経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

中国経済への疑問

2009-12-24 00:12:56 | Weblog
       中国経済への疑問

 中国の経済成長率は平均10%を超え、昨年のリ-マンショックにもかかわらず今年も8%前後と予想されています。経済成長は約20年間、この高度の数字を維持しています。1960年から10年間の日本の経済成長は平均10%で世界の奇蹟と呼ばれました。なぜ中国の経済は長期間にわたり、こんな数字を出せるのかと、私はかねがね疑問に思っています。最近ある本を読んで私の疑念はかなり解けてきたようです。書物は、「中国外資導入の政治過程、下野寿子、法律文化社」です。研究論文のような本です。以下この本の内容を参考にしつつ、中国経済の特質について考えてみましょう。
市場経済への移行以来、中国経済の展開は三段階に分けられます。1965年から10年間続いた文化大革命は中国経済を疲弊のどん底に突き落とします。この動乱(一種の内戦です)で約1000万人が死んだと言われます。大革命の指導者である毛沢東夫人江清以下の4人組を逮捕し、文化大革命を終わらせて、華国鋒体制が出現します。彼の10ヵ年計画は、日本他の先進国から借款を受け、それで中国国内の産業を起こし、輸出を増加させ、合わせて内部経済を向上させるという、輸入代替政策に近いものでした。この企ては完全な失敗に終わります。中国の生産物は輸出できず、特に日本からの輸入が激増し、中国は深刻な外貨不足に襲われます。政治的対立で華国鋒は失脚し、小平体制に代ります。この段階でも小平体制は万全ではありません。国内は新旧両派に分かれます。走資派と悪称された小平派は、あくまで毛沢東主義を貫いて純粋な共産主義体制を維持しようとする保守派に、強く牽制されます。
 重大な転機が1885年のプラザ合意です。円高で輸出力の低下した日本は、賃金の安い東南アジアに企業の一部を移転させ、新しい経済体制を構築しようとします。中国はこの経過をじっと見ていました。繁栄する東南アジア(アセアン)に遅れを取るのを恐れた中国政府は外資導入に踏み切ります。天安門事件の前後からです。始めは沿岸部に経済特区を作りましたが、この政策は伝えられるほど上手くは行かなかったようです。特区の周辺を囲んで他の地帯と隔離し、第二国境線を張ったにもかかわらず、生産された物資はほとんど物不足の内地へ流れます。
 外資導入の最終段階は次のようになります。中国は先進国の企業が中国国内で活動する事を許す。外国企業は資本と技術を全面的に中国国内に持ち込む。輸出産業ほど優遇される。外資企業があげた、利益(もちろん純利)の35%は中国が取る。賃金は中国国内の人件費の1.2倍とする。中国の国内企業に技術を提供する企業ほど優遇する。
 要旨はこういうところです。このような体制が整ったのは1990年代初頭からです。日本の通商白書によれば1992年から中国の外貨は増加します。激増と言ってもいいでしょう。そして外貨の60%は外資系企業が稼いでいます。現在でもこの傾向は変わりません。つまり中国は外資系企業の資本と技術を100%利用し、自分は低廉な労働力のみを提供し、外資から、利潤と賃金を通じて利益を吸い取り、国内の資本を充実させ、発展してきました。これなら提供される外国資本がある限り、経済成長は極めて容易です。貸し座敷経済です。貸し座敷に外国企業を丸ごと誘致し稼動させる。外資からいえば、直接投資と言います。
 仮に中国が、かって日本が歩んだように自力で産業革命を遂行すればどんな図が描けるでしょうか?輸出が増加すれば、技術レベルが同程度と仮定して、輸出先国の企業との苛烈な競争状態におかれ、輸出は頭を打ちます。輸出を増加させるためには、国内の賃金を抑えねばならないので、内需は減り、購買力は低下せざるを得ません。国内でインフラを整備し、民間を裕福にして、経済力の基盤を安定させることがなかなかできません。また獲得した外貨を円(例えば)に変えて国内に撒き散らせば、貨幣量は増え、物価と賃金は上がり、競争力は衰えます。逆に内需を増やし、国内の購買力を高めようとすれば、賃金を上げなくてはなりませんし、輸入も増加させねばなりません。国際競争力は減退し、外貨不足になります。輸出がある程度まで増加するとストップし、輸入が増えます。輸入が増えて外貨が減れば購買力は自然に落ち、再び輸出主導に移行します。1955年までの日本経済はこのようないたちごっこでした。この壁を突破したのが技術力です。相対的賃金の上昇と外国産業との競争は、より安くより良質な製品の生産によってのみ克服されました。
 中国経済には日本のような苦闘の過程がありません。技術と資本を全面的に外資企業に持ってこさせ、自分は安い労働力だけを提供し、輸出を増加させ、外資の利潤を吸い取り、外貨および国内資本を増加させます。幸か不幸か中国には辺境(生活を向上すべき貧困地帯)が無限と言っていいほどあります。この状況が続く限り経済は成長し続けます。中国経済の実態はこのようなものだと、私は思います。
 中国経済が以上の過程を維持するためには、条件があります。それは外資に対して中国の官民が団結する事です。ばらばらでは外資に買い叩かれます。元来中国は不安定な国です。国内での騒乱は年5万件ともそれ以上とも言われています。国共内戦、大躍進政策、文化大革命で総計5000万以上の人間が殺害ないし死亡しています。その後遺症が現在の世代に引き継がれていないはずはありません。加えて非漢民族との摩擦があります。不安定な国内を引き締め、外資に対して譲歩せず、徹底して外資から利潤を吸い取る(搾取と言ってもよろしい)ためには、国家による民間経済への干渉と統制そして締め付けが必要です。言論の自由などはもってのほかです。中国の権力構造は複雑です。少なくとも明示された選挙体制は存在しません。天安門事件は起きるべきして起こった現象です。国内の矛盾を外にそらすために、排外的態度も必要になります。数年前の反日騒動はその一環です。対外膨張と領土を巡っての紛争も必至です。
技術はすべて外国依存となると、自ら開発する態度は不要です。技術を自らは創造せず、もっぱら模倣と盗作を通じて獲得する、という事になりやすくなります。官憲による民間への干渉が多い事は、知的財産権の侵害を促進します。極端に言えば中国人はすべてなんらかの形である種のスパイとみなされても仕方ありません。中国公安当局に指示されたその種の行為を断れる人は稀でしょう。
多くの人は、中国経済は共産主義に市場経済を接木した矛盾に満ちたものだと、考えていますが、以上のように考察すると中国経済の現状はむしろ必然です。この体制が変わる事はありません。変れば中国経済は崩壊します。
 プラザ合意は先進国の資本が過剰になった証でした。以後日本を始めとする先進諸国は資本を発展途上国に移し始めます。この状況をじっと観察していた中国がいかにも共産主義政権らしく、徹底して自己中心的にこのやり方を導入したのが、中国経済の実態です。もちろん資本過剰になった先進国がそれで生き延びたのも事実ですが。
 私は中国経済について主に考察してきました。しかしよく考えるとインドやブラジルも同じでしょう。通商白書には、インドは内需先行型を踏襲し云々、と書かれています。それ以上の説明はありません。では内需増加のための資本はどこからくるのか?もちろん日本を始めとする先進諸国です。これも中国と同じ、借款より直接投資を重視し、先進国の過剰資本のはけ口になっただけです。この点に関しては以前に、米国の経済学者クル-クマンがアセアンの経済成長を批判した時、言及しています。
 自力で資本を蓄積し技術力を高め、産業を推進させえた国家は日米と西欧のみです。他の諸国は先進国に追いつくために国内産業を発展させようとしました。借款、国内産業の育成、輸入代替、そして輸出という発展系列を想定しましたが、この試みはことごとく失敗しました。20年前のメキシコやブラシルの金融危機が例証です。以後発展途上国は先進国の過剰な資本を、直接投資という形で利用し発展する方向を取ります。両者の経済発展の過程の違いは明記しておく必要があります。
発展途上国あるいは後進国はいくらでもあるのですから、先進国としては資本の売り先を選択できます。両者の間では貸し座敷の家賃を巡って取引が行われることになりましょう。

1 コメント

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ロ-ション夫人おそるべし (バックマン)
2009-12-24 12:43:22

言われるがまま乳首にチムポ押し付けて射精したら、、7万ゲト!(☆Д☆)
何でこんなに貰えたのかどんだけ考えてもわっかんねぇw( ̄▽ ̄;)w

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