紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【ダイの大冒険】ハドラーの物語を追う[武人ハドラー]

2011-06-26 20:06:12 | ○○の物語を追う
前回からの続き


  爆発のあと



黒の核晶の激しい爆発のあと、死の大地は跡方もなく吹き飛んだ。
大地の消えた海原にあらわれたのは、中空に浮かぶ巨大な宮殿であった。
この宮殿こそが、大魔王バーン率いる魔王軍の真の本拠地・「バーンパレス」である。

死の大地で戦闘を繰り広げていたアバンの使徒、ハドラー親衛騎団は爆発に巻き込まれ
全滅したかに思われたが、彼らは生きていた。

どうやら爆発の瞬間、バランが全竜闘気を放出して爆発の規模を抑えていたようだ。
だが、生命力を使い果たしたバランは力尽き、その命を落としていた・・・。

そして、ハドラーは・・・



ハドラーは生きていた!
しかし、五体満足とはいかず、受けた傷がたちまち治るはずの超魔生物の能力をもってしても
その肉体に受けた傷が癒えるには至らなかった。


  ハドラー、大魔王に反旗を翻す

大魔王バーンはハドラーに向かって言う。

黒の核晶はすでにハドラーの血肉の一部と化していた。
それを摘出してしまったからには長くは生きられない、と。

だが何よりも、ハドラーはこれより大魔王バーンによる処刑を受けることになる。
大魔王バーンは勇者ダイらアバンの使徒と交戦中であった。
バーンの力はアバンの使徒を圧倒し、いよいよバーンによるトドメがアバンの使徒たちに
下されるという場面において、ハドラーはその戦闘に割って入ったのだった。

ハドラーは、自分以外の者にダイたちを殺されたくはなかった。
たとえそれが自らの主・大魔王バーンであろうとも。
いや、もはや大魔王バーンは主とはいえない。
全てをかけた竜の騎士との決闘を侮辱した大魔王バーンを、もう主と認めることはできなかった。



ハドラーは大魔王バーンによる処刑を甘んじて受けることをしなかった。
ハドラーはバーンによって肉体に仕込まれた黒の核晶により殺されかけた。
一度ならず二度までもバーンに殺されるわけにはいかない。
バーンがどうしても自分の生命を奪うというなら、この場で大魔王バーンを倒すのみ!



「オレをなめるなァッ! 大魔王ォッ!!」

ハドラーの思わぬ反撃に驚愕するバーン。
かつてハドラーには、バーンの暗黒闘気で甦る度に強くなる不死身の肉体を与えていた。
超魔生物と化した今、その能力は失われたものと思われていたが・・・
ハドラーは自力で死の淵から甦った!
そして、今や大魔王バーンに匹敵する強さを手にしつつあるのでは・・・!?



親衛騎団を人質にとったミストバーンとキルバーンは、部下がどうなってもいいのかと
ハドラーに脅しをかけるが、そんなことではハドラーは動じない。

「どうせオレが死んだらそいつらも生きてはおれんのだ! 我らハドラー親衛騎団は一心同体!!
 その目的はアバンの使徒打倒だけだっ!!
 目的のために死を恐れる者など俺の部下には一人もおらんわぁっ!!」

ハドラーの言葉に、親衛騎団一同は感動する。
「アバンの使徒打倒」という目的のもとに固く結びついた絆が、そこにはあった。

すでにアバンの使徒との戦いでかなりの魔法力を消耗していたバーンを、
ハドラーは死の淵から甦った力で圧倒する。
この機を逃すまい、と超魔爆炎覇で一気に勝負をつけようとするハドラーであったが。



大魔王に刃を振りかざしたハドラーを拘束した者がいた!
妖魔司教ザボエラである。
ザボエラは、ハドラーの超魔生物化に大きく協力したにもかかわらず、
魔牢に閉じ込められたことを逆恨みしていたのだった。
ハドラーとしては、命令を無視し先走ったザボエラを処刑せずに魔牢へ投獄するのみと
したことで温情を示したつもりだったのだが、ザボエラにはその温情も通じていなかったようだ。

形成は逆転し、ハドラーは最大のピンチを迎える!!



だが、ハドラーのピンチを救ったのは思わぬ者であった。
ハドラー親衛騎団の城兵(ルック)「ブロック」である。
ブロックはその巨体と言葉のしゃべれぬ様子から、生みの親のハドラー自身も
特性を掴みかねていたが、仲間のピンチに本領を発揮する能力を持っていたのだった。
チェスの城兵の能力に一手で王と城兵の位置を入れ替える"キャスリング"というものがある。
城兵のチェスの駒から生まれたブロックにはその能力が備わっていた。



キャスリングによってハドラーと位置を入れ替えたブロックはその身体に大魔王の一撃を受けた。
言葉をしゃべれないはずの彼が初めて覚えてしゃべった言葉は、
親衛騎団の仲間に向けた「みんな、ハドラー様をたのむ」という言葉であった。

生まれてから今日まで、主と仲間を守り続けた城兵は散った。
ブロックの能力により危難を救われたハドラーと親衛騎団はその場を退却するのだった・・・。


  ハドラー親衛騎団、最後の戦い



大魔王の処刑から逃れたハドラーは、最後に戦う相手をアバンの使徒と決めた。
もはや大魔王のために戦うことはできない。
かといって、アバンの使徒の味方をすることもできない。自分はアバンの仇なのだから。

この先の生命の短いハドラーの取るべき道はひとつ。
自分の心を最も沸かせてくれる者と戦って、自らの生きた証を見せることである。
そして、その相手は大魔王ではない。

ハドラーはもう魔王でも魔軍司令でもなく、一人の"武人"であった。
自らの心を最も沸かせてくれる者と闘うことこそが、彼の生きた証明となる。
武人・ハドラーと、生き残った親衛騎団・ヒム、シグマ、アルビナスは
アバンの使徒との最後の戦いに臨む・・・。




先の大魔王との戦いにおいて、勇者ダイたちアバンの使徒も全員が生き延びていた。
彼らは大魔王に惨敗したにもかかわらず、再びバーンパレスに姿を現したのである。
ハドラーはバーンパレスに攻め入ったアバンの使徒たちの前に姿を現し、決闘を申し込むのだった。

ダイはハドラーの生命がこの先長くないこと、最後の生命を賭けて自分自身の誇りのために
戦おうとしていること、そして、その相手に自分を選んだということを一瞬で悟った。
そして、勇者ダイはハドラーのこの挑戦を受けるのであった。

ヒム、シグマ、アルビナスも他のアバンの使徒とそれぞれの一騎討ちに臨んだ。

 兵士・ヒム 対 戦士・ヒュンケル
 騎士・シグマ 対 魔法使い・ポップ
 女王・アルビナス 対 武道家・マァム

そして、

 武人・ハドラー 対 勇者・ダイ

ハドラー親衛騎団最後の戦いが始まった!








・・・アバンの使徒はやはり強かった。
それぞれの想いを抱いてアバンの使徒との戦いに臨んだ親衛騎団の三人だったが、
全員が敗北を喫した。



親衛騎団全員の敗北を知ったハドラーは彼らに感謝し、ねぎらいの言葉をかけた。
思えば、かつてハドラーが魔軍司令を務めた魔王軍六大軍団は最強のメンバーだった。
にもかかわらず、ダイたちに勝てなかったのは指揮官であったハドラーに野望と保身以外
の感情がなかったからに他ならない。

だが、今は違う。
今のハドラーには野望も保身もない。
ただ自らの全生命を賭けて、宿敵と戦うことがすべてである。
そして、それをよく理解し、自分たちの生命を賭けてまで応えてくれたのが
親衛騎団のメンバーたちであった。
最後の最後で、ハドラーは部下に恵まれた。



そして、ハドラーは部下たちの生命と自らの生命を剣に変え、最後の一太刀で
その忠誠に応えるつもりである。



対するダイは亡き父親・バランの想いを剣に込めて、父の必殺剣「ギガブレイク」でぶつかってくるようである。
ハドラーは部下の想いを込めた「超魔爆炎覇」でこれを迎え撃つ!



しかし、ダイはそこへさらに自らの師・アバンの想いを上乗せする!

「ギガストラッシュ」・・・!!
アバンの技に、バランの力!・・・。見事であった。
それぞれの想いを込めた必殺技の撃ち合いは、勇者ダイの方に軍配が上がった。
ハドラーは敗れた・・・。だが、満足のいく勝負であった。



散りゆく自分の人生に悔いはない。
むしろ、ダイたちアバンの使徒に感謝している。
アバンの使徒たちの手で地に堕ちてからが、ハドラーの本当の人生の始まりであった。
その間みじかい間だったが、確かな手ごたえがあった。

魔王に始まり、大魔王の軍団の魔軍司令を経て、地に堕ちたハドラーは超魔生物として生まれ変わった。
そして、今はただの一人の武人として、その人生の幕を閉じようとしている。


  ハドラー最期の時



ハドラーの最期に無粋に水をさす者がいた。
死神・キルバーン。
彼の発動した殺しの罠により、ハドラーとの戦いの直後、動けないダイを魔界の炎が襲った!



殺しの罠発動直前、魔法使い・ポップが飛び込んで来たことにより難を逃れたかと思われたが
キルバーンの罠は非常に強力で、飛び込んできたポップにもどうすることもできなかった。
ポップは限界を感じ、力尽きようとしたが、そんなポップに喝を入れたのは
今まさに生命尽きようとしているハドラーであった。



「バカ者ッ!! うぬらそれでもアバンの使徒かっ!?
 こんな所で力尽きてしまうような連中にその名を名乗られては
 あの世のアバンもうかばれまいっ・・・!

 ・・・オレが生命を賭けてまで倒そうとしたアバンの使徒!
 それは不屈の魂を持った希望の戦士だっ!
 最後の最後まで絶望しない強い心こそがアバンの使徒の最大の武器ではなかったのかっ!!」


敵であるハドラーに、真のアバンの使徒とは何かを教えられたポップは驚愕する。
自分たちよりもハドラーの方が「アバンの使徒」とは何なのかを知っていた。こだわっていた!
ハドラーの一喝により、アバンの使徒の精神を甦らせたポップは最後の脱出策を試みる!



ポップの脱出策に、生命の尽きかけているハドラーも残魔法力を振り絞って協力する。
生命を賭けた真剣勝負を死神の姑息な罠ごときにつぶされてはたまらない。
勝者に生き残って語り継いでもらわなければ、自分の生きた証を見せた意味がない!!
ハドラーの強い想いが、半ば骸と化した自分の身体を動かした。



ハドラーの最後の力を振り絞った協力により、ダイを逃がすことができた。
しかし、ポップはハドラーを見捨てて行くことに抵抗を感じ、逃げ遅れてしまう。
ハドラーは脱出の瞬間ためらったポップを叱責するが、
ポップは「あんたに見とれちまった」と語った。
ポップは必死に自分たちを生かそうとするハドラーを見て、他人とは思えなくなったという。

「自分の誇りを賭けて・・・! 仲間たちと力を合わせて! 努力して!
 正々堂々とおれたちと戦うために必死に・・・必死に頑張りぬいてよ・・・!!
 おれたちとどこが違う・・・!? 同じじゃねぇか!!」




ハドラーはポップの言葉に涙を流した。
この男は生まれ変わってからのハドラーの生き方を理解し、共感し、
自分の生命が危ないというときに、これから生命尽きようとするハドラーを助けようとして
つい手をさしのべてしまったという。

このポップという男。
初めて出会ったときはアバンの影に隠れるハナタレ小僧でしかなかった。
その男が、最後の最後でハドラーの一番の理解者になろうとは・・・。
これから生命尽きようとする自分が業火につつまれるのは良いが、
この素晴らしい男が自分とともに死んでいくのはやるせない。
ハドラーは魔族でありながら生まれて初めて人間の神に祈った。
この素晴らしい男だけは生かしてくれ、と。

その祈りが通じたのか否か――
強烈な閃光と共にハドラーとポップをつつんでいた業火は消え去った。
そして、ハドラーは驚くべき光景を目撃するのである。



勇者アバン。
かつてハドラーとの戦いにおいて、その生命を散らしたはずの男がそこにいた。



信じがたいことだったが、アバンは生きていたのだった。
一体どうやってあの時の自己犠牲呪文(メガンテ)から助かったのか。
そんな疑問は今はどうでもよかった。
ハドラーはアバン生存の事実を素直に受け止め、彼の弟子を褒めた。



「ポップよ・・・ お前たち人間の神というのも・・・中々粋なやつのようだぞ
 オレの生命とひきかえに・・・ オレがかつて奪った大切な者をお前たちに返してくれた・・・
 そのうえ・・・
 オレの死に場所を・・・ この男の腕の中にしてくれるとはな・・・」


ハドラーの肉体は灰と化して散っていった。
超魔生物となった者の宿命である。
死後、その肉体は灰燼に帰し、遺ることはない。

しかし、ハドラーは最後まで後悔はしていない。
最後に自分の生きた証を立てることができた。
満足のいく人生であった。


  意志を継ぐ者



これも人間の神が起こした奇跡であったのか。
ヒュンケルにコアを貫かれて絶命したはずの兵士(ポーン)・ヒムが執念による復活を果たした。
本来、ハドラーの禁呪法で生まれたヒムがハドラーの死後、生きていることはあり得ない事である。
そのうえ、ヒムの頭にはハドラーを思わせる銀髪があった。
ヒュンケルは「ハドラーの生命がヒムに宿ったとしか思えない」と評した。

いずれにせよ、ハドラーはアバンの使徒のように、死してなお自らの意志を継ぐ者を得たのである。
銀髪のヒムは武人・ハドラーのように、より強い者を求めて戦い続ける。



ハドラーの意志は、彼の死後なお、確かに遺ったのである。

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12 コメント

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Unknown (Unknown)
2011-07-05 14:27:54
『ハドラーの物語を追う』読ませて頂きました。

ドラゴンボールのように、かつての強大な敵が改心し、味方となり共に戦うような展開も燃えますが、ハドラーのように改心しつつも、最後まで主人公達の前に巨大な壁として立塞がる展開に、血が沸き立った当時の思い出がよみがえりました。
良いものを読ませて頂き、ありがとうございます。

贅沢をいえば、キルバーンの罠(?)からアバン先生を守ったのがハドラーの遺灰だった~ のシーンも紹介して欲しかったな?
Unknown (紫)
2011-07-10 23:41:07
>アバン先生を守ったハドラーの遺灰

これは紹介しようかどうか最後まで悩みました!
一度入れようとしてみたんですけど、
どうにもおさまりが悪くなっちゃうような気がして
結局やめました。

キルバーンが「ハッ、ハドラー・・・!?」
と驚きながらアバンストラッシュに倒れる場面は
本当に圧巻ですよねぇ
Unknown (Unknown)
2011-10-04 11:10:08
魔王が大魔王を倒すわけにはいかないからザボエラで邪魔するというシーンは当初はそんな雑魚で足止めできるものなのかと納得いかん所もあったが、そこは腐りきっても六団長クオリティか。

ハドラーは最後まで味方にならずにライバルでいたのが良かった。
これほど急速に成長する魔王にはなかなか出会えないだろう。
Unknown (Unknown)
2012-10-08 08:25:51
ハドラーが親衛騎士団を部下といいながら
最後の瞬間に仲間といってるのに今更ながらきづいて
グッときました
Unknown (tora)
2014-02-06 22:36:20
昔は「あっそ」
だったのですが
年取ったら涙が止まらない。
なんだ、この漫画。
ハドラー達、、かっこ良すぎ。
もう一回「ダイの大冒険」読みなおそうと
思いました。
著作権に抵触している (通りすがりのものです)
2016-01-11 00:19:27
マンガは著作物です。一つの作品を作り上げるのにどれだけの労力と時間を費やさなければならないか、考えいて欲しい。すべてを投げ打って、それまで自分がしていた事を全て出し切って尚、ごく一部の者たちにしか事無く、歴史の流れに隠されてしまう者たちの悲しみを知って欲しい。
Unknown (Unknown)
2016-02-04 20:07:52
ポップとハドラーの成長物語だよなあ、この漫画。
久々に読み返したくなりました。
手元にまだ漫画あるから読もうかな
涙ボロボロ (logic)
2016-05-27 11:40:47
ハドラーが武人になることが見事に描かれた記事でした!

ハドラーのラストシーンは色々と泣けるシーンが多いと思ってます!

見事にまとめられてて、泣きながら読んでいました!
ありがとうございました!
Unknown (Unknown)
2016-07-29 16:49:29
最後まで一気に読ませていただました!

もう、感動!!の一言!
ハドラーは本当に精神面やその生きざまから努力の「人」だと思います!

ダイの大冒険のダイ、ポップ、そしてハドラーももう一人の主人公だと、あらためて思わされました!
Unknown (Unknown)
2017-03-28 17:27:18
〉〉通りすがりのものです

引用では?

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