白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(24)これが「泣き売」だ(万年筆編)

2016-04-02 17:42:30 | 思い出
     用意するもの むしろ 万年筆 数十本(ただし泥まみれ 水に濡れている)

     人物 子供 
        通りすがりの男

     むしろの上に万年筆を並べて子供がしゃくり 泣いている
     心配した人々が足を止める
     男 立ち止まって

「どうした、坊主。泣いてちゃあ何もわからないだろ おじさんに言ってみな」

(子供口をパクパクする)
(男うなずいて聞いているが)

「何々、お父ちゃんの務めていた工場が火事にあって倒産した・・退職金代わりに水を被った
万年筆を貰った。こんなもの貰ってどうするんだとおっ母が言ったんで喧嘩になってあげくのはて
父ちゃん酒飲んで寝ちゃった 弟や妹がお腹がすいたと泣くんで これを売りに来たがどうやっていいのか
わからなくなって泣いてしまった」

と一気にしゃべる。

(男 万年筆を眺めているが フト気が付いて持っていた手拭で拭いてみる)

「あ、こりゃパーカーじゃないの 百貨店で買えば二万三万する代物だ
(なぜか持っていたメモ用紙に書いてみる)おお これは書きやすい
坊主、幾らでうりたいんだ?」

(子供耳元でモゴモゴ)

「何おじさんに任せますだと・・分かった どうだい皆さん二万三万といったって
泥だらけだ ここは2000円でどうだ 助けてやろうよ」

「おお、みんな買ってやってくれるんかい、ありがとよ、ありがとよ」

「坊主よかったな、渡る世間にやあ鬼はいねえなあ」


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