飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「ある子供」(監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ)

2012-05-21 | Weblog

■製作年:2005年
■監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
■出演:ジェレミー・レニエ, デボラ・ブランソワ, ジェレミー・スガール, オリヴィエ・グルメ

 

ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の「ある息子」を見ている最中、私は韓国映画の秀作「息もできない」をずっと思い出していました。2つの作品はともに、貧しさゆえにどこか道を踏み外しはじめている若者が描かれ、彼らはモラルが崩れているものの、生きていくための虚飾や虚勢を取っ払うと素の本人は心優しい部分を持ち合わせているいい若者なのだということが垣間見せ、ちょっとしたボタンのかけあわせが狂ったことにより一気に転落への道を転がっていってしまう…、しかしその時は既に遅しで取り返しのつかないことになっていた。どこまでも切ない映画なのでした。

 

ダルデンヌ兄弟は、それまでの作品において中心に描いていた親と子という関係の物語から、この映画においては同世代の男女という関係を描いています。青年ブリュノを演じたのは「息子のまなざし」で子役を演じたジェレミー・レニエ、その映画から9年を経ての再びダルデンヌ兄弟作品の出演なので、子供の頃の面影を残しながら、立派な青年になっています。しかし、役柄としては見かけは大人でも実のところ子供のまま、責任感のカケラもない青年の役を演じています。なぜなら産まれてすぐの自分の子供を売ってしまうという暴挙にでるからです。日銭が欲しいゆえに子供を売ってしまう。それも母親の了解なしにです。それを知った母親は卒倒し入院、怒りがおさまらないのは当然でしょうという。あげくは金にこまり引ったくりまで働く…。これではいろいろな面において精神的に未熟なのではないのか?体は大人でも精神的には子供の領域を超えていないのではないか?ということを感じさせるには充分すぎる彼の行動であると思いました。

 

一方、ブリュノの赤ん坊を産んで母親となったソニア(=デボラ・フランソワ)も、2人でじゃれているところを見ていると、子供だなあと感じさせてしまう演技や演出となっていました。彼女も同じく子供のレベルでいるのではないのか?と感じさせてしまうのでした。体を痛めて産んだ子供を売られて、その怒りを爆発させるのですが、それ以前に母親になるという自覚があったのか?赤ん坊を抱きながらタバコを吹かすなんて、私からは信じられない行動に見えました。父親であるブリュノがアホなことをしでかし、警察のお世話になって留置されたとき、面会にきたソニアと抱き合って泣く場面があります。それが大人へと一歩踏み出した瞬間とも見えますし、救いの視線をそこに見ることができます。

 

後悔先に立たず、若気のいたりとはこの映画の話を指してしるでしょうが、そうした状況に追い込まれてしまうのは、根底に流れている<貧しさ>であります。一貫して監督はそうした<貧しさ>を告発しているようにも感じます。と同時にダルデンヌ兄弟の映画を見ているとなんてベルギーは貧しくて治安が悪いのだろうと錯覚と誤解に陥ってしまいそうです。かの国は実際のところどうなんでしょうね?

 

ある子供 [DVD]
ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ
ハピネット・ピクチャーズ

 

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