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And This Is Not Elf Land

AMERICAN BEAUTY


映画『アメリカン・ビューティー』
各方面から非常に高い評価を受けている1999年アカデミー賞作品賞受賞作。

…にもかかわらず、「流血シーンが苦手だ」という理由だけで避けてきた映画でもある(…)

しかし、改めて観ると「限りなく完璧に近い」映画でした。まず、画像がきれい。キャラクターの配置もよく、台詞にも無駄がない。刺激的なシーンが多いので、どなたにでもお勧めはできませんが、作品としては素晴らしい!

主演のケビン・スペイシー…彼は10年前にブロードウェイのリバイバル・プレイであったユージン・オニールTHE ICEMAN COMETH(氷人来る)で、(事実上の)主役であるヒッキーを演じているのですが、この作品での演技を見ながら「きっと、ヒッキーもこのように演じていたのだろう~」と想像できるようでした。

舞台はシカゴ郊外の閑静な住宅街。多くのアメリカ人が思い描く「アメリカン・ドリームのゴール」に近い世界です。そこに住んでいる人たちは、多くのアメリカ人が「夢見ているもの」の「殆ど」を手に入れている人たちでもあります。しかし…そういう位置にいる人たちの「しょうもなさ」(と、敢えて言おう…「虚無」とかナンとか、そんなカッコつけた呼び方はしたくない)はというのは、幾度となく小説やドラマ、舞台などで取り上げられてきたテーマであり、さほど珍しいものではありません。

このAMERICAN BEAUTYがユニークなのは、主人公の娘のジェーンと、隣人の少年リッキーが、まるで「闇の天使」のように、アンチテーゼを体現しているところでしょうか。

人間は「風に舞う薄っぺらな紙袋」に過ぎない。
果たして、紙袋に「意志」はあるのか…

リッキーは、初冬の冷たい風に翻弄される紙袋が舞うさまを撮影したビデオに見入るのでした。そして、そんな無力に見える紙袋にも、背後には優しい力があること発見し、それがこの世の“Beauty”だとガールフレンドのジェーンに語り…そして、鳥の死骸や、死人の姿が美しいと言う…

しかし、彼が「もの」を見るのは、常にカメラのモニター越しであり、窓越しであり…彼は本当に「ものの本質」は見えているのでしょうか?

彼らの周囲にいるのは、きりきり舞いしながら生きている人々であります。ジェーンの母は「負け組」になることにとてつもない恐怖を感じるも、やることはどこか薄っぺらい。友人のレイチェルは、どこにでもいる退屈な女の子と思われることを何よりも嫌っていますが、しかし彼女が誇れるのは、自分の性的魅力だけ…主人公も彼女の魅力に一時は目が眩むのですが…しかし、真実を知った彼は、優しく彼女を癒す役割になっていきます。

そして、クリス・クーパー演じるリッキーの父親ですが…最初は、保守的で狭量な元軍人、当然、同じコミュニティーに暮らす同性愛者にも激しい嫌悪を抱くタイプの人、「うん、いそうだな」と思ったのですが~おっと…そんなに「簡単な」人物ではありませんでした(!)しかし、この人独特の顔の表情もあって、凄まじい演技をしています。素晴らしい…

ストリーの「前提」には、向こう意気の強い妻が、前の隣人の振る舞いが気に入らず、隣人の行動を見届けられていられるようにと、境界の木を切り倒したという経緯があります。こういう経緯など、台詞の中でさり気なくほのめかしていくのも、この映画の上手いところだと思いました。(眼隠しとなる)境界の木があれば、起きなかったかも知れない悲劇であったでしょう。

この映画は主人公の「語り」が挿入されますが、最初から、「自分の死」を起点にしているというか、とにかく珍しい視座から語っていますね。
彼は、自らに殉じた生き方をしたのだとも言えるでしょう。
しかし、娘のジェーンは?
俗世の汚らわしさに背を向けながらも、結局は闇の世界を徘徊するしかないのではないのでしょうか…


オールビーの『動物園物語』を読んで、この映画を見たら、一気に「鬱」になった
…外は急に寒くなったし~
冬でも晴れる太平洋側に住みたい!!
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