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「インナー&ハイ」と「アウター&ロー」、どっちが効率いいの?

2011-05-29 14:23:19 | 日記
タイガーさんから、面白いお題を頂いた。

「「インナー&ハイ」と「アウター&ロー」では、どっちが効率がいいのか?」

本来、「ライダー(運動の効率、耐乳酸力など)」「自転車(主に損失の検討)」それぞれに分けて、両面から検討すべきですが、ここでは、自転車の方だけを検討しました。
前提条件としては、「インナー&ハイ」と「アウター&ロー」の時の、「チェーンの抉り量(チェーンの斜め具合)」、「ギア比」を同じとします。


<結論>
「アウター&ロー」が有利。 (あっ、忙しい人は、読むのは、ここまででいいですよ)


<解説>
検討すべき、項目は以下だと思います。
1.チェーンの伝達効率
2.BBの摩擦トルク


まず、チェーンの摩擦トルクです。

私の大好きな本「ロードバイクの科学」から抜粋すると(p46)、
・クランクBBの摩擦トルクやチェンとスプロケットの摩擦により、5%ぐらいの力が失われます
・チェンが斜めになると、チェン張力が増え、接触面の面圧が増え、摩擦力が増え、損失は5.8%に増えます(要約)
・0.8%は、300Wのうちの2.4Wです。タイヤ一本分先行すれば世界が変わる競技者の勝負の場では無視できない
とあります。
…しかしこれでは、「何で摩擦が増えるのか?」が分かりませんね。少し補足しましょう。


まず、チェーンのプレート部から。

チェーンが斜めになると、チェーンのプレート同士が接触します。(あのソラマメ形のリンクを構成している板です)
チェーンは斜めのままFギアに到達し、そこで真っ直ぐに捻られます。

この時のプレートの接触速度は非常に遅く、プレート間は油膜切れの状態から捻りに入ります。
ストライベック線図を持ち出すまでもなく、潤滑状態は「固体接触」(速度が0に近いので)、つまり金属同士が直接摺動しており、摩擦係数は非常に高くなります(0.3を超える程度。良好な潤滑面では0.1程度)。
インナーとアウターでは、インナーの方が、このプレートが動く距離が長くなり、その分、摩擦力、つまり抵抗が大きくなります。
(尚、チェーンラインが真っ直ぐの場合、捻りはないので、摩擦力の発生もありません。)


余談ですが、このプレートの摩擦力を下げる方策としては、「高粘度なオイルをプレートに塗る(=グリス塗布)」「プレートに固体潤滑剤を塗布する(2硫化モリブデン、テフロン処理など)」「プレートの表面硬度を上げる(プレートにTiN、CrN処理など)」が考えられます。

グリス塗布は、チェーンのローラー部の抵抗となるのでイマイチで、固体潤滑剤は効果が持続しないので(潤滑皮膜自身が破壊されることで摩擦係数を下げる)、プレートへの表面処理が一番「現実的」だと思います。
巷では、TiN処理のチェーンは販売されていますが、今後、その更に上をいく「DLC処理のチェーン」も、そのうち発売されると思っています。(当面の問題は、密着性だけ。これも下地処理の技術の進化で解決見込み。10年前は、処理するだけでも難しかったのに…)


次にチェーンのローラー部。
通常ローラーは、スプロケット(チェーンリング)と円筒接触(線接触)していますが、捻られると、点接触に変化します。
ヘルツ応力式に詳しい方なら分かると思いますが、円筒接触での応力(面圧)は非常に低く、低速で潤滑の厳しい自転車でも、油膜維持には有利です。
しかし、これが点接触となると、応力は跳ね上がり、油膜形成は困難になります。つまり、摩擦係数が上がり、抵抗となります。
これも、インナーとアウターでは、インナーの方が傾き角が大きくなるので、不利です。


次はスプロケット(チェーンリング)部。
スプロケットは大きい方が、面圧が小さく(=油膜が形成しやすく)、摩擦係数は低くなります。
「インナー&ハイ」と「アウター&ロー」では、フロント、リアとも「インナー&ハイ」の方が、スプロケットが小さくなります。つまり、抵抗が増えます。
(余談ですが、ロードバイクの科学に「抵抗を極限まで少なくするために、チェーンの歯の角をわずかに丸めたりする人もいる」とありますが、逆に効率が悪くなりますので、やらないように)


つまり、チェーンに関して言えば、すべての面において「アウター&ロー」が、伝達効率の面では有利です。


スプロケットもベアリングも「大きく、太く」が面圧を下げる基本ですが、最近のナローチェーンはこの流れに逆行しています。
意外と、11速より、10速(又は9速、8速)の方が、実使用上は「効率のロバスト性」が高いのかもしれません。



BB部の摩擦トルクはどうでしょう?
インナーとアウターでは、インナーの方がBBに近く、BBシャフト受けるモーメント力は小さくてすみます。
ここは、インナーの方が有利なのですが、BBはベアリング支持されており、その摩擦係数は、0.002レベルです。これが0.003になったところで、先のプレートの摩擦係数:0.3とは100倍も違います。
つまりここは、インナーの方力学上は有利ですが、「その差は、無視できるぐらい小さい」と言えます。
(余談ですが、個人的にはアウターとインナーは順番を逆にすべきだと思っている。…えっ、カッコ悪いって?)



よく、気合の入った先人は「アウターを踏め!」と渇を入れますが、これって、意外と工学的にも正しい選択なのかも。

ロードバイクの科学からすると、今回の差は「0.8%程度」となるようですが、尊敬すべきは、事の発端のタイガーさん。
通常、人間の感覚では、2~3%が、その差を感じ取れる限界で、よく訓練された人では、検知能力は上がるようですが、まさか0.8%を検知するなんて…。
恐るべし、タイガーさん。



今日はここまで。

















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2 コメント

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すごい! (タイガー)
2011-05-29 18:58:07
早速有難うございます!

さすがMr.Hさん!
的確な答えを頂ける事は想像していましたが、かなり専門的な分野からの分析結果もご教授頂きまして、ちょっと感動してしまいました!

私はこの手の話は興味があるのですが、如何せん専門ではなく、今回のこの話も何回も読み返さないと理論を理解するのは難しいですが、ざっくりと自分の感覚が間違いではない事が理解できて、非常にスッキリした気分です。

私の方も、これは当然ブログネタにさせて頂きます!

これからもくだらない質問をすることもあるかも分かりませんが、どうかよろしくお願いします<(_ _)>
Unknown (Mr.H)
2011-05-30 07:06:14
実は、チェーン周りは前から気になっていて、いつか「最適なチェーンオイル粘度」を算出しようと企んでいたんですよ。(例えば、粘度30cStが最適で、これは5w-30の20℃の粘度に相当する…とか)

市販されているチェーンオイルも粘度がバラバラで、一体なにが正しいのか分からなくなってきているので、ちょっとここで整理しとこうかと思って。

何れにしても、この手の話は大好物です。

むちゃぶり、くだらない質問、空想話、なんでもOKですので、またお題をくださいな。

…いや、でも分からんときは、ギブアップしますけどね。

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