まっしゅ★たわごと

街歩き、建築、音楽、フランス、それに写真の話題を少々

ショスタコマニア達の熱き想いと裏切りの拍手!!

2007年12月02日 22時35分32秒 | 音楽

 

三週間振りに再び日比谷公会堂の前に立つ。待ちに待ったショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト2007」である。今回の演目は「交響曲第4番」!そう滅多に演奏されることのない大曲である。前回の横断幕の位置が違うので「アレ?」と思ったのだが、本来横断幕のあった場所には・・・

 

 

NHKの車両が止まっているではないか!しかも、開場すぐに入場すると、モギリの前でカメラが回っていた。(私が通過したとほぼ同時にカメラが下ろされたので、タイミング的には私の部分はカットされている可能性が大きい)

 

 

入場口の前ではお馴染みのサンドリヨンが店を出していたので、「ロシアのシンデレラ」の他に、「ロシアのアダムとイブ」「ロシアのピロシキ」「ロシアのロマノフケーキ」を購入してみた。翌日会う知人のために「ロシアのシンデレラ」をもう一つ余分に購入したので、しめて4200円分も購入してしまった。ちなみに演奏会代は3000円である。

 

今回の演奏者である東京フィルハーモニー交響楽団を聴くのは初めてでよくわからないが、第4番をヴィジュアル的に堪能できるだけでもいいと思っていたので大して期待していなかったが、想像以上に良い演奏だった。下手するとサンクトペテルブルグ交響楽団よりも上手かったかも知れない。何よりもミストーンの回数の少なさは圧倒的だった。

 

というわけで、今回も演奏順に感想をつらつらと書いてみることにする。

 

第1楽章の冒頭3小節で「まともかも」と思い、4小節目5小節目で安定感と安心感を得て、6小節目以降のパッセージから一気に引き込まれて行った。掴みはほぼ完璧である。580小節目の練習番号63からヴァイオリンによって開始されるPrestoは本当に見物であった。それまでも、コンマス氏の動きは激しかったのだが、ここからはそれに輪を掛けた激しさで超絶技巧的に奏される16分音符群。

 

いやあ、もう凄いの一言、合いの手で一瞬だけ入るチェロ、更に順次加わっていくセカンドヴァイオリン・ヴィオラ・チェロの方々が「総・鬼の形相」で弾きまくっているのである。一連のパッセージが終わったあとのコンマスの肩は上下に揺れていたので、相当息が上がっていらっしゃたのではないかと思えるほどの気迫が伝わってきた。

 

それから、木管楽器・金管楽器・パーカッションが加わってドンちゃん騒ぎ状態に突入したときには、ホール全体に巨大な音の渦が膨張し、まさにはちきれそうなくらいに観客の我々を圧倒していた。すごい、凄すぎる!こんな音の塊は未だかつて聴いたことがない・・・。

 

終楽章、1020小節目の練習番号238番から繰り広げられるコーダ部分で、私の目は二人のティンパニー奏者に釘付けになってしまった。なぜなら、同じパッセージを演奏しているのに二人の動きが全然違うのである。ただ「同じパッセージ」とは言っても第2奏者は第1奏者の1拍後ろをついて行っているのだけれど、本当に本当に「同じ音形を打っていたのだろうか?」不思議でならなかった。

 

そして、事件は最後の最後に起きた・・・最後、ハープと弦楽器による雲のような和音の上でチェレスタが妖しく跳ね回るその部分。跳ねるのを止めたチェレスタは2回だけ、軽くステップするかのように上昇音形の跳躍を試みて終わるのだけれど、ちょうどその最中(さなか)!本当にもう絶対ありえないシチュエーションで・・・

 

パチパチパチパチ!

 

と、まだ持続音が鳴っていて、指揮者の手の動きが明らかなのにも関わらずだ!!

 

その刹那、まるで拍手を打ち消すかのように観客の独りが言った。

 

シッ!!

 

ショスタコファンの総意を表したかのような鋭い音であった。

 

拍手に追随するものは誰も居なかった。

 

たった一人の悪意のために、緊張の糸は切られ、NHKの放映も打ち切りの可能性が出てきた。そして、ショスタコファン全員を敵に回した瞬間でもあった。この出来事は、後に必ずや「日比谷公開堂12.1」の愚行としてショスタコファンの間で後世まで語り継がれるであろう。

 

終演後は、mixi繋がりの有志5人で新橋の居酒屋に繰り出す。上は50歳の方から下は30歳の方まで、「ショスタコーヴィチを愛して止まない」(または、「愛して病まない」か?)男たちがショスタコ論を繰り広げた。特に上の世代の方々はリアルタイムでショスタコーヴィチの晩年の新作と向き合っておられて、もちろん日本初演にも立ち会っておられたりしているのがものすごく印象的であった。

 

ソ連邦時代にモスクワに行かれたり、ロシア語の新聞記事の切抜きを披露していただいたり、世界に何冊しかない自筆譜面を持っているとか持って無いとか、そんな話になったり、それまで、無縁な方法でのショスタコービチの愛し方を知った瞬間でも会った。

 

しかも、酒が入ってくると、1人が、私の聴いたことが無い外国人の名前を出すと、私以外の3人が「うんうん」と相槌を打ったり、作品名ではなく作品番号で会話が進められたりと、相当コアな歓談の時間を過ごすことができた。

 

 

ショスタコーヴィチ好きに悪い人はいない!そう思った夜であった。

 

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7 コメント

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はじめまして (まっしゅ)
2007-12-08 16:33:19
そうですか、他の方のレポを読んでみても
11番の拍手もイマイチっぽい感じですね。
個人的には11番も、それが圧倒的な「警鐘」
となる演奏であれば、一瞬息を呑んで拍手
が出来ないのではないかと思います。

全ての元凶は4番のときのアノ輩ですね。
まあ、拍手がどうよりも、演奏が良かった
のであればそれで良しとしましょうかね♪
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Unknown (ueki)
2007-12-08 00:19:04
まったくあの拍手には唖然としました。
次の回の11番の最後で、いったん始まった拍手が
フェードアウトしたのはどう考えても、みんな
あれのトラウマがあったとしか思えませんね。

私は指揮者が腕を完全におろす前には拍手はしない主義ですが、
まあ11番みたいな終わりかたなら許容範囲だと
思ってます。
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Unknown (まっしゅ)
2007-12-05 22:14:34
supikamettiさん
そお!ニヤニヤでないとイカンのですよ(笑)
チャイ5残念でしたね。第一楽章のクラリネット
と言えば、いちばんの泣かせどころなのに・・・。
そちらの国でも、そんな不敬な輩がいるんですね??
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Unknown (supikametti)
2007-12-04 18:57:53
4番かあ、いいなああ。やっぱりショスタコはニヤニヤできないといけませんよね。

無粋な拍手、敵ですね。この話で思い出したのですが、私もこないだ行った演奏会で、チャイ5の一楽章のクラリネット・ソロの中盤で、携帯電話が鳴ったんですよ。ほんとにほんとにがっかりして、一瞬泣きそうになりました。
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ショスショスタコタコ (まっしゅ)
2007-12-03 22:23:04
naokoさん
あは!私も途中で嬉しくて嬉しくて
途中からニヤニヤニヤニヤしてました。
きっと、他にもそんな人はいっぱい
いたはずです。
もちろん指揮者のミッチー氏もそんな
ニヤニヤさんの1人だと思います。

daifukuさん
あはは!『お前、間違っても行くなよ』
と自分に言い聞かせるように書きました。
ほんと、放っておいたら糸が切れたタコ
のように、東京のタコに行きかねない
ものですから(笑)
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Unknown (daifuku)
2007-12-03 01:57:22
お疲れ様でした。いやー、ホント楽しい時間でしたね。
mixiの「お待ちしてます」は半分冗談ですからお気になさらずに(笑)。
また上京されることがあれば是非お会いしましょう。私も文楽を観に大阪へいくこともあるので(年に一度あるかないかですが)その時はご連絡いたします。
あと2回、まっしゅさんの分も(特に12番!)しっかり聴くつもりですので、ご報告させていただきますね。
ではでは。

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Unknown (naoko)
2007-12-02 23:57:58
ほんと、楽しい演奏でしたね。
途中はなんだか嬉しくて嬉しくて、
歓喜に満ちた顔で聞き入ってました!
しかも、まわりをキョロキョロ見ちゃいました、
同じ顔して聞いてる人がいないかと(笑)

最後のあれだけは、、、何しにきたんでしょうね(ノ_-;)
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