知人が出演するというのと、会場が中野であることでとりあえず行ってみた。(正直そんなことでもなければ足を向ける理由は私にはなかった)
大蔵流五家狂言会・・・うーん、大蔵流も五家もよくわからないまま、だけれど、一応演目から簡単なあらすじだけは頭に入れて観劇に望む。以前、手塚治虫のブラックジャックのあるお話を狂言に取り込んだ勘当息子というのは見たことあったが、それきりだったので多少の構えもあった。
ところがどうだ。想像していたものと全然違っていて、とにかく展開がスピーディーでテンポよく、しかも古典的な(そりゃ古典芸能なんだもの!)笑いなのに、なぜかクククっ、ヒヒヒっと思わず笑ってしまう不思議な要素を含んでいた。
演者たちの声はよく通り、姿勢はすこぶる良く、身のこなしが軽い。表情は豊かで、言葉は少し古いが、集中して聞けば何を言っているかわかるし、それがわかると物語も終わり方もすごく軽快に見え、思わず拍手をせずにはいられないことに我ながら驚いた。
これまでクラシック音楽や外国のPOP音楽のステージは何度も見ているが、狂言会館での鑑賞というのも初めてで、入口の雰囲気、ホワイエ(?)の雰囲気、お客さんの雰囲気、それぞれが独特で面白いのである。
今まで食わず苦手(少なくとも嫌いではなかった!)の分野だと勝手に決めつけていたが、これはもしや新しい世界への扉を開いてしまったかもしれない。先日訪れたGINZA SIXの地下3回にある観世能楽堂でも狂言の舞台が催されることもあるようなので、機会があったら是非訪れてみたいところである。
ちなみにこの建物、品があって1960年代後半くらいの有名な建築家さんの隠れた名建築かなと思って検索してみたら、大江宏氏の1960年の作品なのだとか。そんな建物が中野にひっそりもあることも驚きだが、そんな風情のある建物で観劇できたことも私にとってはプチサプライズであった。