拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

セカンド・オピニオン(楽器の話)

2022-03-27 09:51:24 | 音楽

まとまなフルートがやって来て、まともじゃなかった先住は押入の中の座敷牢で永遠の安息についた。だったら最初からまとめなヤツを買えばいいじゃん、なんでまともじゃないヤツ(格安物件)に手を出すんだ?と言われるが、言い訳はこう。当初、「ちゃんと」演奏しようとは思っていなかった。「一生に一度触りたい」が動機であった。だが、触ってみて、箸にも棒にもかからなきゃよいのだが、なまじ音が出ると上手くなりたくなる。まともな楽器が欲しくなる。そうした理由で座敷牢の住人(牢人)になったものには、フルートのほか、オーボエとA管クラリネットがあるのだが、実は、別の理由で牢人になったものもいる。まずは、ヴァイオリン。私が子供の頃、弾いていた楽器である。数年前にヴァイオリンを再開しようと思い、40年振りにケースを開けたときはまだ健在だった。子供貯金をおろして買ったくらいだから超安物だが、相当使い込んだから体になじんでいていい音も出ていた。ところが、この楽器が壊れてしまった。弦を止めるピンがとれただけだから修理は可能だが、修理費の方が高くつくから牢人になった。だから牢人の中では別格であり、「永久名誉牢名主」の肩書きが与えられている。実は、私の「本業」であるクラリネットのB♭管にも牢人がいる。もともと牢人だったのは高校のとき使っていたクランポン製だった。こちらは、ヴァイオリンと異なり、とてもじゃないがケース(パンドラの箱)を開ける勇気はなかった。開けたら真っ青になっているに違いない。そう心配したからである。だから、再開するにあたり、とりあえず、格安物件をポチってみた。すると、言われているほど悪くない。そこそこ音が出る。だが、リガチャー(リードを止める金具)だけがダメ。どうしよう。そうだ、昔の楽器からリガチャーだけを拝借しよう。古墳内の遺物を盗掘する気分でおそるおそるケースを開ける。おー、青くない!昔のままである(キャサリンの墓を暴いたヒースクリフが、生きてるときと変わらぬキャサリンの遺骸を見たときの気持ちもかくや?(嵐が丘))。で、キャサリンを吹いてみた。おー、鳴る!調整したらどうにかなるかもしれない。そこで、新大久保にある管楽器専門店に持って行ってオーバーホールを依頼すると、ボロすぎて……とは言わなかったが、古すぎて調整不能、新しいものを買え、いいものがあるって話に。だが、いったん家に帰り、クラリネット専門店の存在を知り、そこに持ってったら、「これはいい楽器だ。今は、昔のようないい木がとれない。これを調整して使うべきだ」とのこと。セカンド・オピニオンは重要である。言われたとおりに調整してもらい、キャサリンは目覚めたスリーンピング・ビューティとなり、格安君は試し吹きだけで牢人となった。まあ、この格安君もそうだが、格安だからみんながみんな悪いということではない。わが家で現役バリバリのC管のクラリネットも格安物件だが、これは大当たりである。だが、はずれの確率の方がはるかに多いということが身に染みたから、今後、格安物件には手を出さないつもりである。って、もう、触りたかった楽器はほとんど入手したから、手を出す機会もないだろうが(あっ、トロンボーンが残ってた)。だが、ヴァージョンアップはありうる。以前、酔っ払って銀座を歩いていて、思わず楽器店に入ってヴァイオリンのヴァージョンアップの相談をしたことがある。それ以来、懸案事項としていつも頭の片隅にある。それから、牢人たちも、もし他所のおうちで日の目を見ることを望むのなら、喜んで送り出そうと思ってる。