p3ぶろぐ おかわり : 糸井正和経済経営研究所

金融・経済・経営の幅広い分析をお届けします。身近な路地裏経済から陰謀渦巻く国際戦略まで、様々なハナシをお楽しみ下さい。

スパコン論争に思う

2009-11-23 23:45:00 | 企業・産業
民主党による“事業仕分け”パフォーマンスによって打ち切りが言い渡された事業のうち、スーパーコンピュータ開発事業の扱いが賛否両論、波紋を呼んでいます
打ち切り反対派は、モノ造り国家としての技術開発投資の象徴として、この問題を取り上げています。
逆に言えば、よく言われる“世界一であること”の意味とは、象徴的なものでしかないと思うのです。
世界一のスパコンの半分の能力のものを、同じコストをかけて複数台、複数の計算センターに導入する方が、科学計算の需要を満たすのには適当でしょう。科学技術全体の発展を考えるのなら、その方が効果的でしょうし。
スパコンに関する技術開発を支援するなら、この11月のランキングでは世界一の座を譲ってしまったものの、それまでは世界一のスパコンであったIBM製“Roadrunner”採用された“Cell”に続くMPU開発とか、クラスタ技術開発に向けた方がいいのではないでしょうか。
それもできれば、ベンチャー企業支援の形にして、企業としてより高い成長率を実現するモデルを作り上げることが望ましいと思います。
というのも、コンピュータのように高度に標準化された製品の製造は、人件費の高さによって価格競争力の点て劣る先進国が無理をするべき分野ではないと思うからです。

それでも、大手IT企業がトップクラスのスパコンを作るべきだとおっしゃる方は…
戦後復興から高度成長期までをリードした傾斜生産方式と護送船団方式の夢を、現在でも見ているのでしょうね。

日本の問題点の一つは、そうした産業支援が大企業に向かい、中小企業をむしろ潰してしまうことにあるのではないでしょうか。
以前のエントリで電気自動車の例を挙げたのですが、ベンチャー企業を育成することで産業を活性化しようとするアメリカ方式は、その点で優れていると思います。
この方式であれば、補助金あるいは投資金額はさほど大きくなくても企業成長に高い効果が期待できますし、一定の成長後に民間投資が流入するステージに達することができれば、産業としての成長に到る期待ができるでしょう。
その意味において、政府が特定産業に補助金の投下や投資を行うのもありだと、私は思います。
但しこれは、市場に広く資本蓄積が為されている先進国を市場として、新産業を育成することによる成長を考えたときの戦略です。

新興国市場においては一人当たりGDPの低さと市場としての未成熟さ、そして人口ボーナスが成長力の源泉です。
従ってそこに向けてモノを売ることで成長を図る場合、安いモノを大量に売るビジネス・モデルが求められます。すなわち、価格競争力が重要な要素です。
それに対応するために、日本においては同一カテゴリーに複数ある大手企業を統合して独占企業を創り出すように政府が指導することも、競争力を強化する選択肢の一つとしては考え得るでしょう。
例えば、半導体製造に関して、日の丸ファウンドリ構想を復活させるなどの方向性もありではないかと思うのです。この際には補助金などよりも、制度的なバックアップが有効でしょう。

結局のところ、スパコンの話は、国家としての産業成長力=競争力をどう考えるか、という課題に行き着きます。
その課題においては、国全体としてどっちの方向を向いていくかの方針と、それをブレイク・ダウンする形で産業セクター毎に異なる成長戦略を重層的に描く必要があるのだと思います。


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