まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

「Mr.100mSv」 福島赴任

2011-07-14 08:07:27 | 生老病死の倫理学
あの山下先生が福島に赴任されるらしいですね。
私が参加しているあるMLに、東本高志さんという方が昨日投稿されていた記事が面白かったので、
ご本人の許諾を得てここに転載させていただきます。


   あるひとりの長崎市民との会話から〈山下俊一〉という「権威」について考えてみる
     ~「山下俊一氏が福島県立医科大の副学長に就任」という報に接して

放射線の低線量被曝について「年100ミリシーベルト以下ならだいじょうぶ」という流言飛語(注1)を
「長崎大学医学部教授」、また「長崎市出身の被爆2世」、また
「チェルノブイリ原発事故の医療支援にも長年携わってきた長崎と日本における被曝医療の第一人者」
などという肩書きと「権威」の名の下に
「避難」というあてどのない難民の旅を余儀なくされている福島の原発被災者に発して、
一躍時の人となり、「フクシマの笛吹き男」、また「Mr.100mSv」などという異名もとる
(もちろん、批判と揶揄の対象として)あの長崎大学医学部教授の山下俊一氏が「請われ」て
福島県立医科大の副学長に就任するというニュースが原発関連記事のはざまの中で流れています。
わが耳を疑い、やりきれない思いでこのニュースを聴いた人も少なくないはずです。

■県立医大:副学長に山下氏 放射線健康管理、指導や人材育成
毎日新聞 2011年7月9日 福島版

「山下氏は福島第1原発事故を受けて、
今年3月から県の放射線健康リスク管理アドバイザーを務めている。
県立医大は『今後、大学が県民の放射線健康管理の拠点となることから、
指導や人材育成に必要と判断した』と説明した。」

■長崎大:山下教授、福島医科大副学長に15日就任 被ばく医療の人材育成
毎日新聞 2011年7月9日 長崎版

「片峰茂・長崎大学長は8日の会見で
『本大学の被ばく医療の絶対的リーダーを出向させることは痛いが、
長崎・広島が六十数年間研究、蓄積してきたものを福島で生かすことは科学者として当然。
大学を挙げて支援していく』と話した。」

山下氏の「年100ミリシーベルト以下ならだいじょうぶ」発言の非科学性については
科学者、医学者からの科学的、医学的観点からの批判も多く、
私ごとき理科音痴の徒がここで改めて多言を費やす必要もないでしょう(注2、注3)。
ここでは私は、上記の世間では一応長崎を代表する知識人とみなされるだろう
片峰茂長崎大学学長の「本大学の被ばく医療の絶対的リーダー」(毎日新聞 同上)
とするがごとき軽薄にして浅薄な(「権威」を唯一の評価尺度とする、というほどの意味)
山下氏評価(注4)は、被爆の地、長崎の「戦後」において、
いったいどのような道筋を経て醸成されてきたのか。また、機能してきたのか。
ごく最近あるメーリングリストを通じてひとりの長崎市民と交わした「往復書簡」
(と、一応言っておきます)の一部をご紹介させていただくことによって、
その「権威」なるものの正体、その「権威」なるものの愚かしく着到すべき地点について、
私の思うところの所感を述べてみたいと思います。

そして、その私の所感を述べるためには、
長崎からのあるひとりの市民の臨場感のある「報告」という前提が欠かせません。
あるひとりの長崎市民と私のやりとりを「往復書簡」として紹介させていただくゆえんです。

*あるひとりの長崎市民の文章の転載についてはご了承をいただいています。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●[あるひとりの長崎市民 第1信](2011年6月5日付)

(前略)
長崎では約一ヵ月後に迫った8月9日、原爆投下の日を前に地元マスコミがどんな特集を組むか、
準備を重ねています。その中には全国放送されるものもあります。

今日、長崎のローカルテレビの記者と話していて、その記者がこう話していました。
「今年の原爆忌は原発問題を抜きにしては報道できない。長崎大学の山下教授を出したいけど、
出したら、ウチの社がたたかれるから出せない」

これ、すごいことだと思いませんか?
もちろん全てのマスコミがそう思っているとは限りませんが、
私たちが山下教授を問題視することで、
メディアが彼を出すことを躊躇しています。

変化は確実に起きています。

松本復興省の言動は憤りを通り越すものですが、
「書いた社は終わり」と言われてもメディアが報じたことで彼は辞任に追い込まれました。
国や電力会社が赤信号で通せんぼしていても

赤信号 みんなで渡れば怖くない!

今まで書きたいけど書けなかったというメディアの人たちも青信号にする日までがんばってー!



●[東本 第1信返信](2011年6月6日付)

Aさん

長崎市からのAさんならではの臨場感溢れるご報告、
敬意と興味をもって拝読させていただいています。

ところで標題メールに関してAさんにひとつ質問があります。

長崎のローカルテレビの記者が「長崎大学の山下教授を出したいけど、
出したら、ウチの社がたたかれるから出せない」とAさんに話されたということですが、
そのローカルテレビの記者の話の趣意がいまひとつ判然としません。

その意は、「長崎大学の山下教授を(私(記者)としては)出したいけど」
というものなのでしょうか? 
それとも「長崎大学の山下教授を(ウチの社としては)出したいけど
(私(記者)は反対)」というものなのでしょうか?

もし、前者の意であるとするならば、「私たちが山下教授を問題視することで、
メディアが彼を出すことを躊躇して」いるというご認識はそのとおりでしょうし、
そういう意味で私も一歩前進だと評価してよいとは思いますが、だからといって、
ローカルテレビの記者の話を「青信号」の予兆のように評価するのには少々飛躍があるように思います。

メディアはひとりひとりの記者によって形づくられます。
そのひとりの記者が「長崎大学の山下教授を(私としては)出したいけど」
と考えているのだとすると「青信号」ではなく、
まだまだ「赤信号」といわなければならないように思います。

Aさんは聞いてみられましたか? 「あなた(記者)個人としてはどう思っているの?」、と。
もし、くだんの記者が前者のごとき考え方をしているのであれば
Aさんは「青信号」などと安心せずに、その記者の認識の「赤信号」のゆえんを
彼(記者)ともっと話しこむ必要があったのではないでしょうか?

くだんの記者が後者の考え方をしているのであれば、
たしかに「青信号」の予兆、と受け止められるもののように私も思います
(ひとりの例で大局を判断することはもちろんできませんが)。



●[あるひとりの長崎市民 第2信](2011年6月6日付)

こんにちは、長崎のAです。
外は土砂降りの雨です。皆様の町は大丈夫でしょうか?

> 長崎のローカルテレビの記者が「長崎大学の山下教授を出したいけど、
> 出したら、ウチの社がたたかれるから出せない」

(略)

と語ってくれた記者は、長年原爆報道に関わってこられた方です。

まず、長崎のことを先に書きます。
3.11以降、長崎の新聞やテレビはいっせいに山下教授のインタビューを取り上げました。
それは彼がチェルノブイリで長年研究を続けてきた長崎の被爆者医療の「顔」的存在だったからです。


私は山下教授とは挨拶しか交わしたことがありませんが、「すごい方なんだ」と思っていました。
3月11日までは。

3月11日以降の新聞には、山下教授の「安心安全」「子どもはどんどん外で遊ばせていい」
などのインタビューが載りました。
ん?と思い、ネットでの情報を見、「言ってることがおかしい!」と思い至りました。

ところが、そう思う人ばかりではなかったのです。
被爆者の信頼もあつい熱心な記者たちが、山下教授を批判する意見に
「御大になんてこと言うんだ」
「今まで電気使ってたんだろ」
というブログを書いたり、私がどんなに資料を出して説得しても、まるで壁に向かって話しているように、
受け入れてもらえませんでした。
長崎のメーリングリストでも、批判するのは数人だけ。
一種の山下信仰が覆っているかのように。

私が話した何人もの被爆者もそうでした。
被爆者は山下教授と「長いおつきあい」のある人たちばかりです。
「20ミリシーベルトはおかしいでしょう」と言っても
「ぼくたちは専門家じゃないから」という答え。
悔しい、悔しい思いをずっとしてきました。

そんな長崎だったから、おとといの記者の台詞は、ようやく風穴があいた、という気がしたのです。

私の印象では、「本来なら福島の事故を受けて、
長崎の放射線権威である彼を原爆忌に出すというのは当然どこのマスコミも考えること。
しかしそれを長崎のメディアが躊躇している」というふうに受け止めました。
その記者も、地震の前から山下教授とつきあいのあった記者ですがこう言っていました。

「今までは良かったけど・・教授は今回のことでミソつけたね」。
やっとここまできたのです。

(後略)



●[東本 第2信返信](2011年6月7日付)

Aさん、ご返信ありがとうございました。

山下俊一というひとりの医者(長崎大学医学部教授)が
長崎という被爆の地でこれまでどのような「権威」を自身として矜持し、
また県民から扶持されてきたか。
長崎独自の事情の一端がよく理解できました。
そのような文脈の中での長崎のローカルテレビの記者の言葉であった、ということも。

しかし、「権威」の人は所詮「権威」に躓き、「権威」の階梯を超えられない人なのですね。

山下氏の「年100ミリシーベルト以下ならだいじょうぶ」発言は、
帰するところ【「国」という「権威」に跪拝する】
小「権威」者の「小役人根性」(ドストエフスキー『地下室の手記』ほか)、
その小心ゆえの俗情に求められるように思います。

山下氏の上記発言の論拠は次のようなものでした。

「結論を言うと、どうぞ安心して、安全だと思って日常生活を送ってください。
【なぜなら、国が年20ミリシーベルトと基準を定めたからです。】
私は、個人的には100ミリシーベルトでもだいじょうぶだと思っています。
なぜなら、それ以下の被曝の発ガンリスクは、科学的には証明されていないからです。(注5)」
(池田香代子ブログ『20ミリシーベルト問題 山下教授の論理に乗ってみる』参照)

「権威」というものがいかに愚かしく、馬鹿馬鹿しいものであるか。
現在進行形の「山下教授事件」はその格好の材料を提供してくれているもののように私には見えます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

注1:「流言飛語」とは注2以下で述べる事実をもってそう言っています。

注2-1:ここではひとつだけ100mSv/年以下の低線量被曝の「生物学的影響」について
警鐘を鳴らしている米国科学アカデミーのBEIR-VII報告をご紹介させていただこうと思います。
『電離放射線の生物学的影響に関する第7報告(「一般向けの概要」日本語訳)』

注2-2:なお、上記のBEIR-VII報告(日本語訳)の要点は、
弁護士でNPJ編集長の日隅一雄さんのブログ記事
「枝野官房長官に抗議の内容証明を送りませんか?~あまりに非科学的な安全デマに唖然!」(2011年7月10日付)
で簡潔に紹介されています。ご参照ください。

注2-3:上記の米国科学アカデミーのBEIR-VII報告は次のような記事にもなって紹介されています。
「線量限度の被ばくで発がん 国際調査で結論」(共同通信 2005年6月30日)

注3:放射線の低線量被曝の危険性については下記
「ペトカウ効果について―低線量被曝の恐ろしさ」(CML 2011年7月11日付)についてという記事もご参照ください。

注4:片峰長崎大学学長は下記では山下氏について
「専門家として福島の原発事故による健康影響について一貫して科学的に正しい発言をしている」
などと滑稽にも絶賛すらしています。
片峰学長も山下氏と悲しいかな同類項の悪しき「権威」の人と強く批判されなければならないでしょう。
http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/about/message/katamine/message97.html

注5:この山下氏の発言も真っ赤なうそであることはたとえば注2-3の記事に見るとおりです。



追記として:

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●[あるひとりの長崎市民 第3信](2011年6月10日付)

(前略)
それから昨日、内科医師であり、チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西の発起人である
振津かつみさんの講演会が長崎で開かれました。

「もう二度とヒバクシャが生み出されないことを願っていたのに福島の事故が起こってしまった。
福島の事故はおそらく、皆さんが生きている間は解決しません」と、
時折声をつまらせながら、チェルノブイリでのデータを中心に下記のお話をされました。

「放射能はこわくない。こわいのはPTSDだ、と言っている長崎の大学教授がいるけれど、
チェルノブイリでPTSDが原因で病気が増えたと疫学的に証明したデータは1つも見たことがない」

「長崎原爆の被爆者が、66年たっても様々なガンを発症しているように、
チェルノブイリもこれから。
福島は、1-20ミリシーベルト/年の場所に約150万人が住んでいる。
福島には放射能の津波がやってきたのです」

「これから国や福島は、県民の健康調査はすると思うけれど治療の予算がどれだけ取れるか。
検査はしても治療をしないのではABCCと同じ」

「ICRPの線量限度は科学じゃなく社会・経済的に決めている」

「原爆被爆者が健康手帳を勝ち取ってきたように、
福島でも健康手帳を今後実現させていかなければ」などなど。

会場からの質問・意見では長崎大学の山下教授への批判も出されました。
すると一人の若い男性が手をあげました。
「私は長崎大学で山下先生を手伝っています。
先生は人望も厚くてすばらしい先生です。
youtubeで講演が流れているけど断片的なので誤解をしている。全部とおして見て欲しい」。

会場はざわざわ・・
と、振津先生がマイクを取って
「本人が人望が厚いということ云々ではなく、原発推進に組み込まれていることが問題。
断片的といっても、間違ったことを言っているからyoutubeに流れている。
チェルノブイリでは発生したのが子どもの甲状腺ガンだけと言っているがそれは間違い。
福島の人々に何が必要なのかを考えてほしい」。

会場からは拍手が起こりました。

(後略)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
東本高志@大分
http://mizukith.blog91.fc2.com/



以上が東本さんの投稿記事です。
それにしてもお膝元の長崎ですら仕事を頼みにくくなっているという方に、
こちらから 「請うて」 副学長という大役に就いていただくというのは、
どういう神経なのでしょうか?
かくいう福島大学も日本原子力研究開発機構と連携協定を締結した、
ということを昨日決定事項として知らされました。
原発被災県の最高学府だというのに、みんないったい何がしたいのでしょうか?

コメント (2)   トラックバック (2)   この記事についてブログを書く
« 「白河高校」 大規模講演会、... | トップ | 就活支援サークル Glow ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (えい)
2011-07-14 23:14:48
原発被災県でこのような動きがあるのですね。
何ともきな臭いです。
原発利権絡みの人々が黒幕という想像は飛びすぎでしょうか。
それはさすがに… (まさおさま)
2011-07-15 13:31:09
えいさん、コメントありがとうございました。
たしかにきな臭いですが、さすがに利権云々はないだろうと思いますよ。
利権というよりは、利害の問題として、「原発事故は起こってしまったけれど福島は安全である」
と言ってくれる学者さんや研究機関は、福島にある大学にとっては有り難いのだと思います。
実際、今度の入試でどれくらいの人が受験してくれるかということに関しては、
私も今から戦々恐々としていますので…。
福島で暮らし、福島で働いている者にとって、この 「安全・安心」 問題というのは、
本当に諸刃の刃でとても難しい問題です。

コメントを投稿

生老病死の倫理学」カテゴリの最新記事

2 トラックバック

いざというときの備え「地震対策」 (いざというときの備え「地震対策」)
地震対策についての情報サイトです。よろしければご覧ください。
体にオススメ!酵素 (体にオススメ!酵素)
酵素についての情報サイトです。よろしければご覧ください。