飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

宵待草のやるせなさ#19・・・「竹久夢二と大正ロマンの世界展」(竹久夢二美術館)を見た

2010-02-12 | 美術&工芸とその周辺
東京・根津にある竹久夢二美術館へ行きました。現在、館では開館20周年記念企画として「竹久夢二と大正ロマンの世界展」を開催中(3/28まで)です。(併設の弥生美術館では「鰭崎英朋展」を開催)内容は、まさに大正時代に活躍した竹久夢二の作品中心に、大正文化や世様を彩ったものなども展示され“大正ロマン”なるものを振り返るもの。この展覧会に合わせて同時に書籍も出版されていて(「大正ロマン手帖」河出書房から)、ついそちちも購入してしまいました。

最近、大正時代に活躍した作家あるいは舞台とした小説や画家らの作品に触れる機会が多いなと感じていたのですが、特に大正時代に興味があるわけではないのです。あるいは、この展覧会で展示されているものが書籍でほぼ網羅されていたから、その本を買ったということでもないのです。一番の大きな本の購入動機は、そこに展示されていたボクの興味を惹いた一枚の写真、当時一世を風靡した女優・松井須磨子が「サロメ」に扮した写真が小さいながらも掲載されていたからでありました。サロメについては一時期、興味と関心を持ってブログの記事を書いていたことがありました。当然、松井須磨子がサロメを演じて人気を博したことは知っています。ただどんな衣装を着て演じたのかがわからない。なかなか当時の写真を目にすることもない。

そこに今回の展示では、そのサロメに扮した松井須磨子の写真が展示されていたのです。人にとってはどってことない野暮ったさも残る古い時代の写真でも、ボクにしてみればこれは興味深い写真。へぇー、こんな衣装だったんだと。ちなみにこのサロメに扮した松井須磨子の写真、本に掲載されているものはサイズが小さくてわかりませんが、展示されていた拡大された写真では、須磨子のアンダーヘアーが衣装からはみ出て写っているようにも見えたのです。別に見えたからといって性的な欲情が湧くでなし、これまたどってことない瑣末なことなのですが、連想として大正時代においてアンダーヘアーが見えるという感覚は一体どうだったんだろうか?何て変なことを考えてしまいました。というのも、今はもう事実上の解禁ということなんだろうけど、ボクの思春期はそうしたものに不自然なボカシがかかっていたわけで…。

余分な話が長くなってしまいました。真面目な話をすると、そもそもボクらは大正時代にロマン(浪漫)なる形容詞がついてもあまり疑問には感じません。むしろその時代感覚を的確に表しているのだろうと古きよき時代を想像します。しかし、ロマンなる言葉で大正時代を表すのは、先程言及した本によると、どうやら最近のことのようなのですね。もっと言えば、ロマンは竹久夢二とともについてきたとも言えそうなのです。つまり、夢二の絵を表するにロマンなる形容詞がついた。その夢二は大正時代を代表する画家、ロマン的な抒情あふれる絵を生んだ時代はロマンに満ちた時代であったという論法にでもなるのでしょうか?確かに、けっしてボクらは大正時代を生きていてその時代の空気を吸っていたわけではないのにノスタルジックに感じることができるのは、明治からの近代化の波を受けて昭和における新しい時代の基礎を作った時間であったのかも知れないと思ってみたりします。

展示されていたものでユニークなというか、今では考えられないような広告も紹介していて、それが面白かったです。例をあげると「特許悪筆矯正器」、これはまるで漫画「巨人の星」の大リーグ養成ギブスに勝るとも劣らぬようなインパクトがありました。広告のイラストを見ると正座して書き物をしている後ろに木製のロボットらしきものがあります。このロボット?が文字を綺麗に書けるよう矯正するものらしい。そんなことできるんだろうか?冗談かマジか、目を疑うような広告です。

それにもう一つ、「時は金なり子供に出来る金儲け」というもの。学校から帰った子供に内職を勧めるもの。幼児虐待のすすめのようなこの広告、貧乏であれば子供の手も借りたいというのはよくあること、小さい頃よくも悪くも家業の手伝いをさせられた大人達も多いと思うが、しかし子供にも人権はある、広告で子供の労働を勧めるというのは、現代では驚きのものと言えるでしょう。

ともあれ、お目当ては実は「鰭崎英朋展」でしたが、期待していなかった分、この展覧会は面白かったと思いました。



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