拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

愛の二重唱(1:43:15あたりから)

2016-10-30 11:38:04 | 音楽

10代の私にとって、愛の二重唱といえば、椿姫でもオテロでもボエームでもバタフライでもなく、フィデリオ(ベートーヴェン)だった。地下牢で危機一髪の夫を妻が助けた直後に二人で歌う二重唱。客観的にみれば器楽的だし、ごつごつしてる。アマデウス(映画)に出てくるイタリア人音楽家なら「これが愛の二重唱?」と鼻で笑うだろう。しかも、中間部でお互いの名前を呼び合うところなんざあまりにベタで赤面もの(韓流ドラマも真っ青)。モーツァルトのオペラに出てくる欺し合いをするカップルとはえらい違いだ。ベートーヴェンは、やはりというか、コシ・ファン・トゥッテの不道徳さには我慢がならなかったそうな。でも純朴な青年だった私にはこれがとてつもなく色っぽかった。色っぽい、色っぽいと騒いでた。そんなくらいだから当時はまったくもてなかった(って原因は他だろうに)。時代は移り、純朴さのかけらもないおじさん(自分で言うのはよい)になった今(もてなさ加減は変わらず)、モーツァルトはもちろん、古楽もロマン派も、ヴァーグナーもイタリアオペラもなんでも好んで聴くが、いまだにベートーヴェンは、そしてこのオペラは大の好物。リンクしたこの演奏こそ、10代のときの愛聴盤。ベーム(わ、若い)&ウィーン国立歌劇場の1944年の録音(戦火が激しくなる中、緊張の中での録音だったそうな)。二重唱は1:43:15あたりから。レオノーレはヒルデ・コネツニ。貧弱な録音が逆に迫力を生み出している。序曲レオノーレ第3番のすさまじいことといったら。

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