
5/27(土)アトリエセンティオという場所で上演されたOrt-d.dという演劇団体のアトリエ公演に行ってきました。若手俳優による江戸川乱歩を原作とした<乱篇>と夢野久作を原作とした<夢篇>の二本立て公演。私が観たのは乱歩を原作とした<乱篇>です。上演場所のアトリエセンティオは民家の一階にあるこじんまりとしたスペースでした。
演劇を観るのは、実は久しぶりです。15年ほど前はよく小劇場に足を運びましたし、演劇の企画もしていました。ここしばらく忘れていた当時の記憶も甦ってきます。ということで久しぶりの芝居、少人数の観客によるアトリエ公演とはいえ生のパフォーマンスが始まる前は、独特な雰囲気があります。
さて公演内容ですが、期待以上に面白かったです。乱歩の小説『芋虫』『人でなしの恋』『防空壕』を題材にそのテーマを損なうことなく小説の世界を役者の肉体というフィルターを通して見事に表現されていました。
上演される空間は白い壁、そして役者たちも白い衣装と白い仮面を着けています。抑えた照明がモノトーンの世界をほんのりと映し出します。映画を観るまでもなく乱歩となるとどうしてもオドロオドロしく過剰な表現になりがちなのですが、この芝居はシンプルに役者の肉体のみで語ります。色も白の世界、観客が役者のパフォーマンスを通して、それぞれの独自の色をつけていきます。
役者のみがすべてを語るわけですから、その肉体は過剰です。(特に『芋虫』、それを演じた役者の肉体が特に印象的でした。肉体の美ですね。)
そして最後、役者たちが演じた乱歩の世界は、実は一般人が乱歩の世界を演じに来たという劇中劇の構造になっていることがわかる。つまりは“ごっこ”。一般人=夫婦が乱歩“ごっこ”をしに来たということだ。この“ごっこ”は勝手にボクが解釈したのですが乱歩の小説の世界も皆、登場人物が“ごっこ”をしているような気がずっとしていたので、今回のこの芝居の内容はグッとくるものがありました。
本当に久しぶりの芝居。月日がたち演劇とは全く別の世界で生きている私ですが、かつて演劇における先鋭的な企画(絶対演劇)を企てた当時の自分が“うつし世は夢 よるの夢こそまこと”と帰途語りかけてくるのでした。
※本芝居は中々の秀作。一見の価値ありです。まだ間に合う。
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