマニキュアをすることもなく、特に手のケアーはしていない。いかにも世帯じみた手をいま動かしている。よく働いてくれる手に感謝しながら。
短歌には「手」が詠まれることが多い。「手」といえば石川啄木の「~じっと手を見る」がまず浮かぶが、そのほかにも「手」の名歌は多い。1999年発行の岩波短歌辞典の「手」の項で梅内美華子が次のように書いている。当時29歳の梅内美華子の解説である。
{手} 手は今日ではおもに手首から先の部分を示すが、かつては肩から指先に至る広い範囲を示していた場合もあった。生活や生産などの行動において手の動きは重要視され、そこに豊かな表情をみることができるし、それは「手に関する熟語や慣用表現が多いことからもわかる。身体器官のなかでも文学や芸術においてきわめて多様なイメージを託されかつ頻繁に使用されている。
☚ 大きなる手があらわれて昼深し上から卵をつかみけるかも 北原白秋
手の行為が巨視的に捉えられ、ある大きな力の比喩としてうたわれている。
29歳の梅内美華子さま 、丁寧な解説をありがとうございます。
♠ つれあいが我に逆らうときつねにその頤に左手があり ㊟頤(おとがい)は あご
8月27日 松井多絵子