~ 次席の人たち ~
例年通り短歌研究9月号は✿新人賞発表、遠野真が受賞した。「さなぎの議題」30首。
平成2年生まれの大学生、「未来短歌会」所属だが、この3月に入会したばかりで私は会ったことがない。まるで民話の「遠野のカッパ」が急に現れたように戸惑っている。応募作品589篇が無記名で1次選、2次選、選考委員は栗木京子、米川千嘉子、加藤治郎、穂村弘。選考過程は誌上に詳しく報告されている。受賞者と次席は僅差である。が受賞者の名は表紙を飾る、金屏風の前に立ち挨拶、ライトのなかで花束を受け取り拍手を浴びる。
今年は次席が2人、さぞ悔しかったであろう、私が好きなお二人の5首を抄出する。
✿ 「感傷ストーブ」 川島結佳子
真夜中にラジオを点ける掌に刺さる光は緑色なり
まだ家があるかのように道端にせり出す八つ手 今日もぶつかる
将来は見ない聞かない言わないでポップコーンと帰る夕暮れ
百円のサボテン枯れる否 枯らす私は砂漠よりも砂漠で
(孤独死でいいよ。もう寝る。) ザル状の陽射し差し込むフローリングに
✿ 「鋏とはなびら」 杜崎アオ
気づかないうちにせかいは暮れてゆく歯医者の目立つ駅前通り
鳥の家 鳥のいる家 鳥かごのある家 鳥の墓のある家
まず音がやがて湿度がそののちにやっとのことでとどく、ことばは
わけもなくあやまりたくてしかたない唇におく匙のつめたさ
ひざこぞう立ててすわればほつほつと離れ小島のようにつながる
※ 「感傷ストーブ」の川島結佳子、S61年生まれ、東京在住、派遣社員、「かりん」所属
「鋏とはなびら」の杜埼アオ 北海道江別市 その他は記載なし
お二人のこれからを期待してます 、 8月22日 松井多絵子