飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

ほとばしる魂@ゴッホNO1・・・「ゴッホ展」を見た

2010-12-24 | 美術&工芸とその周辺

国立新美術館で開催していた(12/20で終了)「ゴッホ展」を見てきました。ボクにとってはこれで過去に開催されたものを入れて3回目となるゴッホの展覧会です。よく言われるようにゴッホは日本人が好きな画家の一人、ボクも例外にもれずその一人です。最初にゴッホは、いいなあと思ったのは、いつの事だったかは忘れてしまったのですが、ナントカ美術館展と銘打たれた展覧会を見に行った時、ゴッホの作品も1~2点展示されていました。それは他の画家の作品と比べると小さな作品であったと記憶しています。しかし、絵の前ではなくかなり離れたところから異様な存在感(強烈なオーラを放っていると言えばいいのか)を持っている絵があって、あれは一体誰が描いた作品なんだろう?と思って絵の前にくとゴッホの絵というキャプションがあったのです。ちなみに他の著名な画家の絵も展示されていたのですがそれを見ても同じような感覚はうけませんでしたし、同じような経験はしたこともありません。かなり前のことなので、どんな絵だったのかは忘れてしまっているのですが、ゴッホの絵が他の追随と許さないくらいのすごい存在感を持っていたということだけは覚えているのです。そんな展覧会へ行ってもなかなか味わえないような体験を与えてくれたゴッホは、ボクの中では別格の画家として記憶されることになったのです。

 

今回の展覧会にはゴッホ以外の画家の作品が展示されていたのですが、ほとんどが彼のものなので比較するということは難しいのですが、実際の絵の前に立つと異様なまでの存在感があったことは間違いないと感じました。それはけっして画集などの写真からは伝わらないゴッホの魂のようなものです。長い歳月を経てもそのようなパワーを持っているのは驚きでさえあります。ゴッホの絵は写実的なのですが、ゴッホのフィルターを通しているので具体的な事物や人物が描かれていても、最早、抽象画の感覚に近いと言ってしまうのは言い過ぎでしょうか?ボクにはそう見えてきてしまうのです。

 

今回は展覧会で印象深かった絵についてボクの感想をかきました。

 

 

「アルルの寝室」

 この絵と対面するは2回目であります。単なる自分(=ゴッホ)が住んでいた部屋を描いただけの絵なのにこうも強烈に存在感があるのは何故なんだろうと。奥の壁は床面が水平なのに対して天井が斜めっています。つまり空間が歪んでいるということ。でもこの異様なまでの存在感はそうしたことだけでは語れないようなものを持っています。全体的にのっぺりと平面的で同じ色のベタ塗りのような感じは浮世絵の影響?ボクはベッドや机、椅子などは確かに日常生活に使用しているんだなと感じるのですが、部屋のドアなどを見ているとこの扉は開くのかしらん?なんて思えてくる。代表作の一つだけあって実に存在感のある絵です。展覧会場にはこの部屋を立体的に再現したものが作られていました。思ったよりも狭い、そんな印象を持ちました。

  

 「ゴーギャンの椅子」

人が描かれていない肖像画です。去年だったか、ゴーギャン展を見に行ったことを思い出すと、それまで画集などで見るゴーギャンの作品はあまり興味を引くものではなかったのですが、実際の生の絵をみると、一気に引き付けられてしまいました。やはり名を残すだけの作家なんだなと。ゴッホは椅子にロウソクと本2冊をおいて描いています。それが何を意味しているのかわかりませんが、アルルでゴーギャンが来るのを待ち続けたゴッホ、あるいはトラブルで自分の耳を削ぐことになってしまったゴッホ、彼は見えないゴーギャンをどのように思っていたのでしょうか?

 

 「種まく人」

この絵も初めてではなく2回目の対面。とにかく真っ黄色のでかい太陽がインパクトを与えます。ゴッホにとっての太陽はかくも大きなそんざいなのかと。それに、画面を2つに割る一本の木、この唐突な構成は浮世絵的な構図の影響を受けているとも言われています。確かにそれは浮世絵を意識して描いたに違いありません。構図もさることながら、なんとなく木の雰囲気が西洋的というよりは日本的な感じがしませんか?ちなみに、絵の最前列にあり画面を横切る大きな木や暗い色で描かれた種まく人、真っ黄色のでかい太陽によって見る方の意識は、そちらにいってしまうのですが、注目すべきなのは空の色は黄緑で、雲はなんとピンク色をしているんです。ゴッホは大いなる自然を意識していたのですが、一体その自然とは、ゴッホにとってこんな風に映っていたのでしょうか?この絵を見ていると精神が研ぎ澄まされ精神が集中し凝縮していっている感じがモロに表現されているかのようで、目が釘付けになってしまいます。

 

「サン=レミの療養院の庭」

 

ゴッホが精神を病んで入院し療養した病院の庭を描いた絵ですが、ボクはこの絵は、感覚的でうまく言えないのですが今回の展示された作品の中では1、2を争うほどの何か胸に訴えかけてくるようなものがありました。その感覚は何かというとよくわからない、何故かワサワサとしたこちらの気分を揺り動かすようなものなのです。それはまた同時に切なくなるような感情も呼び起こされます。プラスとマイナスが渾然一体化したような雰囲気…。この言葉にできないような気分が揺り動かされる感覚はボクにとってゴッホの大きな魅力の一つであるといえます。

 

 「アイリス」

ただ花を描いた作品なのですが、実際に絵を目の前にすると写真ではとうてい想像できない存在感を持った絵です。ボクは今回のブログの記事では、<存在感>ということばを比較的多用しているのですが、この作品もその存在感という言葉がピッタリの、いや、それしか浮かんでこないような、そんなパワーを持った絵なのです。花の絵にすぎないのにです。無視できない、絵の前に永く留まってじっくりと作品をみたい、絵を味わいたいと思わされる作品なのです。またこの絵は、どこか琳派の絵を見たときのような洗練性も持っているようにも感じます。とにかく黄色と紫(青)の対比が眩しく力強い。

 

 「灰色のフェルト帽の自画像」

見様によっては狼男に見えなくものないゴッホの自画像であります。筆によってキャンバスに叩きつけられた絵の具はまるで映画に出てくる狼男の毛並みそっくりと思うのはボクはだけなのでしょうか?それは点描画にも見れるようなタッチからなのですが、その思い詰めたような、そこしれない意志が裏側にあるような、仮面が崩壊していくような、といろいろな風に見えてくるこの絵は、ゴッホ以外の点描画を作風とした画家とは一線を画しているのです。

 

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