ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

世増ダム

2022-12-02 16:06:06 | 青森県
2022年10月23日 世増ダム
 
世増(よまさり)ダムは青森県八戸市南郷島守の二級河川新井田川本流にある青森県県土整備部が管理する多目的ロックフィルダムです。
青森県の八戸市、階上町および岩手県軽米町を流れる新井田川流域は標高20~300メートルの丘陵地が広がり八戸平原と呼ばれています。
江戸時代から開拓が試みられるも、年間降水量1000ミリ未満、年平均気温10℃未満という過酷な気象条件に阻まれ、昭和20年代までは山林荒野が続き農業は零細な畑作が営まれるのみでした。
1976年(昭和51年)に当地区の大規模農地開拓を目的として農水省による国営総合農地開発事業八戸平原地区が着手され、これに青森県県土整備部や八戸圏域水道企業団、種市町水道事業(現洋野町水道事業)が事業参加、4者の共同事業として2003年(平成15年)に竣工したのが世増ダムです。
ダムの施工は農水省が行い、運用開始後は青森県県土整備部が管理を受託し、新井田川の洪水調節、八戸平原約1850ヘクタールへの灌漑用水の供給、八戸圏域水道企業団及び洋野町への上水道用水の供給を目的として運用されています。
またダム完成に先立つ2002年(平成14年)に世増ダム管理用発電所(最大出力1500キロワット)が稼働し、河川維持放流を利用した小水力発電が行われています。

下流から
ダムの竣工は2003年(平成15年)、すでにゲートレスがスタンダードな時代ですが、当ダムはオリフィスローラーゲートを4門備え威圧感たっぷりのピアが鎮座します。
ゲートを設置した理由は洪水期と非洪水期で洪水調節容量および利水容量の配分が異なるため、2段になったオリフィスをローラーゲートでコントロールするためです。


左岸中段から
一見いかつい外見ですが、手前のクリーム色の揚水機場が全体の雰囲気をまろやかにしています。


洗堀を防ぐためか?整流目的か?
導流部中央下部は傾斜が変わっています。


天端が前面にオフセットされクレスト越流部が上流側にせり出しています。


ピアとゲート
通常はゲートの凹凸面が下流側に配置されることが多いので、スキンプレート面のゲートはちょっと新鮮な感覚。


訪問した10月23日はまだ洪水期運用。
したがって両端上側のオリフィスはゲートで閉じられ、下段側のゲートがここで待機。
11月1日より非洪水期になるので、そこで閉まるゲートが交替します。


減勢工と建屋群。
建屋のカラーが異なりとにかくカラフル。


左から放流設備、管理用発電所、揚水機場となります。
灌漑用水の受益農地の大半はダムよりも高地にあるため、揚水機場も大規模な施設になっています。

天端は徒歩のみ開放
対岸の管理事務所も含めてエンジの早稲田カラー。


右岸から超広角で
曇天ですが、色合いが豊富。


青葉湖と命名されたダム湖は総貯水容量3650万立米
これは津軽ダム浅瀬石川ダムに次いで県内3番目の規模です。


上流の展望台から望遠で俯瞰。
ゲートが多彩なので、上流面も賑々しい。
ダムサイトからは見えなかった艇庫とインクラインもよく見えます。


(追記)
世増ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0218 世増ダム(1898)
青森県八戸市南郷島守
新井田川水系新井田川
FAW
52メートル
247メートル
36500千㎥/33100千㎥
青森県県土整備部
2003年
◎治水協定が締結されたダム


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