白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(308)「さようなら とん平師匠」

2018-04-07 08:00:57 | 人物
「さようならとん平師匠」

平成30年4月3日 青山葬儀場にて「左とん平お別れの会」

4月3日は2月24日80歳で亡くなった左とん平師匠のお別れ会だった いつもだったら満開の桜が綺麗な時期に今年はもう葉桜になってしまった桜並木を歩いて青山葬儀場に出かけた それにしても雲一つなくいいお天気だった

祭壇は師匠がCMをやっていた さがみ典礼が全力で作り上げた 「何色にも染まる白」と「どんな形にもなれる水のような青」のトルコ桔梗が6500本 その正面にはグラスを持って笑っている師匠の遺影が大きなパネルに映し出され その両側は師匠の好きだった言葉「笑」と「友」と一文字づつ書かれた大きな楽屋のれんが囲んでいる

それにしても出席者が凄い 
里見浩太朗  水谷豊 北大路欣也 コロッケ 堺正章 井上順 笹野高史 大村崑 伊東四朗 小松政夫 清水アキラ 竜雷太 
多岐川裕美 勝野洋 加藤茶 仲本工事 高木ブー 秋野陽子 熊谷真実 沢田亜矢子 鰐淵晴子 小柳ルミ子芦川よしみ 根本りつ子 
柴田理恵 松崎しげる 野口五郎 貴闘力(彼の焼き肉屋には何回もつれて行って貰った)
まだまだ見逃している方がいるかも知れない
それに師と仰ぐちょっと名前のある役者 全く名もなき役者たちは数知れず 
合計でざっと900人 献花が400本
「上げ底でもいい エキストラをかき集めてもいい とりわけ豪華な葬式を出してほしい」との師匠の願いは叶えられたといってもいい

残念なことは「とんちゃん、はまちゃん」コンビの名夫婦役で息もぴったりの浜木綿子さんが腰痛で来られなかったことだ カセットに吹き込まれたメッセージが流れたとき「売らいでか」の名シーンが浮かんだのは僕だけか

待合室で聞いた大村崑の思い出話
昔花登筐が日活映画(大日本シリーズ)でとん平さんを気に入り「笑いの王国」に入れた
楽屋に入ってきて「おう崑ちゃん」と一言 「崑ちゃん?わしは一応座長やで」というと「崑ちゃんだから崑ちゃんや」と直す様子もない でこっちも腹立つから「とんとん」と言うてやった 
この手の話はいくつもある 
コロッケの芝居を見に来て楽屋を覗いて第一声「モノマネは良かったが芝居はダメだな」とズバッと言われたという
井上順 初めての共演の時挨拶にいくと「順 一緒にやりたかったよ」と言われた
今まで「順(じゅん)」なんて呼び捨てされたことがなかったので戸惑ったがやがて「じゅん」「とんちゃん」となった


戒名 台光院友誉通勝居士

ひょうひょう 洒脱 自然体 こんな言葉が似あう役者でした

最後は全員の献花で幕を閉じた

全員に配られた小冊子の中にあるとん平さんのプロフィールに過去の出演舞台が書かれてある
「売らいでか」「人生はガタコト列車に乗って」「佐渡島他吉の生涯」「三婆」「天切り松」「死神」などの名作に並んで
僕の「ゆうれい長屋は大騒ぎ」「味の家の人びと」と二つも入っているのがちょっと自慢できる

「さよならがあたたかい」とん平さんの声が聞こえるようだった

「吉村、幕引きはこうでなくっちゃ」
振り向くと大きな写真が笑っていた


白鷺だより(299)(300) 左とん平さんのこと(1)(2)も併せて読んで下さい  

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿