リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

ドラマチックな日

2019-12-01 06:08:04 | オヤジの日記

先週の日曜日の朝6時ごろ、友人の極道コピーライター・ススキダからLINEが来た。

 

「いま入院している。風邪をこじらせて肺炎手前になった」

先週の木曜日に高熱が出て、医者に行かずに我慢していたが、土曜日の夜に咳が止まらなくなって、タクシーに乗って救急病院に行ったという。

すぐ検査を受けて、「入院ですね」と言われた。医師から、このままでは肺炎になる。家には帰しませんよ、と強い口調で言われたのだ。

顔が怖いくせに、メンタルが弱いススキダは震えながら「は、は、はい」と答えた。

それで、入院。

タイミングが悪いことに、ススキダの奥さんは、先週の水曜から一週間の予定でシンガポールに行っていた。

ススキダの奥さんは、15歳まで香港で育った。ご両親は中国人だ。つまり、奥さんも中国人。

そして、ススキダの奥さんのご両親は、2年前にシンガポールに移住した。昨今の香港の情勢を予見していたのかもしれない。

ススキダの奥さんは、ご両親がシンガポールに移住してから、一度も会っていなかったので、今回会いに行った。

だから、奥さんはいない。頼ることができない。

ちなみに、奥さんは元ナースだ。奥さんがそばにいたら、風邪をこじらせることはなかったかもしれない。運の悪いこじらせ極道。

さらに、ススキダの奥さんの15歳からの人生は、波瀾万丈で連続テレビ小説が書けるほどだが、ここでは割愛(主演は吉岡里帆さんか)。

ススキダには、一人娘がいた。しかし、カナダ人と結婚してカナダのバンクーバーにいた。頼れない。

他に、ススキダには、横浜近辺にコピーライターの知り合いが2人いた。

しかし、つくづくススキダは、持っていない男だ。その2人は、取材で長崎、広島に行っていた。すぐに帰ることができない。頼る人がいない。

友だちの少ないススキダが頼れるのは、「アイツ」しかいない。つまり、「仏のマツ」と呼ばれる私だ。

 

「悪いが、パジャマと下着を買って、病院に来てくれないか。まさか入院とは思わなかったので、財布とスマホ以外持ってこなかったんだ」

断る! と言いたかったが、仏はそんなことはしない。

行ってやることに、やぶさかでない、と答えた。

しかし、パジャマと下着かよ、まるで愛人みたいだな。

入院先は、川崎市元住吉だという。病院の名を聞いたら、むかし母がカテーテル手術を受けた病院だった。それなら、土地勘はある。

元住吉の商店街が10時に開くことを考えて、逆算して準備することにした。

中央線で国立から吉祥寺までは20分、井の頭線で吉祥寺から渋谷までは急行で20分弱、東急東横線で渋谷から元住吉は25分前後。乗り換えと歩きの時間を入れて、1時間半と見た。

ススキダは、「タクシーで来い! 金は払う」と言ったが、仏の辞書にタクシーなんてねえんだよ、ベッドで死んでろ。

 

家族の朝メシを速攻で作った。

食パンで作る肉まん。鶏団子とチンゲンサイ、春雨の中華スープを付けた。肉まんは食う前に30秒チンをする。温かくて美味いですよ。

8時半に家を出た。外は雨。面倒くさいな。タイミングの悪い野郎だ。顔と性格をこじらせた上に風邪までこじらせるなんて、忙しいやつだ。

奇跡的に、どの路線でも吸われた座れた。それぞれ短い時間の睡眠を取った。睡眠は大事だ。スイミングも大事だが。

元住吉の洋品店で、吐き気を覚えながら、男もののパジャマ2着とシャツ、パンツ3枚ずつを買った。ススキダの体のサイズを想像したときは、気持ち悪すぎて、体が硬直して呼吸困難に陥った。

仏は、汚いものが苦手なのだ。

 

途中、コンビニエンスストアで、ススキダ好物のみたらし団子を買った。

ススキダは笑えることに、みたらし団子命の男なのだ。好きすぎて、横浜で「みたらし団子専門店」を出すほどだ。

2坪くらいの小さな店だ。流行っているかは、興味がないので知らない。

肺炎寸前の男が、みたらし団子を食えるかは疑問だが、お供えとしては最適だろう。

私はクリアアサヒの500缶を2本とワサビ味のポテトチップを買った。

ススキダに飲んでいるところを見せびらかそうと思ったからだ。

病室でビールを飲んではいかぬ、というルールはない(と思う)。

私は、息子と娘が生まれたとき、病室で生まれたばかりの子どもの顔を見ながらビールを飲み弁当を食った前科がある。目から水を流しながら、飲み食った。

看護師さんは、そんな私を見ても白い目にはならなかった。

だから、極道の前で飲んでもノープロブレム。

 

病室に入ったら、ススキダはもう死んでいた。

とりあえず、生き返るまで荷物を置いて院内をぶらつくことにした。

母が手術をしたのは、もう10年前なので、院内の様子は変わっていた。

だが、病院というのは、基本的に同じ作りになっている。待合室があって、診察室、病室、そこそこ洒落たレストラン、コンビニエンスストア、ナースステーション、患者さんと医師、看護師さんがいて、大抵は各階に憩いの場がある。

その憩いの場で、私は腰を落ち着けた。ただ、腰を落ち着けても私にはすることがない。私には外でスマートフォンやタブレット、ノートパソコンを使う習慣がない。スマートフォンとタブレットは持ってきたが、それで何をするっていうの?

だって、アプリがほとんど入ってないんだもの。人間だもの。Google、乗換ナビ、LINEしか入っていないのに、どう時間をつぶせばいいのか。

柴咲コウ様とガッキー、我が娘、ブス猫の画像は、たくさん入っていたが、病院で画像を見てニヤけるのは犯罪だろう。

この日は、急いでいたので文庫本も持ってこなかった。ヒマですよ。

眠るしか選択肢がない。眠っちまおう。そう思って、目をつぶったとき、けつに入れたアイフォンが震えた。ディスプレイを見たら、ススキダだった。

「本当に来てくれたんだな。ありがとう。いま目が覚めた」

 

おまえが、人に感謝の言葉を言うのか。腐った団子を食い過ぎたんじゃないか。

あれ? 電話が切れたぞ。図星だったのか。

病室に行くと相変わらず点滴を汚い腕に突き刺されたススキダが、ベッドの背を起こして私の方を見た。

偉そうだな、おまえ、その顔で個室かよ。

「いや、個室しか空いていなかったんだ。他の部屋が空いていたら、すぐそっちに移る」

移るな、その顔が入ってきたら、入院患者さんの容体が悪化する。ずっと個室にいろ。そして、死ね。

そんなことを言ったら、普段の心の狭いススキダだったら怒ったはずだが、今回は怒らなかった。

おまえ、賞味期限が38年過ぎた、みたらし団子を食ったのか?

そんな私のお茶目な励ましを無視して、ススキダが頭を下げた。

「悪かったな。忙しいなか来てくれて、おまえの顔を見て安心したよ。本当に安心した。もう俺は大丈夫だ。仕事に戻ってくれ。この借りは、すぐに返す」

「本当に、ありがとう」

また、頭を下げられた。

 

なんか、違和感。

 

帰り道、ススキダにお供えする、みたらし団子を置いて来るのを忘れたことに気づいた。

病室で飲もうと思ったクリアアサヒもそのままだ。

脱力した。

こんなはずじゃなかったのに。

物足りない。全然ドラマチックじゃなかった。

つまんねえぞ、ススキダ。

 

 

だが、家に帰ると、ドラマチックなことが待っていた。

誕生日の1日前だったが、家族が誕生日を祝ってくれたのだ。

みんなが私の好きな牡蠣の料理で祝ってくれた。

そして、プレゼントは、なんと新しいMacBook Airだった。

 

娘曰く「もう10年くらい使っていただろ、新しくした方がいいと思って」。

息子曰く「我慢して使っているような気がしたんだよね。新しい方が能率が上がるよね」。

ブス猫曰く「オワンオワンオワンオワンダニャー」。

私はメインとして、デスクトップのMacを使っていた。それは、そこそこ新しい。ノートパソコンは、おまけだと思って古いものを使っていたのだが、それを子どもたちは「我慢している」と思ったようなのだ。

なんて、いい子たちなんだろう。

いや・・・・・待てよ。それには、テキトーなことをしていないで、もっと働けよ、という隠れた意味があったのかもしれない。

 

だが、いずれにしても嬉しい。

 

 

風呂場で泣いた。

オワンオワン。

 

 

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