飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

僕は知らない寺山修司NO.155⇒映画「乾いた湖」(監督:篠田正浩)

2010-01-29 | 寺山修司
■製作年:1960年
■監督:篠田正浩
■脚色:寺山修司
■主演:三上真一郎、岩下志麻、九条映子

寺山修司が戯曲「血は立ったまま眠っている」を書き上げ初演された年に、シナリオを書き、篠田正浩が監督し製作され、そこで岩下志麻がデビューし、寺山と九条映子が結婚するきっかけになった映画です。それは、松竹ヌーベルバーグと呼ばれた新しい映画の波をつくった作品のひとつとされているもの。が、公開当時は酷評されたようである。しかし振り返るとその作品はエポック的なものになる・・・。

映画の登場人物は大学生たち、盛り上がる60年安保闘争を軸に、その学生運動に没頭する者、資産家のドラ息子をはじめ刹那的享楽にふける若者たちが描かれている。作品が製作されたのは1960年、ボクが生まれる一年前。当時の時代の空気、気分など昨日も書いたように当然ながらわからない。だが何かにイラついているのは伝わってくる。溢れるエネルギーをどこにぶつけたらいいのか。それはいつの時代も同じことなのか。

既存の体制・システムに反発するのは若者の特権?といわれたのはもう昔のことになってしまったのか。50年も前になるこの映画が作られた時代と比べて、現代は大不況の中、生活の不安も相俟ってシラケなどを遥かに通りこしたある意味“虚無”さえ時代の空気として感じてしまう。このところの殺伐とした事件などを見ているとそう感じてしまう。いつの間にか何かを問うことが意味をなさない時代になってしまったのではにのだろうか?少なくともこの映画の中では若者達は、イラつきながらも時代の空気の中で躍動しているのである。その中で学生運動にも参加せず、遊びに熱中する連中にも一線を引いてクールにいる下条の台詞が印象的だった。

 “デモにいくやつはみんな豚だ。
  豚は汗かいて体をこすりあうのが好きだからな。
  豚には自己主張もない。みんな同じ鳴き声しかないんだ。
  豚の鳴き声を教えてやろうか。
  豚はな、豚はブー、って鳴くんだ。”

彼の部屋にはヒットラーやカストロなどの政治家とヌードの写真が貼ってあり、ダイナマイトを手にしてテロを決行しようとする。彼は「血は立ったまま眠っている」に登用する灰男に通じるものがあるのかもしれない。

“”部分「寺山修司全シナリオⅠ」(フィルムアート社)から引用

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