Fish On The Boat

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『華氏451度』

2018-02-22 00:33:28 | 読書。
読書。
『華氏451度』 レイ・ブラッドベリ 宇野利泰 訳
を読んだ。

本が禁じられた近未来の世界の話。
その世界では、本は焚書官によって焼かれるのです。
「焚書」なんて言葉は、
中国・秦の時代に行われた焚書坑儒を習ったとき以来に
目にしました。

解説によれば、
華氏451度は摂氏233度にあたり、
紙が自然発火する温度だそう。
ある意味、主人公ガイ・モンターグの中で
何かが自然発火することの暗喩のようにも読めたりしそうです。

主人公モンターグは焚書官であり、
本を焼く仕事をしているのですが、
ひょんなきっかけでそれまで見えていた世界がぐらつくんですね。
そして痛みを伴いながら、
個人のあたまのパラダイムがシフトしていく。
そして、あるとき、本を手にしたことで人生が変わっていきます。

本を禁じられた世界で生きている普通の人びとは、
スピード狂で、テレビ狂で、空虚な日常を送っています。
それまるで、この小説が書かれた50年以上前の時代から、
現代を風刺しているかのようでもあります。

本が無いという極端な設定にしたことで、
本があることのメリットがわかるようになっています。
また、本のメリットが意味すること、
たとえば、暇ってものが大事だよ、という問いかけがありました。
ここでの、「暇」は「退屈」とくっつかない「暇」のことです。
考える時間、感じる時間、
いやいや、ぼーっとする時間でもいいでしょう、
それはそれで創造性につながりますから。
そういった「暇」を、
現代の騒がしさやスピードが隅に追いやろうとしている。
そんな時代の相のスケッチのように読めました。

文章は、きっと地の文章が英語的すぎて
翻訳しにくい箇所があるのだと思いました。
ごつごつしていて、読みにくさもありますが、
勢いと、強いイメージに基づいて書かれていますから、
ぐいぐい引っ張っていく、言葉にする以前のパワーがあります。

聖書が引用されていたり、
いろいろな著述を残した偉人達の名前や引用があったりしました。
そういうところ、情報小説としての要素を満たしてもいるんですよね。
僕は書き方を学ぼうとしても読んでいますから、
そういうところ、なるほどなあ、力入れてるなあと感じました。


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